ブロックチェーン業界は、長年にわたりさまざまなセクターでの幅広い導入を目指してきた。金融や医療などの分野で進展を見せているが、まだ道半ばだ。EYのグローバルブロックチェーンリーダーであるポール・ブロディ氏は、企業での採用にはプライバシーが欠けている要素だと指摘する。
シンガポールで開催されるToken2049カンファレンスを前に、ブロディ氏はコインテレグラフとのインタビューの中で、プライバシーがブロックチェーンのユースケースの触媒となることを強調した。
EYのポール・ブロディ氏 Source: Cointelegraph
企業向けブロックチェーン
ブロディ氏は、プライバシーの欠如が企業、特に大企業におけるブロックチェーン採用の大きな障害だと指摘した。
「企業ユーザーや本格的な機関投資家にとって、最も重要な問題はプライバシーだ。ブロックチェーンには本来的にプライバシーがない。取引所を通じて取引し、代替可能な資産を購入する場合、ある程度の仮名性やプライバシーのレベルが得られる」
しかし、企業や大規模な機関投資家にとっては、さまざまな理由からそれは実際には難しいとブロディ氏は語った。
ビジネス契約の詳細や競争的な価格戦略など、組織が分散型テクノロジーの利点を活用しつつ、特定のデータを非公開に保つ方法が必要だとブロディ氏は主張した。
「企業は契約のすべての詳細を公開したがらない。それはしばしば機密であり、もし誰かに非常に良い価格を提供した場合、それを開示したくない。企業はどれだけの炭素を削減したかを喜んで伝えるが、その情報を週単位や日単位で見られることは望まない」
パブリックチェーンにおけるプライバシー
ブロディ氏は「パブリックチェーン上でのプライバシーは達成が非常に難しい」と述べたが、業界はこの問題の解決に取り組んでいるという。
例えば、EYのチームは、イーサリアムのレイヤー2とポリゴン上に構築されたゼロ知識証明(ZKP)技術であるナイトフォールを通じて、プライバシーに焦点を当てたソリューションを先駆的に開発している。ナイトフォールは、機密データを露出させることなく安全な取引を可能にするという。
「私たちは、アプリケーションを作成し、送金支払いを行えるようなインフラを構築している。特に企業ユーザー向けのアプリケーションも開発している」とブロディ氏は語った。
ブロディ氏は、そのようなアプリケーションの1つとして、EYの再生可能エネルギー購入向けオフチェーン契約マネージャーを挙げた。「再生可能エネルギー購入計画を完全にプライベートなオンチェーンのスマートコントラクトに変換できる」と彼は説明した。
サプライチェーンとブロックチェーン
ブロックチェーンから大きな恩恵を受けるもう1つの分野であり、古典的なユースケースであるのがサプライチェーン管理だ。
VeChainのようなプロジェクトは、製品の真正性と追跡可能性における信頼を根本的に買えることを目指している。
しかし、これらのソリューションは期待されたペースで普及していない。ブロディ氏も、その原因をプライバシープロトコルの欠如に帰している。
「サプライチェーンの追跡は素晴らしいユースケースだと思う。プライバシー技術がなければ全く意味がない」
彼は、EYが現在、パブリックイーサリアム上で、プライバシーを保護しつつ、完全なトークン化によるエンドツーエンドのサプライチェーン追跡の最初のパイロットを実施していると語った。
「私はこれを10年間追い求めてきた」と彼は語った。「その目標を手に届くほど近くまで来ており、製品化に値するものにできると感じている」。
「十分なプライバシーを確保して機能させることができれば、サプライチェーンのユースケースは素晴らしいものになるだろう」
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