マイクロソフトの筆頭設立者であるビル・ゲイツ氏が27日、オンライン掲示板Redditの公開質問セッションで、仮想通貨は「かなり直接的に死を招く稀有なテクノロジー」と書き込み物議を醸している。

 ゲイツ氏が書き込んだ内容は以下の通り。

 「仮想通貨の主な特徴はその匿名性にある。これは良いことではない。政府がマネーロンダリングや脱税、テロ資金を発見できる能力は望ましいものだ。現在、仮想通貨はフェンタニルなどのドラッグを買うために利用されている。つまり、かなり直接的に死を招く稀有なテクノロジーと言えるだろう。ICOや仮想通貨に見られる投機的な動きは、長期運用する投資家にとって極めてリスクが高い」。

 ネット上でのドラッグ購入が増えているのは確かだが、常用者の大多数はいまだに「従来の」方法で違法薬物を購入している。2017年の「Global Drug Survey」(世界ドラッグ調査)によれば、どの国でも、ダークウェブから薬物を購入しているのは半数以下にとどまっている。世界的に見ると、ダークウェブを利用しているドラッグ使用者の割合の中央値は10.1%だ。

Global Drug Survey

 ゲイツ氏の発言は、セッションに参加している掲示板ユーザーから厳しい批判に曝された。ビットコインのホワイトぺーパーの再読を勧める者もいれば、著名人としての立場を利用して仮想通貨市場に影響を及ぼそうとしている、と非難する声もある。

 「Hoticewater」と名乗るユーザーは、「(もし)ゲイツが、金銭の流れが不透明過ぎるという理由で仮想通貨を好まないと言うのなら、そのような発言に耳をそばだてる人は多いだろう」と書き込んだ。

 法定通貨(現金)もマネーロンダリングや脱税、テロ資金、ドラッグ購入などの違法行為に使用されることがある、と1人のユーザーが指摘。するとゲイツ氏は、

 「その通りで、匿名性を持つ現金がそのような活動に利用されてはいるが、送金には物理的な存在が必要だ。だから(現金を使った)身代金の支払いなどは困難となる」とした。

 2015年当時、仮想通貨に対するマイクロソフト創業者の姿勢はもっと前向きなものだった。ブルームバーグTVの「スマート・ストリート」という番組では、エリック・シャツカー氏に対し、「ビットコインは(法定)通貨よりも良い」とあからさまに発言していた。

 さらに「Financial Services for the Poor」(貧困層向けの金融サービス)活動の一環として、ビルとメリンダのゲイツ夫妻は、ケニヤの業者が仮想通貨を受け取れるようにブロックチェーンインフラの開発を支援していた。

 ゲイツ氏は仮想通貨について懐疑的かもしれないが、それを支えるブロックチェーンテクノロジーはマイクロソフトの関心の対象となっており、研究や採用が進展している。同社はここ1年ほど、「Microsoft Azure」や「ココフレームワーク」といったブロックチェーン関連のビジネス構想に複数参加しているのだ。

 先日は、ブロックチェーン基盤の分散型IDを「Microsoft Authenticator」アプリに統合する計画を発表した。ブロックチェーンのテクノロジーやプロトコルが自社プロジェクトのタスクに最適であり、安全な分散型デジタルIDを作成できると判断したようだ。