ハッシュレートとは、ビットコインのブロックチェーン上での取引を検証するために必要なコンピューター全体の処理能力のことだ。既報のように、パワーが大きいほどネットワークの安全性が高く、ビットコインのマイニングによる収益性への関心が高いと考えられる。

ハッシュレートはビットコインの関数か?

ハッシュレートの上昇によって、ビットコイン価格が上昇すると予想されることがある。アナリストは2013年と2016年の強気サイクルの両方でハッシュレートが上昇すると、採掘難易度(ディフィカルティ)が上昇するという相関関係を見つけた。

例えば、2021年の70%の上昇は、複数の投資やマイニング機器の大量注文と時期が重なった。ただ、こうした事象と一致しているかを特定するのは困難だ。

いくつか事象を挙げるとすると、アルゴ・ブロックチェーンが事業拡大のためにテキサス州の320エーカーの土地を購入したり、ビットフューリーの米国マイニング子会社が上場したり、BTC.comのマイニングプールが中国の宝くじサービスに買収されたりしている。

しかし、相関関係が崩れている時期もあるために、ビットコイン価格とマイナーの設備増強に関係はないかもしれない。

トレンドの変化を見極めるためには、7日間平均のハッシュレートを見るのがいいだろう。

Bitcoin hashrate, TH/s (left) vs. BTC price, USD (right). Source: Coinmetrics

一方で、2017年はビットコインがパラボリックな価格上昇だっために、異常値だったとみなすことができる。8月にはハッシュレートも6.8TH/sと3倍になっていた。しかし、ハッシュレートが価格を予測できるという理論は、その後にコンピューティングパワーが突然25%低下し、価格に影響が出なかったことで、理論は破綻している。

Bitcoin hashrate, TH/s (left) vs. BTC price, USD (right). Source: Coinmetrics

2018年後半と2019年は、ビットコイン価格がより活発な動きと停滞の期間に直面したため、より興味深いデータセットを提供している。ハッシュレートは2018年4月から2018年11月にかけて倍増し、ピーク時には54TH/sに達した。不思議なことに、この上昇はビットコイン価格が4,000ドルへの急激な調整より前のものだった。

一方で、両指標は2018年12月中旬に底を打ち、2019年前半は価格とハッシュレートは同期した動きを見せた。

Bitcoin hashrate, TH/s (left) vs. BTC price, USD (right). Source: Coinmetrics

2019年後半は、ハッシュレートが66%上昇した一方で、ビットコイン価格が38%急落するなど、まったく逆の動きを見せた。当時、ビットコイン価格は2020年2月中旬に10,200ドルでピークを迎えたが、ハッシュレートの下落はそのわずか3週間後に起こった。

ビットコインのハッシュレートと価格の史上最高値

最新のデータでも、この2つの指標の間に強い相関関係が見られる。さらに、2月8日の高値のハッシュレートである166THは、2週間後にBTCが55,000ドル付近で高値となった。

Bitcoin hashrate, TH/s (left) vs. BTC price, USD (right). Source: Coinmetrics

ハッシュレートと価格には強い相関関係があることは想定されるが、価格が低迷しているにもかかわらず、マイニング能力が拡大し続けた期間が半年以上もあった。

また、最近の2020年10月のような急激なハッシュレートの低下についても、ビットコイン価格への影響はなかったと言える。したがって、このような短期的な価格変動を予測する指標は信頼性に欠けるだろう。言い換えれば、ハッシュレートと価格の動向は、相関関係があるとはいえ、トレーダーを混乱させるような、さまざまなシグナルを提供している。

また、長期的な相関関係があるとはいえ、価格に即時的な影響を与える他の要因も考慮すべきだ。例えば、新しいマイニングハードウェア、規制、季節性、地理的な要因、世界的なエネルギー価格の変動などだ。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン