類は友を呼ぶ。親しい者同士が集まるということは、イノベーションを加速させる唯一の方法でもある。

我々コインテレグラフは最近、2日後に開催される、Cointelegraph Eventsがオーガナイザーを務めるBlockShow Europe 2017に、デロイトGermonyがパートナー兼スポンサーとして参加することを発表した。

Cointelegraph Eventsのミッションは、ブロックチェーン業界が世界を変革し続けられるよう人々を繋ぎ、素晴らしい教育を行うことである。今回デロイトGermanyをパートナーとして迎えたように、さらなるイベントを今後企画している。

今回、コインテレグラフは大規模なブロックチェーン関連イベントを開催にするに向けて、デロイトの共同経営者であり技術部門顧問、BlockShow Europe 2017でメインスピーカーを務めるMilan Sallaba氏、デロイト・ブロックチェーン・インスティテュート、上級コンサルタントJens Hermann Paulsen氏にコンタクトを取った。

Sallaba氏とPausen氏は、広範囲な技術研究と実践を通してデロイトに如何に貢献できるかについて話し合い、様々な産業を塗り替えつつあるそれぞれのブロックチェーン革命に対する考えを共有した。

デロイトがデロイト・ブロックチェーン・インスティテュート(DBI)を設立したその目的は、Paulsen氏が説明するように、一産業としてのプラットフォームに囚われず、様々な業種間に渡り、ブロックチェーン技術競争の中心として存在することであり、デロイトのネットワークをより広範囲に、EMEA、そして世界へと広げることである。

 

Sallaba氏曰く―

 

「我々の行っている統括的なアプローチにより、ブロックチェーン技術の技術的な部分に焦点を当てるだけではなく、例えば、裁判における法的効力を理解し、信用格付けへの影響を考えるなど、それぞれの特定のビジネスケースにおける文脈を構築することが可能ですし、POCの確保に加え、様々な観点からアイディアを引き出し続けています。クライアント向けには、より幅広く、度々取締役会で取り扱われるような、議論を促進するレベルの検証に必要な最低限の機能を持った製品(MVP)を開発し、また、ブロックチェーンベースの機能をERP的システムに統合するため、保険やエネルギー業界のクライアントとも共同で開発を行っています」

 

 

ブロックチェーンの実装は険しい道程

 

 

デロイト・ブロックチェーン・インスティテュートは活発にブロックチェーン技術を研究し、実際にブロックチェーンを利用して発展可能な分野を模索し続けている。ブロックチェーン技術の実装はしばしば大きな課題にぶつかることがあり、簡単なプロセスのみでは実現出来ない。

例えば、パブリックブロックチェーンの導入は、規制というハードルによって妨げられる可能性があり、一方で深刻なセキュリティの問題がプライベートブロックチェーンによるネットワークの構築の障壁となっている。

投資家や提携したブロックチェーン企業が、金融や銀行産業にとってブロックチェーンは最良のソリューションではないかもしれないという結論に達した際には、それを痛感したものだ。Sallaba氏の見方は、効率性の向上に目を向けるよりも、例えば、様々な市場に及び可能な株の世界的取引のように、最初はより小さく的を狙い、目先の利益を得て、後々、大規模なユースケースを後に考えればいい、というものだ。

 

Sallaba氏曰く―

 

「関連した問題や課題は、ブロックチェーンが大規模に革新的な変革をほぼ瞬間的にもたらす銀の銃弾である、といったような、非現実的な予想という文脈において考えられるべきです。業界やセクターに関わらず、ブロックチェーンによって最初から具体的な差別化を図ることができるような、限られた視野と機能に集中してユースケースは模索されるべきです」

 

Sallaba氏は、特定の再生可能エネルギーを証券化したグリーン電力証書や、貸し債権、伝統的に紙媒体に依存したものなど、所有者の実際の所有権を追跡することが難しいものを例に上げた。ブロックチェーンであれば、そういった透明性や価値を即座に提供することができる。

 

ブロックチェーンは完璧な官僚?

 

ブロックチェーン技術は、しばしば"完璧な官僚"と呼ばれる。政府と国民の間の関係性を効果的なものにする大きなポテンシャルを持っているためだ。エストニアやスウェーデン、ロシア、スイスなどで多くのプロジェクトが登場し、政府事業をアップグレードするためにブロックチェーンが採用された。

 

Sallaba氏はコインテレグラフに次のように語った―

 

「ブロックチェーンは政府がそのプロセスを向上させ、革新的なサービスを提供するための途方もない可能性を秘めています。今後数年で、益々ブロックチェーンの導入が進んでいくだろうと我々は確信しています。デジタル化によって、国民と政府のダイレクトなコミュニケーションが促進され、距離や、営業時間、プロセスのスピードなどにまつわる問題を克服するための窓口が増えていくことでしょう」

 

ブロックチェーン技術によって革命を起こす完璧なニッチ市場が発掘されたかもしれないと考えている一方、Sallaba氏は、それは国により異なるものだと語る―

 

「北欧バルト諸国は、昔から政府のデジタル化という意味では先駆者ですし、スウェーデンが土地権利をブロックチェーンに記録しようと取り組んだとしても驚きません。日本はビットコインを法定通貨として認識し始めたばかりですが、スイスは既に地元当局への管理費の支払いを、ビットコインで行えるよう実験的に容認しています」

 

Milan Sallaba氏は、BlockShow Europe 2017で、自社におけるブロックチェーン技術を応用したオペレーションについて最近の動向を発表する予定だ。

 

クラブへようこそ!

 

昨今、ブロックチェーン技術を調査するために結集した数々の"クラブ"が存在する。R3は突如ブロックチェーンからの撤退を発表したが、オープンソースの協力的な取り組みとしては、Hyperledgerが現在、業界に囚われないブロックチェーン技術のプロモーションに取り組んでいる。しかし、そういった企業努力における効率性やモチベーションの維持に関しては、ある種の疑問が残る。

 

Sallaba氏は次のようにコメントしている―

 

「"クラブ"や、コンソーシアムの成功は、セットアップとガバナンス、目的、また、メンバー組織の利害の調整の度合いに依存します。R3やCordaからわかるように、規模が大きいからといって、常に優れているとは限りませんし、小さなコンソーシアムがブロックチェーンのマネタイズで成功を収める可能性もあります」

 

Sallaba氏は、必然的により狭く"閉じた"会員制のアプローチと比べて、オープンソースな共同プロジェクトに関わる専門家たちによるコミュニティの力の重要さを強調する。曰く、Hyperledgerのようなオープンソースによる共同開発は、究極的にメインストリームな商業的実用性を考えた場合、成功する可能性が高いという―

 

「例えば、b3i(Blockchain Insurance Industry Initiative)や、最近発表されたTBCASprint、などのような、相互利益が明らかなプラットフォームにフォーカスを当てたポテンシャルの高い団体もいくつか存在します」

 

Paulsen氏もこれに同意見のようだ―

 

「"何にでも適用できる"万能なコンソーシアムを作り上げることは、個人的な意見としては問題があると思います。利害関係の一致したプロフェッショナルたちが集まるようなコミュニティ全体より優れたプラットフォームを作り上げることを目標に閉鎖的な店舗で働く、などということは非現実的です」

 

アジアに目を向けて

 

ブロックチェーン技術の愛好家たちによるコミュニティによって、一度どころではなく、彼らが変革への対応能力があり、フレキシブルかつ、オープンであり、時には自分たちの業界をも破壊してしまうことさえあるということが証明されてしまった。

分散型テクノロジーに感化された彼らのコミュニティは、イノベーションは真の境界知らずなものであるということを理解しており、お互いがお互いに知ろうとする意欲の共有、知識の共有欲などと同時に、優れた専門知識を兼ね備えている。例えば、アジアがその一例だ。

世界的にフィンテックが急速に成長し続ける一方、アジアで爆発的に広がり、特に中国で同業界は盛り上がっている。具体的に数字を挙げてみよう―昨年、アジアのフィンテック業界における投資額は12億ドルに到達し、米国の9億ドル、そしてヨーロッパの2億ドルを抜いている。

 

Sallaba氏曰く―

 

「アジアの金融サービス業界は、急速に成長しています。そして特に中国では、規制の枠組みが比較的柔軟であると見られており、中国の投資家たちは市場がより盛り上がるよう働きかけ、フィンテック業界における活動とイノベーションが促進されています。米国とヨーロッパにおける投資のされ方は間違いなく、より保守的なもので、金融セクターが問題や非効率性を共有している一方で、組織としての銀行はまだ消えることはないでしょう」

 

ウィーブ・ゴット・タレント

 

ブロックチェーン革命が様々な業界を席巻しているという事実を否定できる者はいないだろう。しかし、それを促進するためにはどうすればよいのだろうか。業界のエキスパートたちは、しばしば、才能の欠如を指摘しているが、私はそうは思わない。

最近、コインテレグラフはミュンヘンにてブロックチェーン・オスカーを企画した。今後素晴らしい結果が見られることだろう。しかしそれがここで述べたい結論であるわけではない。我々の予想を遥かに超える量のアプリケーションが存在している中で、才能が欠如しているということがあるだろうか。

才能ある人々は数多く存在している。彼らを繋ぎ、革新的ソリューションを必要としている産業へと導く足がかりになる、より経験豊富な仲間たちによってのみ、彼らはサポートされ導かれる必要がある。これは数多くある様々なアクセラレータープログラムの中の主な目的の一つだ。

Sallaba氏は、デロイトのスタートアップとの共同開発の重要性を強く強調している―

 

「デロイトはブロックチェーンベースの産業におけるソリューションに特に焦点を当てている企業やスタートアップを強く支援していますし、いくつかのスタートアップとは戦略的パートナーシップを結んでおり、共同で様々なソリューションを生み出しています。さらに、(SETLのような)スタートアップには出資も行っており、チームの一部を独立させNucoaを立ち上げ、nexussquaredのようなプログラムにも取り組み続けています」

 

しかし、Sallaba氏は、デロイトは意識的にブロックチェーンスタートアップ向けのアクセララータープログラムを偏って立ち上げないように心がけていると語る―

 

「ブロックチェーンはブロックチェーン自体のみにユースケースが存在するわけではありません、もちろん、例えば、どのアクセラレーターがどの技術に焦点を当てるのか、(主にテック・コミュニティを促進するもの)どの業界なのか(業界固有のソリューションや、スタートアップが世界的なプレーヤーになるためのアクセスの支援)という判断は簡単ではなく、利点や欠点どちらもブロックチェーンには存在しています」

 

The Deloitte Digital Disruptorsは、優れたチームをサポートすることに特化した数少ない一例だ。"デロイトが作る架け橋"を以って、デロイトは意識的に企業とスタートアップ

を繋ぎ、イノベーションを促進しようと試みている。