銀行業界の仮想通貨批判、論点はお決まりの「本質的価値」

 伝統的な金融業界にいる専門家たちはしばしば、ブロックチェーンプロジェクトや、ビットコインおよびイーサリアムといったオープンソース仮想通貨の信頼を失墜させようとしている。しかし金融業界の主張の多くには確固たる論理的基盤が欠けており、説得力がないものだ。

銀行業界の錦の旗

 経済の専門家が、仮想通貨市場や分散型ブロックチェーンの概念に対抗する議論をする際に拠り所としているのは、「本質的な価値がない」というものだ。エコノミストやノーベル賞受賞歴のある研究者は数年に渡って、ビットコインなどの仮想通貨に本質的価値(Intrinsic value、内在的価値とも)がないために、価格の乱高下が起きていると論じている。

本質的価値とは

 昨年12月、資産運用会社ブルックフィールド(約2500億ドルの資産を管理するカナダ企業)のブルース・フラットCEOは、以下のように語った。

 「それ(ビットコイン)には本質的な価値がない。私にはその価値が分からない。しかし私たちの『本質的価値』の定義に従えば、価値がないと言えるだろう。それについて考えたり投資したいと思う人たちがいても、それは彼らの問題であり、私たちには関係がない」

 しかしながら、金や米ドル、会社株式といったグローバル市場の資産・通貨・商品のどれにも本質的価値はないのだ。フラット氏の主張は、世界の主な株式市場のあらゆる資産にも当てはまる。

 ウォールストリートにあるヘッジファンド「ファンドストラット」のストラテジスト、トム・リー氏は、世界のどんな資産にも本質的価値はないという。グローバル市場で最大の価値の貯蓄手段であり、安全な資産とされている金(時価総額7兆ドル)でさえも、本質的価値はない、と同氏は語っている。金の大規模な供給源が発見され、金の国際市場に影響が出る可能性があるためだ。

 さらに「採掘済みの量の数百万倍もの金が存在する可能性もある」と述べ、米国の株式市場はデジタルの信頼性の上に成り立っているため、市場の資産に本質的価値はないと付け加えた。「ベビーブーム世代に『デジタルビジネスに価値があると証明できるか?』と尋ねても、フェイスブックやグーグル、ネットフリックス、アマゾン、アップルの価値をおそらく認めないだろう。だが、これらの企業はS&P500では最大級で、ほぼ完全にデジタルの信頼性の上に成り立っているデジタルビジネスだ」

バブルなのか

 コインテレグラフは先月20日、億万長者のポール・シンガーが1977年に設立した大手ヘッジファンドのエリオット・マネジメントが、仮想通貨市場を「バブルでイカサマ、人類の限りなき無知」とまで表現したことを報じた。同社は以下のようにコメントしている。

 「無価値なモノが神父や信者をひきつけて、価格がせり上がっている。それに釣られて、大衆ができるだけ高い価格でそれを買おうとしている。それが果たして仮想通貨の妥当性を意味するのだろうか。むしろ人類の限りない無知を意味してるのではないか」

 しかしヘッジファンドとしてエリオット・マネジメントが見落としているのは、自由市場が需要と供給で成り立っているという点だ。仮想通貨市場の投資家という「大衆」は、通貨に価値があると思っているからその価格で購入しているのだ。販売する側の設定した価格が見合わないと思われれば、大なり小なりの価格変動が需要と供給のバランスで起きる。これがすべての現代的市場の仕組みであり、株式市場にも同じモデルが適用されている。

銀行業界が恐れること

 コインテレグラフではまた、世界最大の投資銀行であるJPモルガン(時価総額4000億ドル)が、仮想通貨が自社のビジネスモデルにリスクや脅威をもたらすと認めたことも報じた。同社の年次報告には以下のような記述がある。

 「金融機関もノンバンクの競合企業も、決済処理やその他のサービスが、仲介者を必要としない仮想通貨のテクノロジーで崩壊するというリスクに直面している」

大部分の大手銀行はオフショア金融をターゲットとしているため、ビットコインなどの仮想通貨は銀行のビジネスモデルに対する脅威と見なすことができる。オープンソースで分散型の仮想通貨は、大手銀行のインフラと比べて、大量の送金を安い手数料で効率的に行うことができる。

仮想通貨の潜在力

 仮想通貨の技術的基礎を理解していない者や大手金融機関が仮想通貨市場に対して示している懸念や反対の姿勢は、市場の長期的な成長にとって前向きなものと言えるだろう。仮想通貨が銀行と競合できる潜在力を示しているからだ。

 今月14日、欧州最大の保険会社アリアンツ・グローバル(取り扱い規模6200億ドル以上)が「ビットコインは無価値で、仮想通貨の本質的価値はほぼゼロ」と顧客に語った。同社のグローバル経済・戦略部門の責任者シュテファン・ホフリヒター氏のコメントは以下の通り。

 「その本質的価値はゼロだろう、というのが私たちの見解だ。ビットコインは、例えばソブリン債や株、紙幣と違い、誰にも支払い義務を負っていない。また収入も生み出さない」

 さらに「ビットコインバブルがはじけるのは避けられないが、崩壊しても世界経済への影響は大きくない」と語り、以下のように続けた。

 「この仮想通貨の市場規模はいまだ非常に小さいため、ビットコインの崩壊による『実世界』への波及効果はわずかだ。したがって、金融安定性に対するビットコインのリスクは取るに足らない。少なくとも現時点ではそうだ

 1日の取引額が大部分の株式市場よりも大きい3500億ドル規模の市場がゼロに落ち込む、というアリアンツ・グローバルのような企業の主張は非論理的だ。株式市場と同様、仮想通貨市場もまた需要と供給に基づいているからだ。仮想通貨の需要が高まればデジタル資産の価値は上がり、需要が落ちれば価格は下落する。

 仮想通貨の構造や技術、経済的影響に関する基本的な知識のない専門家が繰り広げる、ビットコインや仮想通貨市場に対する根拠や裏付けのない批判があったとしても、これからも仮想通貨市場への大衆の需要が高まっていくだろう。

 

本記事に示されている見解は著者のものであり、Cointelegraph.comの立場を必ずしも反映するものではありません。

  • フォローはこちら: