ビットコインのマイニング業者(マイナー)が中国から中央アジアのカザフスタンへ大量移転したことで、カザフスタンは電力危機に見舞われ、同国大統領が原子力発電による問題解決を提案する事態となっている。

カザフスタンのエネルギー省は、21年の国内電力消費量が8%増加した要因をマイニング業者によるものとしているフィナンシャルタイムズのデータによると、中国当局が仮想通貨のマイニングを禁止する方針を打ち出した後、カザフスタンは今年これまでに少なくとも8万7849台のビットコインマイニング装置を中国企業から受領している。

国営のカザフスタン送電線管理会社(Kazakhstan Electricity Grid Operating Company:KEGOC)によると、電力需要の大幅な増加は国内における電力の供給不足に繋がり、信頼性の低い電力サービスへの依存を高めるという。同国のトカエフ大統領は金曜に開かれた銀行関係者との会議で、「原子力発電所の建設によって国内の電力インフラへの負担を緩和できるのではないか」と述べ、次のように発言した。

「将来のことも踏まえ、原子力発電所の建設に関して国民の理解を得にくい決断を下す必要があるだろう」

トカエフ大統領は、原子力発電に関する提案とビットコインのマイニングによる電力消費は無関係としたが、マイニング業者が国外に流出してしまうと、15億8000万ドル(推定)の税収を失う恐れがある。国内での電力不足により、マイニング企業の「Xive」はすでにカザフスタン国外への移転を余儀なくされている。Xive共同創業者のディダール・ベクバウ氏は火曜、ツイッター上にメッセージを投稿し、「電力の供給が制限されていた」ため、Xiveのマイニング場を閉鎖しなければならなかったと述べた

カザフスタンには現在、届出済みの仮想通貨マイニング企業が50社あり、届出されていないマイニング企業の数は不明だ。

ソヴィエト連邦構成国時代、ソ連の度重なる核実験がもたらした放射性降下物により甚大な被害を受けたカザフスタンにとって、原子力発電所の新たな建設を決断することは容易ではない。

現在、カザフスタン国内で消費される電力の約88%は、化石燃料による火力発電によって賄われている。