ビットコインのレバレッジ取引で世界最大の仮想通貨取引所BitMEX(ビットメックス)が、その親会社を通して間接的に株式会社BITOCEAN(ビットオーシャン)の株式取得に動いている。コインテレグラフ日本版によるビットオーシャン株主への取材や、香港証券取引所への関連開示文書等からわかった。これにより金融機関やプロトレーダーからも技術力を評価されるビットメックスの日本進出が本格化していくことになる。

ビットオーシャンは金融庁に認可されている仮想通貨交換業者(関東財務局長第00013号)だが、一般ユーザー向けのサービスはこれまで展開していなかった。

今回ビットメックスは、ビットオーシャンの株式取得に向けて複雑なスキームを使っているようだ。まず、ビットメックスの親会社HDR Global Trading Limited社を通して香港上場企業Madison Holdings Group Limitedの子会社Madison Lab Limited社株51%を約19億円で取得。この子会社は今月9日にビットオーシャン株の67.2%を16.8億円で取得すると開示していた。ビットメックスの公式企業概要は同社が「HDR Global Trading Limitedによって所有・運営されている」としており、関連性は明らかだ。また、HDRはビットメックスの共同創業者の名前の頭文字をとったものといわれる。

ちなみにMadison Holdingsは今年4月に、仮想通貨交換業をビットポイントジャパンの株式20%を買うとしていたがその後立ち消えになっていた。

開示文書によると、Madison Holdingsは今回の取引が完了次第、HDR社と共同で「現物およびデリバティブ取引を提供し、正式に(仮想通貨交換業等関連)登録された日本の仮想通貨取引所を支えるための方針や手続き」をビットオーシャンにおいて整え「全ての商業・業界基準に則したプロダクトやサービスを維持していく」としている。

ビットメックスはドイツ銀行やシティバンクの元トレーダー等が2014年に創業。ビットコインの取引量で一時世界一の仮想通貨取引所だったのは日本の「マウントゴックス」だったが同年の巨額流出事件以降、香港に拠点をおくビットフィネックスやビットメックスにトレーダーが移って行った経緯がある。プロトレーダーの趣向をうまくとらえたビットメックスはその後順調に成長し、2018年には一日のビットコインのレバレッジ取引金額が約1兆円にも上るなど、仮想通貨デリバティブ取引の分野で世界一の座を確固たるものにしている。

日本では現在、仮想通貨のレバレッジ取引規制に関する議論が始まるなど個人投資家向けレバレッジ取引サービス業については不透明感も強い。一方で法人グレードの仮想通貨デリバティブ取引インフラへのニーズは高まっていくと思われ、ビットメックスが蓄積してきた技術やノウハウに注目が集まるだろう。

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