中国は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)開発において世界のリーダーとして浮上しており、デジタル人民元を巡る野心について様々な憶測が出ている。レジャー・ボルト(Ledger Vault)のアジア太平洋地域責任者であるグレン・ウー氏は、中国が世界で初めて政府運営のデジタル通貨をローンチするだろうと、コインテレグラフに語った。

ウー氏は、中国政府が全国規模で政策を展開できるスピードの速さを強調し、スターバックスやマクドナルドなどを含む19の事業者によるCBDC試験が、はるかな大きな規模に成長する可能性があると指摘している。

「それが実現したら、実際のユースケースを持つ、世界で最初のCBDCの1つになるだろう」

「違いを意識する必要がなくなる」

多くのアナリストは、中国がCBDCを通じて国内の決済を管理しようとしていると指摘している。ウー氏は、小規模な小売取引の96%以上がアリペイもしくはウィーチャットペイで処理されていると推定している。

ただし、ウー氏はデジタル決済プラットフォームの成長は中国の中央政府によって認可され、政府の目的に沿ったものであると指摘する。

その上で、CBDCが既存のデジタル決済の流れに統合され、政府に小売決済に対するより優れたコントロールと洞察を提供することになると予測している。

「小売ユーザーの視点から見ると、何が変わったのかを必ずしも知る必要があると限らない。スーパーアプリであるウィーチャットを利用して、買い物やタクシーの呼び出し、送金など、様々なことを行うことになるだろう」

「それはシームレスなものになり、誰も違いを知ることはなくなるだろう」と、ウー氏は付け加えている。

デジタル人民元が米ドルの対抗軸になるか

国際的なレベルでは、中国がそのデジタル人民元を貿易決済で利用するようになるだろうと、ウー氏は予測している。

ウー氏は、中国がCBDCを利用して決済を行うよう貿易相手にインセンティブを与えるようになると予測。中国政府が、特に中国からの輸入に依存している国との貿易のためにデジタル人民元利用を定着させようとすると、分析している。

しかし、そのような戦略が短期的に成功するかどうかは疑わしいと、ウー氏は考えている。新型コロナウィルスによる世界的な景気後退の中で、世界では保護主義が高まっているからだ。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン