コインメトリクスのデータによると、ビットコイン(BTC)のマイニング収益は2024年第4四半期に37億ドルに達し、前期比で42%増加した。2025年第1四半期もこれに近い36億ドル前後に達する見込みだ。

この収益増は、2024年4月の半減期によってブロック報酬が6.25BTCから3.125BTCに減少したにもかかわらず、マイナーの収益が安定してきた兆しとされる。ビットコインの半減期はおよそ4年ごとに実施され、1ブロックあたりに得られるBTCが半分になる。

コインメトリクスは2025年第1四半期の特別レポートで次のように述べた

「4回目の半減期からほぼ1年が経過し、マイナーは報酬の減少や利益率の圧縮、運営環境の変化に適応しながら安定化の時期を迎えている」

ただし、この回復基調は、進行中の貿易摩擦により短命に終わる可能性があると、Web3スタートアップWOO Xのエコシステム担当副社長ベン・ヨーク氏はコインテレグラフに語った。

「半導体関税が復活すれば、マイニングコストが上昇し、大手事業者に権力が集中する一方で、小規模なマイナーは撤退を余儀なくされる可能性がある」

Bitcoin mining revenues since 2022. Source: Coin Metrics

半減期後の適応戦略

JPモルガンが3月3日にコインテレグラフに共有したリサーチノートによれば、2025年に入り、仮想通貨市場の価格下落が続く中、半減期による収益悪化と相まって、マイナーは厳しい事業環境に直面している。

しかしコインメトリクスによれば、資金力のあるマイナーはこれに適応し、実際にはネットワークのハッシュレート(総演算力)は2025年1月に過去最高を記録した。

マイナーは、「より高効率なASIC(専用マイニング機器)への更新」や、「電力が安価で再生可能エネルギーが豊富な地域(アフリカや中南米など)への移転」といった対応を進めているという。

さらに、マイナーは既存インフラを高性能コンピューティング(HPC)に転用する手段として、「AIデータセンターのホスティング事業」への多角化も図っている。たとえば、ビットコインマイナーのコアサイエンティフィックは、CoreWeaveのAIワークロードを支援するため、200メガワットのハードウェア容量を提供することを表明している。

Bitcoin supply held long-term has increased over time. Source: Coin Metrics

マイナー報酬維持には手数料収入が鍵に

コインメトリクスは、長期的にマイナーの経済的インセンティブを維持するためには、ビットコインネットワーク上のトランザクション活動の活性化が不可欠であると指摘する。

「高額または時間的にシビアなトランザクションの増加は、手数料収入の増大を通じて、マイナーの報酬減少を補う可能性がある」とレポートは述べている。

ただ現時点では、「100ドル未満のトランザクションがビットコイン全体の約60%を占めている」という。これは、ユーザーがビットコインを取引で利益を得る資産ではなく「買って保有する資産」として扱う傾向が強まっているためだ。

実際、BTCの「供給速度(転送量と供給量の比率)」は年々低下しており、「ビットコインがますます取引されず保有される資産となっている」ことを裏付けている。