ブロックチェーン技術が盛り上がりつつある中、今回我々コインテレグラフは、様々な分野の専門家たちに、将来のブロックチェーン技術の発展と、その見通しについて伺った。

ブロックチェーンとビットコインは、元々相互に不可分な存在だったが、ブロックチェーンは現在単なる暗号通貨の記録台帳以上のものへとなりつつあり、その存在感を増してきている。

ブロックチェーンは、その中核に存在する記録台帳で、複数の個人間で分散化されており、参加者の過半数による合意がなければアップデートや削除ができない。

ブロックチェーンの素晴らしい点として、その応用方法が、単なる暗号通貨のトランザクションの記録媒体に留まらないことが挙げられる。2015年には、様々なブロックチェーンとブロックチェーンを取り入れたメインストリームの金融サービス業界にまつわる噂が流れ、報道がなされた。

我々コインテレグラフは、フィンテック業界におけるその進化と、ブロックチェーン技術を切り札の一枚としてその手中に収めようと画策している現在の金融業界について、業界の専門家たちから意見を伺い、彼らの意見やアドバイスを元に、2016年に向けて、ブロックチェーン技術における今後の動向について、幾つかその事例をまとめた。

 

スマートコントラクトはこのまま残る

イーサリアムの台頭により、2016年もスマートコントラクトに関する話題は盛り上がりを見せるだろう。スマートコントラクトは基本的には仮想的に等価である。イーサリアムは、イーサリアムのブロックチェーン上に、現実に存在する実物を所有するアカウントとしてスマートコントラクトを記述しており、そこには特定のコード関数が含まれ、他の既存の契約と相互に作用し合い、データの保持やイーサーを他の誰かに送信することもできるため、その意味ではとりわけ興味深い。Microsoftなどの巨大なテック企業も、このブロックチェーン技術が開いたその可能性に沸いている。

 

クラウド・エンタープライズBizDev戦略ディレクターのMarley Gray氏も、自身が籍を置くMicrosoftにおけるブロックチェーンに関する取り組みについて、次のように自身のブログに書いている―

 

「特に金融サービスにおいて、ブロックチェーンは業界内のビジネスの中核における、大きなディスラプターとなり得ますし、フィンテック企業はこの分野でイノベーションを巻き起こそうとしています。イーサリアムはオープンで柔軟ですから、顧客のニーズに合うように、その姿を様々な形にカスタムすることで、発展を遂げ、新しいサービスや分散型のアプリケーション、Dappsなどを提供することに成功しています。イーサリアムによってスマートコントラクトと分散型のアプリケーションの構築が可能になり、潜在的に多くの業界内に存在する決済などのプロセスを合理化するシナリオにおいて、中間業者の存在を無くすことが可能なのです。しかしそれは、暗号を用いたセキュリティと、かのチューリングによって完成されたイーサリアム内に記述されるプログラミング言語を組み合わせたことで得られる恩恵のごく一部分でしかありませんし、我々の顧客やパートナーによって将来的にどのようなものがまた築かれていくのか想像もつきません」

 

注目はブロックチェーンの実装

銀行や他の金融機関も、ブロックチェーンによる透明性とセキュリティという名の恩恵を受けるに違いないが、これを実現するためには大掛かりな実装が必要となる。つまりKYC (Know Your Customer)やアンチ・マネー・ロンダリング(AML)などの他の銀行システムとブロックチェーン技術とを適合させる必要があるのだ。この問題は業界内でも既に持ち上がっている。

BraveNewCoin.comとTechemy.coの親会社、Techemy Ltd.のCEO兼共同設立者であるFran Strajnar氏は次のように語っている―

 

「これまで10億ドル以上もの価値に匹敵する投資がなされてきたことが、ブロックチェーンを様々な金融サービスのソリューションとして導入することが可能であると物語っています。今後5年という間隔の中で、5から10の(導入される)ブロックチェーンが重要になってくるでしょう。一方で、何十もの競合するブロックチェーンデザインがフィンテック業界には存在しています」

 

2016年は、ブロックチェーンを応用した権利関連や投票などのシステム構築が発展する

ブロックチェーン技術の導入により、土地権利から投票システムに至るまで、ユニークで革新的な様々なソリューションのデジタル化が進むことが予想されている。これにより、テクノロジーに明るくないより多くの人々を、今まで以上にブロックチェーン技術に導くことになるだろうと言われている。

事実、多くの人にとって、こういったブロックチェーン技術の導入によって、システムへの信用の構築や、暗号通貨を利用するための足がかりになる可能性がある。一度ブロックチェーンベースのシステムの魅力に気づいてしまえば、きっと実現することだろう。

率先的に、ビットコインブロックチェーンによるインフラを提供し、トランザクション・プロセスを同社において提供したBitFury GroupのCEO兼創設者、Valery Vavilov氏は、次のように説明している―

 

「ブロックチェーンは、その誕生と発展において、これだけ早い段階で成長し、多くの人に計り知れない影響を与えたことから、インターネットと比較される、最も変幻自在なテクノロジーです」

 

BitFury Groupなどの企業は、ブロックチェーン上の資産取引におけるセキュリティ確保に従事している。彼らには、よりセキュアで、容易な取引を可能にし、簡単に顧客が各々の資産へとアクセスできるサービスを提供するポテンシャルがある。現代のブロックチェーンリーダーとも言える彼らのその能力は、資産取引や投票システムなど様々な可能性を多くの人々へと開いていくだろう。

 

2016年は試行錯誤の年になる

全ての新しいテクノロジーは、早期に遭遇するであろう様々な問題を抱えている。ブロックチェーンのフィンテックシステムへの実装もその例外ではない。事実、長い目で見れば失敗は成功の基だと業界では思われてきたはずだ。スケーラビリティや、間違った形で実装したシステムアーキテクチャによる問題もまた、最初につまづいてしまう問題の一つかも知れない。

MicrosoftのMarley Gray氏によれば、彼が自身のブログで記載していたように、業界内では実験的な機会なのだと捉える向きがあるのだという。同氏は、”イーサリアムブロックチェーン・アズ・ア・サービス(サービスとしてのイーサリアムブロックチェーン)”が、Microsoft Azureによって提供されることで、金融サービスにおける顧客やパートナーが、それによってもたらされる様々な体験や、比較的低コストで既存の開発者やテスト、またはプロダクションにおける環境の中で導入することで、もしかしたらすぐに失敗してしまうかもしれないという可能性をも考慮に入れることが出来ると語っている。また、如何なるタイプのブロックチェーン環境をも、産業レベルでのフレームワークを導入することで構築が可能だとも語っている。

 

テクノロジーの時代が到来する

過去には、ブロックチェーンによって様々な関心が集められたが、確かなイノベーションという意味では、あまり十分なものだったとは言えない。2016年は、ブロックチェーン技術によって、ついに我々の生活が決定付けられる年になるかもしれない。

ブロックチェーンベースのアプリケーションの可能性について尋ねると、Fran Strajnar氏は、先の”ブロックチェーン・アズ・ア・サービス”の件で述べた、Microsoft Azureの例を挙げ、さらなるツールやインターフェースが可能になるとし、同氏によれば、これにより開発者はより多くのツールをビルドできるようになるという。

 

セキュリティは最重要項目

ブロックチェーンシステムがさらに多くの資産や契約、他の重要な情報を扱うようになるにつれて、セキュリティは外せない中心的な課題となってくるだろう。つまり、データの整合性をそのまま保つために、企業はシステムを扱い、所定の位置に設定する必要があるということだ。

BitFury GroupのCEO兼創設者であるValery Vavilov氏は次のように強調している―

 

「非常に重要な課題として、ブロックチェーンが世界中の企業や個人における問題を解決するものである、と皆に思われなければならないという点があります。ブロックチェーンはかなりの演算能力を誇るため、ビットコインブロックチェーンは世界で最もセキュリティの高いコンピューター・ネットワークの一つと言えます。BitFuryは、その功績とブロックチェーン業界への貢献を通して、この分野で一歩リードしている存在だと言えるでしょう」