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Helen PartzHelen Partz

AI生成コンテンツの氾濫 ブロックチェーンは何が「本物」かを証明できるか?

AI生成コンテンツの氾濫 ブロックチェーンは何が「本物」かを証明できるか?
年始スペシャル

オンラインで画像を見かけて、「これは本物か、それともAIか」と疑問に思ったことはないだろうか。AIが生成したコンテンツと人間が作ったコンテンツの境界が溶け合う現実に、閉じ込められたような感覚を覚えたことはないだろうか。果たして、私たちは両者を区別することができるのだろうか。

人工知能(AI)は創造の可能性を大きく広げた一方で、新たな課題も生み出し、オンライン上のコンテンツの受け止め方そのものを変えつつある。AI生成の画像や音楽、動画がソーシャルメディアにあふれ、ディープフェイクやボットによる詐欺も横行するなど、AIはインターネットの広範な領域に影響を及ぼしている。

グラファイトの調査によると、2022年のChatGPT登場をきっかけとして、2024年後半にはAI生成コンテンツの量が人間による制作物を上回った。別の調査では、2025年4月時点で、調査対象ページの74.2%以上にAI生成コンテンツが含まれていたとされている。

AI生成コンテンツが高度化し、人間の制作物とほぼ見分けがつかなくなるなかで、人類は差し迫った問いに直面している。2026年を迎えるにあたり、ユーザーはどこまで「本物」を識別できるのかという問題だ。

AIコンテンツ疲れが拡大

AIの「魔法」に対する数年にわたる熱狂の後、オンラインユーザーの間では、AI技術の止まらない進化に対する集団的な疲労、いわゆるAIコンテンツ疲れが広がっている。

ピュー・リサーチ・センターの調査によると、2025年春の調査では、世界の成人の34%がAI利用の拡大について「期待よりも懸念の方が大きい」と回答し、42%は「懸念と期待が同程度だ」と答えた。

EYスイスの最高AI責任者であるエイドリアン・オット氏は、コインテレグラフに対し、「AI生成コンテンツの新規性は徐々に薄れ、現状では予測可能で過剰に供給されていると感じることが多くなっており、複数の研究でAIコンテンツ疲れが指摘されている」と語った。

Source: Pew Research

同氏はさらに、「ある意味で、AIコンテンツは加工食品に似ている」と述べ、両者の進化の過程を重ね合わせた。

「最初に可能になったとき、市場は一気にあふれた。しかし時間がたつにつれ、人々は産地が分かる地元産の質の高い食品に戻っていった」とオット氏は説明する。

「コンテンツも同じ方向に進む可能性がある。人は、自分が読む考えの背後に誰がいるのかを知りたいものだ。絵画も、質だけでなく、画家の物語によって評価される」

オット氏は、食品における「オーガニック」表示のように、「人間制作」といったラベルが、オンラインコンテンツにおける信頼のシグナルとして登場する可能性があるとの見方を示した。

AIコンテンツ管理の課題

多くの人が、特に意識せずともAI生成の文章や画像を見抜けると考えがちだが、AI制作コンテンツを検出する問題はそれほど単純ではない。

9月のピュー・リサーチの調査では、米国人の76%以上がAIコンテンツを見分けられることが重要だと答えた一方、正確に検出できる自信があると回答したのは47%にとどまった。

「偽の写真や動画、ニュースにだまされる人がいる一方で、何も信じなくなったり、都合の悪い本物の映像を『AI生成だ』と片付けてしまう人もいる」とオット氏は述べ、オンラインにおけるAIコンテンツ管理の難しさを強調した。

Source: Pew Research

オット氏によれば、各国の規制当局はAIコンテンツにラベルを付ける方向に進んでいるものの、「必ず回避手段は存在する」という。その代替案として同氏が提案するのが、事後的に偽物を見抜くのではなく、撮影された瞬間に実在コンテンツを認証し、真正性を実際の出来事にひも付ける逆方向のアプローチだ。

「出自証明」を巡るブロックチェーンの役割

「合成メディアが実写映像と区別しにくくなるなか、事後認証に頼る方法はもはや有効ではない」と語るのは、動画認証ソフトを開発するスタートアップ、スウェアの創業者兼CEOであるジェイソン・クローフォース氏だ。

「保護は、コンテンツの出発点から信頼を埋め込む仕組みから始まる」と同氏は述べ、ブロックチェーン技術を用いて制作時点からデジタルメディアの信頼性を確保するというスウェアの中核思想を強調した。

スウェアのビデオ認証ソフトウェアはタイムが選ぶ今年の最優秀発明の1つに選ばれた Source: Time magazine

スウェアの認証ソフトは、ブロックチェーン上の台帳と各コンテンツを結び付けるフィンガープリンティング手法を採用し、改ざん不可能な「デジタルDNA」として出自証明を提供する。

「どれほど巧妙な修正であっても、スウェアのプラットフォームでブロックチェーン認証済みの原本と比較すれば特定できる」とクローフォース氏は説明する。

「真正性が組み込まれていなければ、過去も現在もすべてのメディアは疑念にさらされる。スウェアは『これは偽物か』と問うのではなく、『これは本物だ』と証明する。この転換こそが、真実を守るための先回りかつ将来に耐えうる解決策となる」

これまでのところ、スウェアの技術はデジタルクリエイターや企業パートナーによって利用されており、ボディカメラやドローンなどの映像撮影デバイスを含む、主に映像や音声メディアを対象としている。

「ソーシャルメディアとの統合は長期的な構想だが、現在は映像の完全性が極めて重要となるセキュリティや監視分野に注力している」とクローフォース氏は語った。

2026年展望:プラットフォームの責任と転換点

2026年を迎えるにあたり、オンラインユーザーの間ではAI生成コンテンツの増加と、合成メディアと人間制作メディアを見分ける能力への不安が高まっている。

AI専門家は「本物」とAI生成メディアを明確に表示する重要性を強調している。だが、AIがインターネットを席巻し続けるなかで、プラットフォームが信頼できる人間制作コンテンツを優先すべきだと、どれほど早く認識するかは不透明だ。

「最終的には、AIコンテンツを除外し、高品質な素材を表示するためのツールを提供する責任はプラットフォーム側にある。そうしなければ、人々は離れていく」とオット氏は指摘する。「現時点で、個人が自力でフィードからAI生成コンテンツを排除する手段はほとんどなく、そのコントロールは主にプラットフォームにある」。

人間制作メディアを識別するツールへの需要が高まる一方で、問題の核心はAIコンテンツそのものではなく、その制作意図にある場合が多い点も見逃せない。ディープフェイクや偽情報は新しい現象ではないが、AIによって規模と速度が飛躍的に増大した。

2025年時点で、真正なコンテンツの識別に取り組むスタートアップはまだ少数にとどまり、プラットフォームや政府、ユーザーが緊急かつ協調的に動く段階には至っていない。

クローフォース氏は、人類はまだ、改ざんメディアが明白で否定しようのない被害をもたらす転換点に達していないと指摘する。

「訴訟、捜査、企業統治、ジャーナリズム、公共の安全など、あらゆる分野でだ。だが、その瞬間を待つのは誤りだ。真正性の基盤は、今こそ築くべきだ」

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