ベストセラー「ブロックチェーン・レボリューション」の著者として知られるアレックス・タプスコット氏が21日、コインテレグラフ日本版の取材に対して、「将来、G7(主要7カ国)の中央銀行が準備通貨としてビットコイン(BTC)を持つ可能性は高い」と発言した。
日本経済新聞社主催の「日経ブロックチェーン・ビジネスセミナー」で講演するために初来日したタプスコット氏。講演後にコインテレグラフ日本版のインタビューに答えた。タブスコット氏によると、4年前にG7の中央銀行の副総裁と話したところ、「もしビットコインが十分大きな存在になり、システム的に重要になれば、他の通貨と同様に保有することを考える」という見解を示したそうだ。
タブスコット氏は「ビットコインが死なない日が続けば続くほど、支配的な通貨になる可能性は高くなる」と指摘。支配的とはいかなくても、米ドルや金、スイスフランなどと共に金融政策のツールとして使われる通貨の一つになる可能性は高いと話した。
同氏は講演中、中央銀行がビットコインを保有するのは「2、3年後」という見通しを示した。
ただ、ビットコインなど純粋な仮想通貨と法定通貨に連動する仮想通貨(fiat-to-crypto currency)が共存するだろうとも予想。講演中に次のように解説した。
「今日(中央銀行が準備通貨として持つのは)米ドルや円、ウォン、ユーロ、スイス・フランだが、将来的にはビットコイン、デジタル米ドル、デジタル円、デジタルウォン、デジタルユーロ、デジタルフランになるだろう。ユーロはその時まで生き残っていたらの話だけどね」
また同氏は、法定通貨に連動した仮想通貨は、中央銀行による利上げ論争にも一石を投じられると解説。
現在、トランプ大統領とFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル総裁は「利上げの経済への影響について半年ほどもめている」が、法定通貨に連動した仮想通貨があれば、リアルタイムで金融システムから実経済への資金の流れが見えるようになると指摘。そうなれば、利上げの小売業や製造業などへの悪影響をブロックチェーン上でリアルタイムで確認できるようになり、現在のようにデータ発行まで30日とか60日とかを待つ必要がないと述べた。
10日には、ビットコインの生みの親サトシ・ナカモトの有力候補の一人であるニック・サボ氏が「中央銀行はいずれ準備金を裏付けるために仮想通貨を使うようになる」と発言していた。
中央銀行の準備通貨とは、国内や海外の法定通貨、特別引出権 (SDR)、国債、企業の株式など、他の国際的な準備資産で構成され、既存の金融システムの統合的な防壁として機能する。負債を支え、経済リスクが発生した時の頼みの綱だ。
「情報のインターネット」から「価値のインターネット」へ
「ブロクチェーン技術はこの世代で最も重要なイノベーション」。タプスコット氏は180名に対してこのように言い放った。そして、ブロックチェーンは「インターネットの第2の人生の始まりといっても過言ではない」と付け加えた。
同氏が強調したのは、現在のインターネットの不十分さ。同氏によると、インターネットによって情報の検索が容易になり、グローバルでのコミュニケーションコストは削減されたものの、「価値を動かして保存するという取引コスト」、「信用を創造するというコスト」はまだ減っていない。
「我々は多くのデータを作ったが、所有していない。それが問題だ。それはつまり、我々がコントロールできていないことを意味している。だからマネタイズもできていないし、プライバシー問題も発生する」
インターネットが普及した現代でさえ、例えば証券を購入する時、オンラインブローカーやクリアリング・ハウスと呼ばれる手型交換所といった仲介業者に頼らなければならない。いわば彼らの信頼に頼り、彼らに価値の移転や保存を任せている状態だ。
タプスコット氏は、これらの「コスト」をブロックチェーンが減らすと主張。ブロックチェーンは「個人やビジネスに対して仲介者なしでP2P(ピアツーピア)で価値の移動と保存を実現させるネットワーク」であり、それは「情報のインターネット」から「価値のインターネット」への移行を意味すると形容した。 そうなれば、個人が情報を取り戻し、「情報を自ら売る選択肢だって持てる」と同氏は解説する。
では、何でもかんでもブロックチェーンが解決するのか?タプスコット氏は、コインテレグラフ日本版に対して、「本来の意味がなくなるほどすべてにブロックチェーンを当てはめるのは好きではない」としつつも、「ブロックチェーンは何ができて何ができないのか事前に断言するのは傲慢だ」という考えを明かした。だからいつも起業家や革新的な企業に対して「オープンマインド」でいることを心かげているという。
タプスコット氏によると、現状で一番のユースケースはもちろん「ビットコイン」。決済手段や価値保存手段として力を発揮しているとみる。「次に来るのは資金調達のプラットフォームであるイーサリアム」、「ステーブルコインは一般的には懐疑的だが魅力的な領域」で「クリプトキティーズやオーガーなど分散型アプリ(dApps)は実際に使われている」と評価した。
最初からブロックチェーンの用途を狭めるのではなくオープンであることが大事ーー。「かなり私は楽観的だよ」とタプスコット氏は笑顔を見せた。
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— コインテレグラフ⚡仮想通貨ニュース (@JpCointelegraph) 2018年10月31日
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