米選挙に影響を与えるのはまだ時期尚早? 政治献金と仮想通貨の現状

 米中部コロラド州のウェイン・ウィリアムズ州務長官が先週、仮想通貨に関する項目を含む政治献金に関する規則を提案した。これによると、仮想通貨による献金には、法定通貨と同じ上限を導入し、匿名の場合は最大20ドルに制限している。仮想通貨による政治献金に対しては、過去数ヶ月間、各州がそれぞれ異なるアプローチを採用しており、以前よりもばらつきが出ている。デジタルマネーを使って当選しようとしている候補者にとって、連邦選挙委員会(FEC)が14年に公表した見解が主な判断基準となっているが、この見解に拘束力はなく、仮想通貨による選挙資金調達方法に明確な指針を示ていないのが現状だ。

 FECが見解を発表した2014年の当時、ビットコインの価値は400ドル程度で、アルトコインはまだ選挙資金集めの手段と検討されていなかった。FECはビットコインを「現物寄付」とみなし、選挙での受け入れが可能であると規定。ビットコインを商品やサービスを購入するための金銭ではなく、組織運営に必要な商品やサービスを提供する、寄付の一形態とみなしたのだ。つまり、選挙運動で受け取ったビットコインを直接使うことはできず、一旦「清算」して現金化してから口座に預ける必要があることを意味する。寄付の上限に関しては、政党によって委員会の意見が分かれた。民主党員は上限100ドルを提唱し、共和党員は連邦基準の2700ドルを支持したのだ。FECの見解は規則というより勧告であるため、政治家の中にはその後、共和党が支持した高い方の上限2700ドルを採用する者が現れることとなった。

 FECのガイドラインがいくぶん不明確であるため、18年になって中間選挙が意識され始めると、政治献金と仮想通貨を巡って多くの州の規制当局が様々な問い合わせに直面してきた。その際、仮想通貨による献金が適切であるか否か、どのように規制すべきは、しばしば州政府の倫理機関が独断で決めてきた。今年これまでに、仮想通貨による献金を禁止した州委員会もあれば、この問題に関して態度を決めかねている州委員会もある。このため今回のコロラド州の取り組みがもし成功すれば、他のまだ態度を決めていない州にとって、検討すべき先例になるかもしれない。以下にいくつかの州の対応例を紹介する。

 2017年10月、カンザス州の候補者が州の政府倫理委員会に対し、献金に仮想通貨を利用する可能性について、ガイドラインを求めた。この際、同委員会は、ビットコインは「過度に秘密主義で追跡不能」であり、「全く身元を確認できないロビイスト」が使用して、地元の選挙に影響を与える可能性があると発表した。

 ウィスコンシン州のリバタリアン党は4月、州倫理委員会に対し、仮想通貨を使った政治献金を容認するかどうか、見解を明確にするよう求めた。同委員会は公聴会を開き、この問題は州法で判断されるべきとの結論を下した。同州議会がこの問題についてどのようなスケジュールで判断を下すかは、未だに発表されていない。

 ノースカロライナ州議会の共和党候補、エマニュエル・ウィルダー氏は4月、同様の要求を州選挙倫理実行委員会に申し入れた。ウィルダー氏は提出した要望書の中で、追跡可能性について懸念があることを認めつつも、献金の方法について法定通貨と仮想通貨の間で有権者に選択肢を与えることと共に、「今後登場する新たな金融サービス」への支援を提唱した。この要望はまだ審議中である。

 サウスカロライナ州では、よりスピーディーに判断が下されたが、仮想通貨愛好家にとっては不本意な結果となった。サウスカロライナ州の下院71区の23才の共和党候補者、ブリットン・ウルフ氏は6月の予備選挙で、州議会の倫理委員会に対し、選挙運動を支えるためデジタル通貨による献金を行なって良いか、判断を求めた。同委員会の答えは、州法で規定されている選挙献金の定義に仮想通貨が含まれていないため、利用できないというものだった。

仮想通貨献金による選挙運動のヒーローたち

 組織の方針というのは、現状への執着と惰性によって決まるものである。そのため、政治資金の手段としての仮想通貨が未だに主流とはほど遠い状況にあっても、それほど不思議なことではない。仮想通貨を利用する政治家は圧倒的に数が少なく、利用していたとしても、仮想通貨による献金が全資金に占める割合は小さいことがほとんどだ。

 しかしながら、扇動的自由主義者やテクノロジー支持者など特定の政治家ブランドたちは、自然とデジタル通貨献金を頼りにする姿勢をすでに見せている。仮想通貨による献金を受け入れることは、彼らが自らの信条を明示するための一環として、無くてはならないものになっているのだ。一般大衆レベルでの採用増加や価格の急騰もまた、さらに多くの政治家たちに仮想通貨へ目を向けさせる要因になっている。仮想通貨による献金の受け入れを主張して最も注目を集めている、米国の連邦及び州レベルの政治家を、以下に何人か紹介する。

アンドリュー・ヘミングウェイ

 2014年のニューハンプシャー州知事選に出馬した共和党候補のヘミングウェイ氏は、選挙運動に仮想通貨献金を利用した史上初めての公職候補者だった。ビットコインによる献金で、資金全体の約20%が集まった。ヘミングウェイ氏は本選挙に進むことなく、共和党予備選でウォルター・ヘイヴンスタイン氏に破れた。

ジャレド・ポリス

 首都ワシントンで最も熱狂的な仮想通貨及び分散型台帳技術支持者と言われるジャレド・ポリス米下院議員は、支援者からビットコインを受け入れた初の現職の連邦議会議員であると主張している。再選を果たした2014年の選挙期間中に、ポリス氏は少額ながら2000ドル相当の仮想通貨による献金を集めた。彼は2018年にコロラド州知事選に出馬する予定で、この数字を大幅に上回ることは確実だろう。

ダン・エルダー

 2016年ミズーリ州下院選でこのリバタリアンは、ビットコインだけを資金源として選挙を戦った史上初の人物として称えられる。この実験の結果はいくぶん不振に終わり、エルダー氏は全投票数の10%を獲得したのみだった。2018年、エルダー氏はミズーリ州下院79区から再び出馬している。

ランド・ポール

 ビットコインを積極的に取り入れている政治家の中でも特に目立つ存在のポール氏は、2016年に大統領選への出馬を発表した時、仮想通貨の献金を受け入れる最初の大統領候補者になった。前年には、これが大変な混乱を引き起こしている。

グレッグ・アボット

 テック通の若い有権者たちを引き付けるという明らかな動機の下、当時のテキサス州検事総長だったグレッグ・アボット氏は2014年4月、知事選でビットコインの献金を受け入れると発表した。この戦略は上手くいったようで、2015年1月にアボット氏は州知事に就任した。

オースティン・ピーターセン

 今年の米上院議員選でミズーリ州から当選を目指す共和党員、ピーターセン氏が仮想通貨が受け入れる理由は、その市場原理主義的信条に根ざすものだ。同氏の選挙マネージャーはビットコインの利用について、「考えるまでもなかった」と話す。ピーターセン氏の選挙運動は全体で10000ドル弱を集め、17年12月には、仮想通貨による単独の献金として史上最高額となる、0.284ビットコイン(当時で4500ドル相当)を受け取ったことで有名になった。この数字は法定通貨であったとしてもFECガイドラインから外れてしまうが、それをどのように合法化したのか?ピーターセン氏のウェブサイトでそのヒントが提供されている。

「個人が献金できる上限額は、選挙ごとに最大2700ドルである。予備選挙で2700ドル、本選挙で次の2700ドルを割り当てる」

 

パトリック・ネルソン

 ニューヨーク州から連邦議会選挙に出馬する民主党候補者のネルソン氏は、自身の選挙活動が「#ビットコイン のような技術」を進んで受け入れる「21世紀の選挙運動」であることを宣言した。同氏はその後、仮想通貨での資金調達の問題に直面した。選挙活動で集めた仮想通貨献金の処理のために利用していたビットペイが、ライセンス取得に関連してニューヨーク州とトラブルになったためだ。

ブライアン・フォード

 フォード氏は、政治の世界で仮想通貨の新たな主役になろうとしている。今年の米議会選挙でカリフォルニア州下院第45選挙区代表として当選を目指す民主党員の同氏は、MITメディアラボのデジタル通貨部門トップ、及びオバマ政権のテック顧問に従事した経験を持つ。テクノロジーを積極的に受け入れる同氏の姿勢は明確で、当選のチャンスは高いように見える。仮想通貨コミュニティーは同氏の出馬への明確な支援を既に認めており、17年の8月と9月だけで新記録となる66000ドル相当の仮想通貨を、同氏のウォレットに送っている。

 選挙運動資金に占める仮想通貨献金の割合がまだ控えめだとしても、一般大衆レベルでの採用が増えていることで、全体としては着実な増加傾向にある。今後すぐに、仮想通貨のみを資金源とした選挙運動がさらに増え、少なくとも部分的にはデジタル通貨献金のおかげで当選するケースも出てくることは、ほとんど疑いの余地がない。それら一連の流れが展開されていく中で、FECはより明確な規則を示し、仮想通貨献金が持つ限定的な追跡可能性の問題に取り組むことが余儀なくされるだろう。

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