JPモルガンのブロックチェーン特許出願、リップルと競合するとの見方も

 JPモルガンはこのほど、仮想通貨業界に再び話題をもたらした。ブロックチェーンのような分散型台帳技術(DLT)に基づいたピア・ツー・ピア(P2P)送金ネットワークの特許出願を発表した。一部の仮想通貨ファンは、この動きを極めて偽善的と評した。JPモルガンは(大部分は歯に衣着せぬジェームズ・ダイモンCEOのことだが)、ビットコインや仮想通貨を取り巻く恐怖や不確実さ、疑惑の責任があると批判している。

「ビットコインは詐欺の一種だ」

 ダイモンCEOやJPモルガンが17年に生んだ伝説は、依然として仮想通貨ファンの記憶に新しい。17年9月、ダイモンCEOがビットコインを「詐欺」と言い放った。この悪名高い言葉こそ、この伝説の始まりである。その直後、どういうわけかJPモルガンはビットコインを大量に購入した。

 さらに不可解なことに、1週間もしないうちにダイモンCEOは「政府はじきにビットコインを禁止する」と述べ、ビットコインを激しく非難したのだ。同時に、「仮想通貨には何ら価値はない」と言い放ち、業界全体に宣戦布告した。また、1ヶ月も経たないうちにビットコイン投資家を「愚か者」呼ばわりし、「いずれツケが回ってくる」と付け加えた。
しかし、JPモルガンは17年11月、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)にてビットコイン先物取引を行う計画を発表しており、銀行側の戦略とCEOの考えが必ずしも一致しているわけではないようだ。17年12月には、JPモルガンのストラテジストが「規制された先物市場は、ビットコインに合法性を付与する」と言及するほどであった。

 今年1月、ダイモンCEOは「ビットコイン=詐欺」という考えを180度転換し、「あのようなコメントをし、後悔している」と述べた。これらはすべて4か月間の間に起きた出来事だ。この一連の出来事で、『JPモルガン&ダイモンCEO=ビットコインと仮想通貨に敵対する「悪役」』という構図が成り立った。

ブロックチェーンへの批判はしない

 ビットコインと仮想通貨に対する疑いがあるのは明白だ。しかし、銀行側もCEOも、ブロックチェーンの合法性に対して物申したことは一度も無かった。事実、JPモルガンは、ブロックチェーンの基礎となる技術の支援・検証を最初に行った企業の1つである。

 1999年、JPモルガンは代替支払ネットワークの特許申請を行った。16年には、ブロックチェーンに基づいた独立プロジェクト「ジュノ(Juno)」と「クォーラム(Quorum)」を発表した。また、同銀行は、300社以上で構成されるエンタープライズ・イーサリアム・アライアンス(EEA)に加盟している。

 JPモルガンはブロックチェーンのサポート分野で高い実績をあげており、最近の特許申請は何ら驚くべきことではない。事実、同銀行は17年10月30日に、最初の特許を申請している。これはブロックチェーン技術を用いた銀行間の送金を促進させる目的があった。ダイモンCEOがビットコイン投資家を「愚か者」呼ばわりしたわずか2週間後のことである。

後に驚かされる可能性も

 JPモルガンが驚きをもって見られたり、偽善的に捉えられる理由は、ビットコインやブロックチェーン、仮想通貨が主流のメディアにおいて、依然として互換性のある概念として使用されているからである。しかし、これは正確ではない。JPモルガンが分散型台帳技術に基づく特許を申請したとしても、ビットコインの協力なサポーターであるとは限らないからだ。

 しかし、後に我々は驚かされるかもしれない。ブロックチェーンは、ビットコインの基盤となる技術に過ぎなかったが、その状況から進化しつつある。また、仮想通貨ネットワークの基礎である以外にも、潜在的なユースケースを秘めている。例えば、医療分野においてはワクチンを追跡出来るだろうし、選挙の際には安全性を確保した遠隔投票も可能になるかもしれない。政府の公式文書が改ざんされることなく、正確に保管されるようになるかもしれない。

 特に、JPモルガンは「分散型台帳を使用したネットワーク送金の処理方法」に関する特許を申請しているようだ。ここで疑問が生じてくる。そのような送金処理を行うために、何らかの形式のデジタルトークンを利用することなく、ブロックチェーンに基づいたP2P送金ネットワークを保有することは可能なのだろうか。一部の人はそれが可能とは信じておらず、JPモルガンがリップルの国際送金プラットフォームと直接競い合うとまで主張している。

「この競合は有り得ることだ。リップルが今まさに市場に投入しようとしているものを記述していることは事実である。この特許に承認が下りることは有り得ない。もし下りるとすると、リップルは既に機能しているので、既存技術がリップルを保護するだろう。(誰かが言っていたように)それはまるで電気自動車に特許を申請するようなものである」

リップルの機能について

 リップルは世界中に銀行を結び付け、国際送金サービスをリアルタイムに顧客へ提供することができる。従来の考えで言うと、国際決済を行うには多くの仲介企業を必要とする。つまり、取引完了には4日ほどかかるということだ。

 リップルは、トランザクションプロトコルを使用することで銀行が仲介業者を回避することを可能にし、直接取引の実行、それによるコストと処理時間の削減を実現した。トランザクションプロトコルには、送金開始・取引前検証・資金の暗号化・決済・確認の5段階が存在する。

HOW RIPPLE WORKS

 メッセージシステムは、送金銀行と受取銀行の情報交換の調整に使用される。インターレッジャープロトコル(ILP)台帳は、実際の資金移動の調整に使用される。リップルの目標は、処理時間を短縮し、エンドツーエンドの可視性と取引承認率を高め、最終的に取引コストを削減することである。JPモルガンの特許申請では、「金融取引の決済及び勘定調整としてのネットワーク送金を目的とする分散型台帳の適用システム及び適用方法」のプロセスを記載している。

 申請ではこう主張されている。「一実施形態では、分散型台帳を使用したネットワーク送金の処理方法は以下を含む:

  1. 送金者が、受取銀行に向けた支払指図書の作成に着手し、
  2. 送金銀行が、P2Pネットワーク上の分散型台帳に支払指図書を記帳・委託し、
  3. 受取銀行が、P2Pネットワーク上の分散型台帳に支払指図書を記帳・委託し、
  4. 送金銀行が、内部システムを介して支払指図書を検証・処理し、銀行の勘定の借方に記入する」

JP MORGAN BLOCKCHAIN PAYMENT NETWORK

 よって、JPモルガンが提案したシステムは、勘定調整を行う分散型台帳ブロックチェーンと関連して使用される、送金・受取銀行間のダイレクトなやりとりを用いた送金プロトコルを描いている。

 実際のところ、このシステムは、リップルが使用するシステムやプロセスと非常によく似ている。つまり基本的には、コストの高い仲介業者を排除し、取引にかかる時間を短縮し、送金範囲をグローバルに拡大するため、分散型台帳技術に基づいた勘定調整プロトコルと銀行間のメッセージングを記述しているのだ。

 JPモルガンが、特許に記載したようなシステムを開発しようとするならば、そのシステムのコア部分に仮想通貨を実装するという選択を迫られるかもしれない。まさに、自分たちがこれまで貶してきた仮想通貨をだ。究極の問題は、このシステムが一方ではブロックチェーンの強力な味方となる可能性があるが、他方では仮想通貨の妥当性と合法性に強く反対するものになるかどうかだ。

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