2022年は仮想通貨市場にとって特に波乱の年であり、多くの分散型・中央集権型の事業体が破綻したり、生き残るために戦う年となった。まるで弱気相場の最終段階にいるようだった。悪質な業者や慣行が一掃され、劇的ではあるがシステム全体の成熟のために必要なプロセスであるようにもみえる。そして、この仮想通貨の冬から生まれるWeb3テクノロジーは、すべてを変えていくことになるだろう。

Web3は情報交換の次の進化を意味し、それは農業中心の社会から工業中心の社会への転換のようなものだ。人間を中心に据え、プライバシーを優先させたコンピューティング・ファブリックだ。ブロックチェーン技術は、インターネットとの新しい関わり方をもたらし、私たちがお互いに接続する方法を根本的に変えていくだろう。未来はどうなるのか。2023年に私たちが目にするかもしれないことを予測してみよう。

1)仮想通貨ベンチャーキャピタルの資金は2023年前半まで減少し続けるが、それは必ずしも悪いことではない。むしろ合理的なポイントまで正常化しつつあると言えるだろう。投資家は落ちるナイフを掴みたくないので、より広いマクロ経済の懸念や世界的な景気後退リスクも考慮しながら、底を打つを待っているのだ。同時に、新しい決済や相互運用性、融資、取引プロトコルは資金調達を続けることになるだろう。それにより最近のハッキングや規制変更、取引所の崩壊から生じる変化の結果により生じた空白を埋めることになるだろう。

2) 2023年、ビッグブランドの必要性を否定した最初のWeb3アナーキストの精神は消え去るだろう。参加者は、ビッグブランドからの外部資金がない場合、投機家のお金で価値が支えられているトークンしかないことに最終的に気づくだろう。その代わりに、プロジェクトは大規模なブランドと、彼らがもたらす広告、マーケティング、スポンサー資金を受け入れ、実際のユーザー間で有意義な外部資金を分配することによって、Web3の夢を達成することができるようになる。ナイキ、スターバックス、メタなどのWeb2ブランドは、引き続きNFT(非代替性トークン)を好ましいフォーマットとして、マネタイズよりも顧客獲得とエンゲージメントに重点を置きながら、Web3での実験を続けていくことだろう。

3) 人々は、Web3コミュニティについて多くの人が考えてきた方法がでたらめであることに気づくだろう。「コミュニティ」はしばしば、「急成長という共通の夢を共有するDiscordの投機家の集まりで、成長エンジンが動かなくなるとプロジェクトを放棄する」ことを主に説明するために使われる、ただ美しい言葉だった。もちろん、このルールの例外もある。例えば強力でエンゲージメントのある分散型金融コミュニティや、LinksDAOのようなオンライン-オフラインの分散型自律組織などだ。2023年に私たちが気づくことは、プロジェクトとコミュニティの適合というWeb3の理想全体が、しばしばプロジェクトと投機家の適合でしかなかったということだろう。つまり、実際の製品と市場の適合性という基本的なことを無視するわけにはいかないのだ。

4) Web3アプリの開発コストが下がり、ユーザー獲得コストが上がると、品質と発見が重視されるようになる。Web3はそのApp StoreとAdMobのモーメントを持ち、開発者とユーザーが効率的にお互いを見つけることができるようになる。当初はL1やウォレットがこのポジションを争うだろうが、新しいプレーヤーが引き継ぐ可能性が高い。2023年にブレイクするWeb3アプリは、2009年の「アングリーバード」のように、シンプルなユーザー体験とグラフィック、直感的かつ革新的なエンゲージメントとマネタイズのメカニズムを備えた、モバイルネットの黎明期にダウンロード数や売上がトップだったアプリのようなものになるだろう。

5) ゲームの「安定性」と「持続性」を求める現在のトレンドは、安定性をビルトインした製品の波を生み出すだろう。ただ、ほとんどの製品は仮想通貨投機のダイナミックなブームとバストの性質を持たないものになるだろう。これは、既存のWeb2ビデオゲームの模倣版のように感じられ、平坦で静かなプレイヤー体験を生み出すだろう。やがてゲーム開発者は、市場投機が楽しみの一部であることを学び直し、健全で責任ある方法でそれを取り入れようとするだろう。

6) Web3は、機能的には既存のビジネスのクローンでありながら、基本的なブロックチェーン・コンポーネントをいくつか備えたアプリで、確固たるニッチ市場を提供し続けるだろう。これらのアプリは、多くの初期のインターネット企業(ウェブ書店としてのアマゾンなど)やモバイル企業(モバイル株式トレーダーとしてのロビンフッドなど)と同様に、従来のコア製品の提供を行いながらも、Web3に対して何らかの親和性を持つユーザーのニッチ市場を切り開くことになるだろう。これらの企業は、コア製品の提供よりも、マーケティングとエクスペリエンスで大きく差別化することになるだろう。そのうちのいくつかは、アマゾンのように、真にパラダイムを打ち破るイノベーションにムーンショット的な投資をするかもしれない。

7)コンプライアンスコストとオーバーヘッドに対処するため、ブロックチェーンアプリは既存の時価総額トップのトークンに依存し、トークン関連の仕組みを動かすことが多くなるだろう。イーサリアムは2023年のロードマップを延期し続けているが、最終的にガス代を削減するためにシャーディングを実装すれば、代替L1への関心は大きく低下するだろう。

8) ステーブルコインは仮想通貨資本市場の外でより多くのユースケースを見つけ、主に企業間でより採用が進み、Web3内のイノベーションが進むだろう。 政府や民間企業によるブロックチェーンの研究開発は続き、中央銀行デジタル通貨や市場インフラなど、集中型の公的インフラを発表するところもあるだろう。

9) 仮想通貨をめぐる文化戦争は2023年末に加熱し、米国の選挙における争点になるだろう。偶発的なハッキング(Wormholeなど)、過剰なリスク露出(Terraなど)、完全な詐欺(SafeMoonなど)など、ブームとその崩壊が続くことになるだろう。それに伴い、仮想通貨に対して強硬な姿勢を示す政治家は増えるだろう。しかし、米国政府は規制に関して優柔不断な態度を取り続け、国内産業に不利益をもたらすだろう。どのような規制であっても、パッチワークのようなもので、リスクの高いプロジェクトがその隙間をすり抜ける可能性が残っている。

10) ビルダーが弱気市場を通して発展するにつれ、2023年には、NFTプロファイル・ピクチャー・プロジェクト、プレイ・トゥ・アーン・プロジェクト、代替L1など、既存の一般的な物語を超えた新しい成長分野が出現し始める時期が来るだろう。新しいシナリオは次のサイクルを推進し、うまくいけば、これらの新しいフレームワークがリアルな消費者のユーティリティと採用を促し、数億人の新しい仮想通貨ユーザー/ウォレットをもたらすだろう。

将来の不確実性はチャンスでもあり、大きな変化が起きたときに、素早く適応できる人は利益を得ることができる。

 

Mahesh Vellanki SuperLayerのマネージングパートナーであり、Rallyの共同創業者でもあるMahesh Vellanki。Citiで投資銀行家として勤務した後、Redpoint Venturesのプリンシパルとして活躍している。

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