世界最大級の仮想通貨取引所バイナンスは、ナイジェリア市場から撤退することを発表した。3月8日よりナイジェリアの法定通貨ナイラ(NGN)でのサービスを全て停止する。

バイナンスは3月5日、NGNの出金を3月8日より停止すると発表した。また、3月8日以降、ユーザーのバイナンス口座に残っているNGNは、ステーブルコインのテザー(USDT)に自動変換される。

バイナンスは、ユーザーに対し、NGNサービス停止前にNGNを引き出すか、NGN資産を売買するか、仮想通貨に変換することを推奨している。

「変換レートは、過去7日間の現物取引におけるUSDT/NGN取引ペアの平均終値に基づいて計算されます」と、発表では付け加えている。

さらにバイナンスはNGNの入金については即座に停止し、3月5日午後2時(UTC時間)以降の取引はサポートされなくなるとした。

発表によると、NGNを含むすべての取引ペアは3月7日にバイナンス上で削除される予定。バイナンスの決済サービスBinance Payも3月6日にサポートされる決済オプションのリストからNGNを削除する。

バイナンスはまた、バイナンスのピアツーピア・プラットフォームが2月下旬にNGNの取引ペアをすべて上場廃止にしたことにも触れた。

バイナンスがナイジェリア市場から撤退する背景には、同社がナイジェリア当局から厳しい規制調査を受けていることがある。

2月27日、ナイジェリア中央銀行総裁は、ナイジェリアの仮想通貨取引所が違法取引に関与している疑いがあると指摘し、バイナンスにおける資金の流れにも「疑わしい点」があると指摘した。

また、ナイジェリア国家安全保障顧問は、ナイジェリアの首都アブジャでバイナンスの2人の役員の旅券を押収したと報じられている。押収された役員は米国と英国の市民。

バイナンスのナイジェリアにおける違法取引疑惑が強まる中、ナイジェリア下院金融犯罪委員会は、バイナンスのリチャード・テンCEOを委員会に召喚し、事情聴取を行うことを求めた。同国情報筋によると、委員会の委員長は、バイナンスの経営陣に対し、3月4日までに委員会に出席するよう最後通告を行った。

ナイジェリアは近年、世界で最も急成長している仮想通貨経済圏の一つとして注目されている。

2023年9月、主要な仮想通貨分析会社チェイナリシスは、ナイジェリアを仮想通貨の採用率が世界第2位と評価した。2022年8月には、「仮想通貨」や「仮想通貨を購入」というキーワードのGoogle検索数が世界最多となり、仮想通貨への関心の高さが示されていた。

しかし、規制当局はナイジェリアにおける仮想通貨の急速な普及に歓迎的ではないようだ。2024年2月、ナイジェリア大統領顧問は、バイナンス、クーコインなどの仮想通貨取引プラットフォームを国内で禁止するよう提案した。2年前には、ナイジェリア中央銀行が規制対象金融機関に対し、仮想通貨取引所へのサービス提供を禁止していた。