過去2週間、仮想通貨取引所バイナンスへのビットコイン(BTC)の流入が大幅に増加している。米国のトランプ大統領による関税政策と、発表を控える米国消費者物価指数(CPI)への不透明感が背景にあるとアナリストは見ている。

一方で、これは単なる売却シグナルではなく強気相場の兆しとなる可能性もあるとする意見もある。

投資家が資金をバイナンスへ移動

クリプトクオントの寄稿者マールテン・レグターショット氏は4月9日の投稿で、バイナンスのビットコイン残高が過去12日間で2万2106 BTC(約18億2000万ドル相当)増加し、合計59万874 BTCに達したと報告した。

「これは、バイナンスへのビットコイン流入が著しく加速していることを示している。マクロ経済の不確実性や、まもなく発表されるCPIを前に、投資家が積極的に資金をバイナンスへ移している可能性が高い」と同氏は述べている。

コインマーケットキャップによると、ビットコインの価格は記事執筆時点で8万2474ドルとなっており、過去24時間で8.8%上昇している。これは、トランプ大統領が中国を除くすべての国に対する関税を90日間停止したことが追い風となった格好だ。

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Binance’s Bitcoin Reserve has 590,874 Bitcoin. Source: CryptoQuant

米労働統計局は4月10日に3月のCPI(消費者物価指数)を発表する予定だ。

一般的に不確実性のある状況下では、トレーダーが仮想通貨を取引所に移し、売却する傾向があり、これが市場のボラティリティを高める要因となる。

しかし、Swyftxの主席アナリスト、パブ・フンダル氏はコインテレグラフに対し、「大量流入は売却のサインかもしれないが、マーケットは非常に流動的であり、バイナンスが需要増に備えホットウォレットへ資産を移しているだけという可能性もある」と指摘している。

同氏はさらに、「今後数日が、関税撤回後の仮想通貨市場の需要を見極める重要な局面になる」と述べた。

米中関係とCPI

4月9日、トランプ大統領は「相互関税」の一部導入を90日間延期すると発表。全世界を対象にした関税率は10%へ引き下げたが、一方で中国に対しては報復関税を理由に125%へ引き上げた。

「米中間の緊張は構造的なリスク要因として残っている」とフンダル氏は指摘する。

一方、仮想通貨アナリストのマシュー・ハイランド氏は、3月のCPIについて「インフレ率はおそらく2.5%近くまで急低下しているだろう」と予測。「また興味深い1日になる」と付け加えた。

別のアナリストであるダイム氏も、「予想を下回るCPIが出れば、市場はさらに上昇する」と述べている

しかし、ファクトセットのコンセンサス予測によれば、3月の消費者物価は前月比で0.1%の上昇が見込まれている。

なお、3月12日に発表されたCPIは予想を下回る3.1%で、期待されていた3.2%を下回った。

本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。