仮想通貨デリバティブ取引で急成長中のFTXのCEOであるサム・バンクマンーフライド氏は、いわば仮想通貨業界の職人だ。創業開始1年足らずでビットメックスやバイナンスなど競合がひしめくデリバティブ市場で一目を置かれる存在になったにも関わらず、同氏は全く飾らない。ソーシャルメディアでインフルエンサーとして名乗りを上げようと焦る企業トップが多い中、サムの目線はまっすぐ自分のプロダクトに向かっている。

「できるだけ私は、自分が作った物に語らせたい。言葉は必要なときにバックアップとして使う。2番手の役割であって、1番手ではない」

 まずはプロダクトに「語らせ」て分からないことがあれば質問に答える。宣伝文句は先走らない。

「利用者が欲しいものを提供できる取引所にしたい。プロとしてのスキルや流動性、プロダクトを兼ね備えた取引所をね。伝統的な金融業界の取引所と仮想通貨ネイティブの良いところを合わせたい」

「利用者が欲しいプロダクトを提供する」。ウォール街出身であるサムの信念はいたってシンプルだが力強い。

ウォール街の経験を仮想通貨業界に

きっかけは仮想通貨業界の「非効率性」をみつけたことだった。

ウォール街のETFトレーダーだったサムは、2017年に伝統的な金融業界を飛び出して仮想通貨業界への参入を決めた。

2017年から2018年の初頭、例えば日本と米国の仮想通貨価格には大きな乖離があった。「ビットフライヤーやビットバンクなどの価格と米国の取引所の価格には1〜10%の乖離があった」とサムは当時を振り返った。

「つまり、裁定取引(アービトラージ)の機会があった。我々は、異なる取引所間、国家間、デリバティブ間での裁定取引をするためにどうするか見つける必要があった」

プロダクトも豊富でトレーディング環境が整っているウォール街での経験を活かせているとサムは確かな手応えを持っている。

そしてFTXは、結果を出している。

2019年4月に創業開始してたった数カ月で1日の取引高が最大10億ドル(約1070億円)のベンチマークを突破。2020年4月30時点では1日の取引高は17億ドル(約1800億円)となっている。

そして、FTXにはレバレッジトークンや原油関連商品予測市場(Prediction Market)クオンツゾーン(QuantsZone)など、実にバラエティに富んだ多数のプロダクトがある。

例えば、クオンツゾーン。ユーザー間でトレード戦略をシェアしあうプロダクトだ。サムは、次のステップとしてユーザーがお互いの戦略をコピーし合うことで利益を獲得する仕組みの導入する予定と話した。

また、予測市場プロダクトもユニークだ。2020年の米大統領選挙結果に賭ける同プロダクトでは、候補者の勝敗に紐づいた契約を結ぶ。もしその候補者が勝利すれば1ドル、敗北すれば0ドルで満期を迎える。例えば、トランプ大統領の契約が0.5ドルで推移している場合、トランプ大統領が再戦する確率は50%と考えていることになる。

背中で語るマネジメント

「もしやりたいことがあるならば、誰もその人の仕事を邪魔しないような環境づくりに努めている」

ジェイン・ストリート・キャピタルのマネジメント理論から影響を受けているサムは、従業員それぞれの自主性を大切にしている。

そして自身は、働く背中を見せて社員を引っ張っている。

ほとんど毎日オフィスのデスク近くに寝袋を置いて一夜を明かすと言うサム。「24時間/7日間、もし何かがあった時に対応できるように」と万全の体制を整えている。日々の仕事は、ケースバイケースではあるものの、顧客からのフィードバックや質問に対してすぐに答えることに努めているそうだ。

新型コロナウイルスによる影響にも冷静な反応だ。多くの業界がソーシャルディスタンス(社会的に距離を取ること)などへの対応に追われる中、もともと適合体制を取っていた仮想通貨業界はストレスが少なく比較的ラッキーだったと思うと分析した。

「効果的利他主義」

サムにとってFTXでの成功はもちろんだが、「可能な限り世界にポジティブな影響力をもたらしたい」という大きな目標も持っている。その実現のため、例えばサムや同僚たちは「効果的利他主義」という確かな根拠と論理に基づいて世界を良くするという考え方を実践。「ランダムではなく本質的に意味のあることをしたい」というサムの哲学は、ここにも浸透している。

FTXを可能な限り大きくすることで慈善団体にできるだけ多くの寄付金を出せるよようにして、違いを生み出したい。最近は、そのことに注力している(中略)1ドルを寄付するにしても、どこに寄付することが一番のインパクトをもたらせるかを考えている」

効果的利他主義の精神が活かされているプロダクトは、先述のクオンツゾーンだろう。まさに他人にとって有益なトレード戦略を考えることが利用者の動機になっているプロダクトだ。

最後にコインテレグラフ ジャパンは、日本の仮想通貨市場についてサムにコメントを求めた。「明らかに仮想通貨業界の中でアクティブな場所であり、歴史的に仮想通貨エコシステムで重大な役割を果たした」と評価したあと、「職人」サムらしい返答をした。

「フィードバックを得ることを楽しみにしている。使ってみて、どうだったか教えてください」

百聞は一見にしかず。あくまで主役であるプロダクトに語らせたいというサムの姿勢に迷いはない。


FTXとは

FTXはAlameda Researchが運営する香港ベースのデリバティブ取引所で、先物、ボラティリティプロダクト、レバレッジトークン、OTC(店頭取引)などが可能です。

Twitter: @FTX_JP

Telegram: https://t.me/FTX_Official

ウェブサイト: FTX.com

問い合せ:support@ftx.com