10月2日、ビットコイン(BTC)の価格は1日で5.5%上昇して2万8600ドルとなったが、時価総額で最大の仮想通貨は勢いを失ってしまった。理由の1つは、待望されていた先物イーサリウム上場投資信託(ETF)の立ち上げが、予想されたほどの取引高を生み出せなかったことだ。
価格レンジの上限に近いところへの最近の上昇は、投資家にとっては前向きな兆候だろうが、米連邦準備制度理事会(FRB)の幹部からの最近のコメントは、差し迫った景気低迷への懸念を再び浮上させた。
ビットコインは10月3日に2万7200ドルでのサポートを維持し、その短期的な強さを示した。その後、10月5日には2万7500ドルを突破した。しかし、3つの主要な取引指標は、サポートが弱いレベルにあることを示している。これらの指標には、現物市場の取引高、デリバティブ商品、そして現物型ビットコインETFの承認への期待が含まれる。
マクロ経済懸念がBTC価格の下落圧力に
10月2日、米FRB副議長であるマイケル・バー氏はニューヨークで、高金利が経済活動を制約するため、経済成長が「潜在力も下回る」ことを予想していると述べた。同氏はまた、現在の金融政策の影響がまだ実現していないとも指摘した。CMEのFedウォッチツールによれば、市場は2023年にFRBによるもう1つの利上げの可能性について、意見が分かれている。
また10月3日には米国10年物国債の実質利回りが2.47%に達し、約15年ぶりの高水準となった。これは、米ドル指数(DXY)が10か月ぶりの高値に達する一因となった。
さらにロイターは、米国が「レジリエントな経済」を持つため、欧州や中国と比べてより強い成長見通しを持つ投資先として、相対的に魅力的になっていると報じた。
BTCのレバレッジロング需要は減少
ビットコインの月次先物は通常、現物市場よりもわずかにプレミアムをつけて取引され、売り手が決済を遅らせるためにより多くの資金を求めていることを示している。その結果、BTC先物契約は通常、年率5%から10%のプレミアムで取引される。これは、コンタンゴと呼ばれる状況で、仮想通貨市場だけに特有のものではない。

BTC先物のプレミアムは、引き続き5%の中立閾値を下回り、中立から弱気の範囲にとどまっている。これは、レバレッジロングポジションに対する需要が不足していることを示している。
さらに、従来の取引所でのスポット取引活動は、2020年末以来見られないレベルまで減少している。これは、機関投資家の参加が減少していることを示している。

ジェーン・ストリート・グループやジャンプ・トレーディングなどの米国ベースのトレーディング企業は、2023年5月を前に仮想通貨市場から距離を置くことを選んだ。これが取引高の現象の一因になっているようだ。ブルームバーグによれば、この移行の主な理由は「規制当局の監視の強化」であり、市場が機関投資家にとって魅力的でなくなったとされている。
現物型ビットコインETFへの期待が低下
2023年のビットコインの68%の上昇は、米証券取引委員会(SEC)による現物型ビットコインETFの承認への期待に支えられている。ただ規制当局が何度も延期したにもかかわらず、10月2日に立ち上げられたイーサリウム先物ベースのETFは、あまり需要がなかった。
さらに、グレースケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)を現物型ビットコインETFに転換するための裁判所の有利な判決にもかかわらず、GBTCはビットコインと比較すると19%のディスカウントで取引されている。このデータは、現物型ビットコインETFの承認に対する期待の欠如を示している。
結局のところ、ビットコインは2万8500ドルのレジスタンスレベルを超えることができず、FRBの幹部らは差し迫った経済的な圧力を警告している。したがって、短期的にこのレジスタンスを突破する見込みはあまり高くないようだ。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン
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