勃興するアジア太平洋市場においてモバイル決済分野の「スーパープロトコル」の座を狙う「Alchemy Payment(アルケミー・ペイメント)」が動き出した。狙うは「法定通貨決済・仮想通貨決済・アジア市場」の総どりだ。創業者パトリック・ガン氏は投資銀や香港上場会社を経てデジタル決済ベンチャーQFPayを立ち上げた決済業界のベテランだ。今回、アルケミー・ペイメントを使った決済システムを導入するレストラン「CÉ LA VI(セラヴィ)」が位置するシンガポールの総合リゾート「マリナーベイサンズ」の屋上で話を聞いた。

コインテレグラフ主催のBlockShowに参加したガン氏

「あらゆる決済手段を縫い目なく繋ぎ、世界の決済シーンにハッピネス(幸福)をもたらしたいーー。」そう目を輝かせて語る創業者のガン氏と向き合って感じたのが、巨大市場に果敢に取り組むダイナミックさと元バンカーならではの戦略的周到さだ。

セコイア 楽天キャピタル HIS等も資本参加するQFPayと戦略連携

同氏が2012年に立ち上げたQFPayはQRコードを使って様々なキャッシュレス決済を可能にするソリューション業者で、中国の決済アプリ「ウィーチャットペイ」や通信会社等の海外パートナーとしての実績もある。カンボジア、中国、香港、インドネシア、日本、韓国、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、アラブ首長国連邦の13市場で主要決済ウォレット(アプリ等)と連携しサービス提供しており、アジア全体に攻め込んでいる。また、楽天キャピタルやセコイアキャピタルチャイナ、さらにHIS(エイチアイエス)等から戦略投資を呼び込むなど、今後のアライアンス構築へも余念がない。(注:HISはQFPayの日本法人の株主)

ちなみに本邦でもシンガポールで最も普及しているNETS決済を可能にするなど日本へも進出済みだ。

決済システムを導入するマーチャント側に寄り添うアルケミー・ペイメント

そんなアルケミー・ペイメントが最重要市場と位置づけるのは中国に続いて日本市場だ。

とはいえ日本のキャッシュレス決済市場は戦国時代。LINE Pay、PayPay、スイカ、楽天ペイ、オリガミ等が戦いを繰り広げている。仮想通貨と法定通貨の両方でのモバイル決済にハイブリッド対応するアルケミー ペイメントはどう戦っていくのだろうか。

「アルケミー・ペイメントではQRコードがアジアの決済市場を大きくとっていくと見ている。NFC(近距離無線通信規格)やクレジットカードに比べて導入コストが低いからだ。実際、QFPayの顧客である(海外の)銀行もQRコードを重視している。アルケミー・ペイメントは決済ソリューションとしてあらゆる決済方法に対応した上で、シール一枚で導入できるQRコードを活用し、マーチャント(ビジネス・導入店舗側)へのサービスに特化して他社との差別化を図る。」(ガン氏)

BlockShowで講演するガン氏

決済ゲートウェイ会社・銀行・通信会社等の「元締め」にアルケミー・ペイメントのシステムを提供し、一気呵成にマーチャントを取り込むという元バンカーならではの戦略だ。もちろん直にマーチャントを攻める営業にも力をいれる。

さらに注目すべきが様々な決済サービスを串刺しする「スーパー決済ソリューション」としての側面だ。現在世界各地に様々な決済サービスが混在しており、使い分けに辟易している人も多いだろう。アルケミー・ペイメントの決済プロトコルは仮想通貨を含むあらゆる決済ソリューションを集約するので、決済アプリのユーザー体験を劇的に向上させる。

決済プロトコルの域を超えて、ガン氏の構想はさらに広がる。

「究極的に、アルケミー ペイメントはマーチャント向けのスーパーアプリになる。銀行やマーチャントとの深い連携を活かし、例えば事業性ローンの即時審査・提供等が考えらえる。先ずは決済シーンにおけるシェアを獲得できれば関連サービスの展開は容易だ。」(ガン氏)

価格変動リスク無しで仮想通貨決済導入を可能に 仮想通貨決済普及への起爆剤にも

アルケミー ペイメントではもちろん、ビットコイン、ステーブルコイン、各種アルトコインの仮想通貨決済にも対応。アルケミー ペイメントがユーザーのビットコインを円やドル等の通貨に瞬時に転換し決済を行う仕組みで、導入店舗側には仮想通貨価格変動リスクを一切負わせない。「選択的にはなるが流動性がある仮想通貨に関しては積極的に検討したい。我々が決済シーンに入り込んでいくことで、仮想通貨のエコシステムにも貢献できると考えている。」(ガン氏)

今回取材が行われたシンガポールの著名レストラン「セラヴィ」もアルケミー・ペイメントを使った仮想通貨決済を採用。本記事著者も体験してみたが、アプリのインストールされたスマホでQRコードをスキャンするだけで簡単に仮想通貨決済ができた。日本でも同様の仕組みでビットコイン決済できるところはあるが、ここまで多くの仮想通貨の種類には対応していない。

ちなみに今回アルケミー・ペイメントを採用した「CÉ LA VIグループ」はルイ・ヴィトン等を展開する欧州嗜好品大手LVMH傘下のプライベートエクイティファンド「Lキャタルトン・アジア」が所有している。CÉ LA VI系列のレストランは今後日本展開も決定しており、日本でもアルケミー・ペイメントの展開が期待される。

中国・日本以外では東南アジア市場の開拓にも力をいれており、特にタイ・フィリピン・インドネシア等に注力している。

「現在某航空会社を含む大手企業との提携の話も進めており、仮想通貨決済に対する企業ニーズは高い。仮想通貨がグローバルな決済通貨になる日は近いと見ている。」(ガン氏)

ガン氏が見るビットコイン価格の今後は?「決済普及で価格はより安定」

取材の最後に、今後ビットコイン・仮想通貨価格がどうなるか見通しを聞いてみた。

仮想通貨の利用者・実用シーンが増えることで流動性が高まり、ボラティリティは減っていく。価格は上向きつつも安定していくだろう。」(ガン氏)

BlockShowで講演するガン氏

同氏は仮想通貨の投機的側面ではなく、あくまでも仮想通貨が広く普及していく将来を見据えている。仮想通貨が投機家のおもちゃだった時代は終わったのだ。

ガン氏のような辣腕元バンカーの挑戦を見て、仮想通貨の世界に新しい波が来ているの感じた。

11月21日東京大学に講演が行われた

11月21日東京大学において、Alchemy PaymentのCEO、Patrick Ngan氏のAlchemy Paymentに関する講演が行われた。会場は聴衆の熱気に包まれ、Parick氏と積極的に意見交換したり質問したりする姿が見られた。

東京大学で将来の決済技術について講演を行うAlchemy Global Payment SolutionsのCEO、Patrick Nagn(顔永豪)氏

会場は聴衆の熱気に包まれ、Parick氏と積極的に意見交換したり質問したりする姿が見られた。

2019BlockShowでの講演

BlockShowでの講演はYouTube(Alchemy Global Payment Solutions at BlockShow 2019)でも観れる。

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