昨今の暗号資産市場の成熟と共に、オプション取引のニーズが高まっています。主要通貨としてのBTCやETHだけではなく、アルトコインを対象としたオプション取引は、投資家にとって新たなリスク管理の選択肢や収益機会を提供します。本記事では、暗号資産オプションの基本概念、特にコールオプションとプットオプションに焦点を当て、その仕組み、利用方法、および市場での活用について詳しく解説します。
暗号資産オプションとは?
暗号資産オプションは、ある特定の期日(満期日)に特定の価格(権利行使価格)で暗号資産を購入する権利(コール)または売却する権利(プット)を売買する取引です。これは、株式や他の金融資産におけるオプション取引と基本的な概念は同じですが、対象となる資産がビットコインやイーサリアムなどの暗号資産である点が異なります。
1. コールオプション
コールオプションは、購入者に対して、事前に定められた行使価格で特定の暗号通貨を購入する権利を与えます。このオプションが利益となるのは、将来当該通貨が価格上昇する場合です。例えば、ビットコインの価格が現在よりも高くなると予想される場合、投資家はコールオプションを購入し、価格上昇が実現した際に利益を得ることができます。
コールオプションの例「ETH-31MAY24-3400-C」
下記チャートはイーサリアムオプションの一つの値動きを表しています。
「ETH-31MAY24-3400-C」とは、ハイフンで区切られた文字列の先頭から順に、①イーサリアムオプション ②2024年5月31日満期 ③権利行使価格$3400 ④コールオプションということを表しており、同じイーサリアムオプションでも異なる満期日、行使価格の銘柄が多く存在します。
こちらのコールオプション(ETH-31MAY24-3400-C)は本記事寄稿時である4月末時点で、$227程度で取引されています。このオプションを購入すると、満期日までの間に売却することが可能ですが、もし中途売却せず、満期時点でイーサリアムの現物価格が上昇していた場合、本オプションポジションの価格上昇が見込まれます。
満期日における3つのシナリオ(コールオプション)
ここで、本コールオプションを満期まで保持した際の3つのシナリオについて考えてみましょう。
イーサリアムの現物価格が$3400以下であった場合
「ETH-31MAY24-3400-C」は、5月31日にイーサリアムを$3400で購入する権利です。満期日のイーサ価格が$3400よりも下であった場合、権利を行使するよりも、市場の方が安く購入できるため、権利行使する動機がありません。つまり、本ポジションは捨てられることとなります。
イーサリアムの現物価格が$3400以上$3627以下であった場合
仮に満期日のイーサ現物価格が$3500であったとしましょう。本オプションの保有者はイーサを$3400で購入する権利を持つため、権利を行使した方が安く購入できます。よって権利行使します。
この時現物価格との差額は$100となるため、本オプションの理論的価値も$100となっています。購入費用$227を考慮すると、実質$127のマイナスとなります。($3500 - $3400 - $227 = $127)
イーサリアムの現物価格が$3627以上であった場合
先述の通り、満期日のイーサ現物価格が$3400を超えていた場合、既に保有しているコールオプションの権利を行使した方が有利です。但し、取引の損益計算にあたり、そのオプションを保有するための購入費用である$227を考慮に入れなければなりません。
(権利行使価格)$3400 + (オプション料金)$227 = $3627が本取引の損益分岐点となり、満期日におけるイーサ現物価格がこの値を超えると、超えた分だけ無制限にプラスとなります。
例えば5月31日のイーサ現物価格が$4900ドルであった場合、理論的な利益は$1273 ($4900 - $3400 - $227 = $1273)となります。
2. プットオプション
プットオプションは購入者に対して、事前に定められた行使価格で特定の暗号通貨を売却する権利を与えます。このオプションは、主に当該通貨の価格下落により利益となります。投資家が価格下落を予想してプットオプションを購入した場合、価格が実際に下がったときにオプションを行使し、売却することで差益を得ることができます。
プットオプションの例「ETH-17MAY24-3150-P」
続いて、下記はプットオプションのチャートを表しています。
「ETH-17MAY24-3150-P」とは、①イーサリアムオプション ②2024年5月17日満期 ③権利行使価格$3150 ④プットオプションということを表しており、読み方は上述のコールオプションと同様です。④の「P」とはプットの、Cはコールの頭文字です。こちらもまた、同じイーサリアムオプションでも、異なる満期日、行使価格ごとに複数銘柄存在します。
こちらのプットオプション(ETH-17MAY24-3150-P)は本記事寄稿時である4月末時点で、$174程度で取引されています。このオプションを購入すると、満期日までの間に売却することが可能ですが、もし中途売却せず、満期時点でイーサリアムの現物価格が下落していた場合、本オプションポジションの価格上昇が見込まれます。
満期日における3つのシナリオ(プットオプション)
ここで、本オプションを満期まで保持した際の3つのシナリオについて考えてみましょう。
イーサリアムの現物価格が$3150以上であった場合
「ETH-17MAY24-3150-P」は、5月17日にイーサリアムを$3150で売却する権利です。満期日のイーサ価格が$3150よりも上であった場合、権利を行使するよりも、市場の方が高く売却できるため、権利行使する動機がありません。つまり、本ポジションは捨てられることとなります。
イーサリアムの現物価格が$3150以下$2976以上であった場合
仮に満期日のイーサ現物価格が$3050であったとしましょう。本オプションの保有者はイーサを$3150で購入する権利を持つため、権利を行使した方が高く売却できます。よって権利行使します。
この時現物価格との差額は$100となるため、本オプションの理論的価値も$100となっています。購入費用$174を考慮すると、実質$74のマイナスとなります。($3150 - $3050 - $174 = $74)
イーサリアムの現物価格が$2976以下であった場合
満期日のイーサ現物価格が$3150を下回っていた場合、既に保有しているプットオプションの権利を行使した方が有利ですが、取引の損益計算にあたってはそのオプションを保有するための購入費用である$174を考慮に入れなければなりません。
(権利行使価格)$3150 -(オプション料金)$227 = $2976が本取引の損益分岐点となり、満期日におけるイーサ現物価格がこの値を下回ると、下回った分だけプラスとなります。
例えば5月17日のイーサ現物価格が$900ドルであった場合、理論的な利益は$2076 ($3150 - $900 - $174 = $2076)となります。
3. コールとプットまとめ
本稿では、コールオプションとプットオプションの特性と損益シナリオについて分析しました。これらのオプションは市場の変動に適応し、戦略的に利益を追求するための効果的な手段となり得ます。
オプション取引は、極めて高いリターンを提供する潜在力を持ちます。暗号資産市場におけるさらなるイノベーションと成熟が進むにつれて、オプション取引の重要性と利用は今後も増えていくでしょう。
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