ブロックチェーン分析プロバイダーである0xScopeの共同創設者は、一部のユーザーが複数のウォレットで大量の活動を生成するため、アクティブユーザー数は仮想通貨エコシステムの状態を測るための指標として誤解を招く可能性があると主張している。
0xScopeの共同創設者であり、チームデータサイエンティストあるフィリップ・トーレス氏は、Bitget EmpowerXサミットでコインテレグラフのインタビューに応じた。同氏は、ブロックチェーンの活動の80%が少数のエンティティによって生成されていると語る。こういったエンティティとしては、独占的な設立主体、ボット、悪用者、エアドロップハンターといったものがあるという。
「プロジェクトは、『私たちは1万人のアクティブユーザーがいます』という主張をするが、エンティティモデルを使って調査すると、実際には10から20人のユーザーが1万の異なるアドレスをコントロールしていることがわかる」と彼は付け加えた。
「1人のユーザーが1万以上のアドレスを持つことができ、それが外部の観察者には1万人の異なるユーザーであるかのように見える。これによって彼らはオンチェーンの数字を操作している」とトーレス氏は説明した。
この現象は小規模なエコシステムだけでなく、全てのブロックチェーンエコシステムでも見られるとトーレス氏は指摘する。彼は、平均的なETHユーザーは少なくとも10のアドレスを持っており、「オンチェーンで起こるすべてのことが見た目通りでない」と付け加えた。
トーレス氏は、ユーザーが複数のウォレットアドレスを持つ正当な理由があるとも語る。
「その一つは『プライバシーの懸念』によるもので、人々は大きな足跡を残さないように異なるアドレスを持つことを好む」と彼は説明した。
また自動トレーダーがオンチェーンで複数の戦略を展開することもある。「だから、オンチェーンで自動トレーディングを見ると、通常、各アドレスは異なるプロトコル、異なるスワップ、異なるコインの取引、異なる戦略を用いた異なるコインの取引に非常に集中している」。
しかし、これは悪意のある目的に使われるケースもある。例えばプロジェクトのアクティブユーザー数を水増しして投資家を誤解させるため、またはシビルアタック(51%攻撃)を作成するため、またはユーザーが将来のトークンエアドロップをターゲットにする場合などである。
3月23日に予定されていたアービトラム(ARB)のエアドロップはその一例で、2つのウォレットが「エアドロップファーミング」と呼ばれる戦略を用いて、1496個のウォレットから270万ARBを集めた。対照的に、CoinMarketCapによると、エアドロップの中央値は1250ARBと予想されていた。
「ブロックチェーン上では、複数のパブリックアドレスをコントールすることは非常に簡単だ」とトーレス氏は指摘する。
トーレス氏によれば、メールアドレスとは異なり、複数の仮想通貨ウォレットを作成し制御することはあまり難しくない。一部のユーザーはHDウォレット(階層的決定性ウォレット)と呼ばれるものを使用している。これは、マスターキーペアから新たなキーペアを生成する方法で、簡単に言えば、マスターセットのニーモニックワードを通じて複数のパブリックアドレスを生成する方法だ。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン