仮想通貨マーケットメイカーのウィンターミュートは、最新のレポートでビットコインは伝統的な金融市場に比べてマクロ経済の逆風に対して高い耐性を見せていると指摘した。

レポートによれば、S&P500とナスダックが1年ぶりの安値を記録し、米国債利回りが2007年以来の水準に上昇する中にあっても、ビットコイン(BTC)は比較的堅調に推移している。

「ビットコインの下落は限定的であり、米大統領選の時期と同程度の水準までの調整にとどまった」とウィンターミュートは書いている。

また、同社は「このような局面でのビットコインの安定性は、過去とは異なる傾向を示している」と指摘する。これまでの危機局面では伝統的なマーケット指数以上に大きく値を下げる傾向があったが、今回は「マクロ経済の混乱下で、ビットコインの耐性が強化されている可能性がある」としている。

「一時的な安定」との見方も

オブチャケビッチ・リサーチの創設者アレックス・オブチャケビッチ氏はコインテレグラフに対し、「この安定は一時的なものにすぎない可能性がある」と述べた。

「貿易戦争が激化すれば、ビットコインは再びリスク資産リストに戻るだろう。投資家は最終的に金に逃避する公算が高い」と同氏は語る。

オブチャケビッチ氏によれば、今回の安定を支えた主因は、上場投資信託(ETF)を通じた機関投資家の関心の高まりと、ビットコインの分散性・独立性に基づく「デジタルゴールド」としての評価だ。

ビットコイン市場の力学に変化

直近1週間で、ビットコイン価格は7%上昇して8万3700ドルに到達した。この上昇は、消費者物価指数(CPI)の前年比2.4%上昇と、前月比0.1%減少というインフレ鈍化の兆候を背景に起きている。

加えて、3月の生産者物価指数(PPI)は前年比2.7%上昇で、2月の3.2%からも低下しており、データは総じてディスインフレ傾向を示している。

しかしウィンターミュートは、楽観視には注意が必要とし、「米連邦準備制度理事会(FRB)の2%インフレ目標に近づいているように見える一方で、貿易摩擦の激化が新たなインフレリスクをもたらす可能性があり、3月の指標にはまだその影響が反映されていない」と警告している。

さらなる市場の混乱とBTC普及

ビットワイズのアナリスト、ジェフ・パーク氏は、米国のトランプ大統領の貿易政策が、世界的なマクロ経済の混乱や短期的な金融危機を引き起こし、結果的にビットコインの普及を後押しすると指摘する。

「関税のコストはインフレという形で、米国と貿易相手国の双方が負担することになるが、相対的には外国側の影響が大きい。その結果、これらの国々は成長の弱さへの対策を迫られる」とパーク氏は述べた。

ウィンターミュートも、「現在の貿易戦争は、インフレ加速と経済成長の減速というリスクを高めている」と分析する。