◆「コインベース IPO」スクープに対して仮想通貨業界の反応は限定的だ
◆スクープしたニューナー氏は「詐欺師」という声が出ている
◆不透明な規制環境を嫌気したという見方も出ている

米国最大の仮想通貨取引所コインベース がIPO(新規株式公開)をするというCNBCのスクープに対して、仮想通貨業界の反応は限定的だった。本来ならバズっても良さそうなニュースだが、冷ややかな反応の背景には何があるのだろうか?

「コインベースのIPO詳細をすっぱ抜き」

昨日、CNBCアフリカの仮想通貨番組「クリプトトレーダー」でMCを務めるラン・ニューナー氏が、コインベースのIPO(新規公開株式)詳細について明日番組で発表するとツイートした。同氏によると、「CNBCのクリプトトレーダーが独占でコインベースの明日IPOの詳細をすっぱ抜いた」という。

また同氏は、コインベースの財務状況の一部も明かした。今年第3四半期(7-9月期)の売上高は9000万ドル(約100億円)。仮想通貨相場が最高値を更新した2017年の第4四半期(10-12月期)の売上高は4億5000万ドル(約500億円)だったという。

ニューナー氏は信用できない?

ニューナー氏は、ベンチャーキャピタルOnChain CapitalのCEOも務める。ツイッターのフォロワー数は、89万人以上。しかし「コインベース IPO」のツイートは、執筆時点でいいね数が160、リツート数は51にとどまっており、「バズった」とは言えない数字だ。この現状について仮想通貨業界関係者からは次のようなコメントが出ている。

「このツイートが35リツイートしかされてないという事実は、人々が @cryptomanran詐欺師だということに気づき始めていることを示している。もし彼が信用されてたならば、コインベース の財務情報とIPOするという意図をリークしたら、バズっていたはずだろう。いつも悪い投資アドバイスばかりしていたら、こうなるんだぜ

このようにニューナー氏に懐疑的なコメントを残したのは、仮想通貨メディアThe Blockのアナリスト、ラリー・サーマック氏だ。同氏は仮想通貨業界に「合理性を」もたらすと主張している。何が「悪い投資アドバイス」だったかについては言及していない。

The Blockは、最近勢いのある仮想通貨メディアだ。最近では、仮想通貨プラットフォームであるバックトが現物受け渡しのビットコイン先物取引を12月12日に開始することを、バックトが発表する前に関係者の話として報道。また、「ゴールドマンサックスがバックトで仮想通貨カストディサービス立ち上げるという報道は」フェイクニュースだと指摘していた

さらにブリーカーが、調査した22の仮想通貨メディアのうち半数以上の12社が「金銭を受け取って記事を書く」と回答したことに対してもThe Blockは反応。The Blockの編集マニフェストと題した記事の中で「我々が買われることはない」と主張し、ジャーナルズム精神を強調した。

一方、ニューナー氏は、過去に大胆な分析を数多く披露。

8月にコインベースの取締役を務めるデビッド・マーカス氏が、フェイスブックでブロックチェーン事業に注力するためコインベースを離れることが明らかになった際、「フェイスブックが取引所の立ち上げを計画しているのでは」などと予想してた。また、米国証券取引委員会(SEC)が、ビットコインETFを申請するVanEck社とSolidX社、シカゴオプション取引所(CBOE)との会合における覚書を公表した際には、ビットコインETFが来年の第1四半期に承認されだろうと断定的に述べた

不透明な規制環境

イーサリアム ・ワールド・ニュースによると、仮想通貨業界を取り巻く規制環境には不透明感が漂っており、とりわけ米国内でIPOをするという計画は、規制当局によって簡単に潰される可能性があるという。仮想通貨業界は、不透明な規制環境を見越して「コインベースIPO」についても、正式に決まるまで冷静な対応をするということだろうか。

冷めた相場

コインテレグラフ日本版で既報の通り、大手企業が仮想通貨市場に参入するというニュースに対して相場の反応は鈍い。例えば、16日に米大手投資会社フィデリティ(Fidelity)が機関投資家向けに仮想通貨取引サービスを開始すると報じられたが、仮想通貨相場の反応は限定的だった。ウォール街の大手金融機関が仮想通貨のカストディ(資産管理)サービスをすることで機関投資家に安心感を与えるというのは、大きなニュースのはずだった。仮想通貨投資会社ギャラクシー・デジタルのマイク・ノボクラッツ氏の言葉を借りれば、「仮想通貨相場は弱気だが、インフラや労働市場は強気」な状態が今も続いている。

「今日この後 放送」

ニューナー氏は本日もツイッターを更新。昨日の予告通りCNBCアフリカのクリプトトレーダーで「独占:コインベース がIPOを準備。彼らの数字を分析する」を放送する予定だ。今回のコインベースIPOのニュースはどのくらい信憑性があるのか、実現されるとしたらいつ頃なのか。本日の放送は注目だ。