どうやらブロックチェーンが量子コンピューターに対処するためには焦る必要はないと専門家は考えているようだ。
プライバシーやIoTに注力するブロックチェーンプラットフォーム「IoTeX」の暗号学専門家であるシンシン・ファン氏は7日、インターナショナルビジネスタイムズ誌に「量子コンピューターはブロックチェーンを殺さない」と題した記事を寄稿。この中で、「量子超越を達成したことはブロックチェーンを超えたことを意味しない」とし、量子コンピューターの短期的な影響はわずかであると主張した。
グーグルがスーパーコンピュターの性能を超える「量子超越」を達成して以来、暗号が元になっている仮想通貨への影響については「実用化まではまだかかる」とする声が多い。
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しかし、ファン氏は長期的にはもちろん影響があるため、ブロックチェーンコミュニティは量子コンピューターの進捗を注視する必要があり、技術が追い越されないようにブロックチェーンの開発ペースを維持すべきだとした。
ファン氏はこのために3つのポイントを挙げている。
1.量子耐性の開発
1つ目は米国立標準技術研究所(NIST)が開発を進めている耐量子暗号技術標準化プロジェクトだ。量子コンピューターに対抗するために特別に設計された機能はブロックチェーンの未来と存続の鍵になるという。
ブロックチェーンの開発者はこのプロジェクトの動向を注視すべきであるとしている。
2.暗号の俊敏性
二つ目は「暗号の俊敏性」についてだ。量子耐性を持つ技術ができても導入できなれけば使えない。量子耐性機能を導入できるようにブロックチェーンを改善するための能力を開発する必要があるという。
例えば、イーサリアムのような既存のブロックチェーンに構築されるプロジェクトの数を考えると、独自のコンポーネントをアップグレードする能力が必要になる。
3.ブロックチェーンガバナンス
最後はガバナンスだ。量子コンピューターが構築される時期はまだ不確実であるため、ネットワークへの「量子安全性」のアップグレードをいつ、どのようにするのかを決めていかなければならない。
しかし、ファン氏はこれが一番の課題であると指摘する。
「これまでのブロックチェーンの歴史を振り返ると、最適なガバナンスがいかに困難であっただろうか」
仮想通貨や暗号に関わる全ての人々が真剣にガバナンスについて考え、テクノロジーの改善を妨げない方法に取り組まなければならないと結論づけている。
翻訳・編集 コインテレグラフ日本版