交換所ビットポイントが攻勢、積極的海外展開の理由

 仮想通貨交換業者登録済みの仮想通貨交換所ビットポイント(BITPoint)が海外展開を加速させている。先月17日には、マレーシアで仮想通貨交換所を開始した。海外ではこのほか、香港、韓国、中国、台湾に進出している。今月はシンガポール、8〜9月にはタイで交換所の開設を予定している。実現すれば、海外拠点は計7カ所となる。日本の仮想通貨交換所で最も海外展開に積極的と言えるが、狙いは何か。また、日本国内ではどのように事業を進めて行くのか。同交換所を運営するビットポイントジャパンの小田玄紀代表取締役社長に話を聞いた。

海外展開が苦手な日本企業に先んじる

 小田社長によると、仮想通貨関連事業の売上高のうち、海外拠点による貢献は、現時点では1%に過ぎない。日本の交換所が売上全体の99%を占めている。日本の市場がここまで大きい中で、海外展開を促進する理由は何か。小田社長は以下のように説明した。

「ビットポイントを始めた際に、これからいろんな企業が日本国内で仮想通貨交換業を展開してくると考えておりまして、そうなると、日本での競争が厳しくなると思ったんですね。始めの段階から、いろんな国で展開していくことは、ビットポイントの総合的な価値をあげるという意味では重要だと思っているというのが、一番大きな理由です」

「もう1点目は、仮想通貨はどういった時に一番使われる価値があるのかを考えた際に、日本国内だけで使うことを考えると、そこまで高い価値は発揮しえないのではないかと思っています。海外に行った際に、日本円から他の通貨に換えるのは大きなコストがかかります。そのまま持っているビットコインが海外で使えたら、これは大きな価値だと思います。日本に来る外国人は(年間)2869万人、日本からは数千万人、そういった人達が他の国へ行った時に、そのまま仮想通貨で買い物ができることは、一定の価値になると思っていて、それを事業としてやっていきたかった」

 ビットポイントが海外進出する時は、基本的には現地企業との合弁の形をとる。最大出資比率は40%。欧米に完全子会社を設立した国内大手交換業者とは対照的だ。現地の証券・金融に関する法律への理解が深い企業と組み、不透明な仮想通貨規制にも対応できるよう備えている。自分達だけで展開することは一切しないという。「その国のことは、その国の人メインでやってもらってます。その国の方のほうが現地のルールをよく分かっていると思うので、我々はあくまでも支援するというスタンス(小田社長)」。ビットポイントは、主に交換所のシステムを提供し、現地の交換所運営を支援している。同じシステムを使う交換所間では、互いに接続して流動性を保てる利点があるという。

 タイに拠点を構えた後は、カンボジア、ミャンマーにも進出する計画だというが、開発途上国の交換所需要はどうなのだろうか。小田社長によれば、これらの国では、例えば香港やシンガポールへの出稼ぎ労働者が、自国に戻った時に仮想通貨を売って法定通貨を得るという動きがあり、売り需要が高い。売り需要と買い需要の高さは、国によってそれぞれ違う。「買い需要が高い時に売り需要を持って来るというのが重要」で、同じシステムを使う取引所の需要のバランスを取っておけば、ある交換所で発生した予期しない価格の乱高下に比較的対処できるそうだ。

 小田社長は、昨年にビットコインが200万円前後で推移していた際に、ある交換所で一瞬だけ260万円くらいまで急騰した後、売り玉がロスカットされ価格が急落した例を上げる。これは流動性がそれほど多くなく買い気配がわずかに強い状態で、誰かが何十ビットコインを成り行き注文したために発生したと解説。自分の交換所の中だけで完結しないことにより、このような出来事に対処できると説明した。

規制の厳格化−日本パッシングから再び中心へ

 海外で日本の仮想通貨状況について講演したり、海外を視察したりする中で、小田社長は今年1月末のNEM流失騒動後、世界で日本パッシングが起きつつあるのを体感したと話す。17年4月に改正資金決済法(仮想通貨法)が施行され、先駆的な法律を導入した日本は、韓国が同様の法律導入について検討を行うなど、世界から仮想通貨の中心的存在になると注目されていた。しかし、NEM流失騒動以降は、仮想通貨交換業者やみなし仮想通貨交換業者に対する一連の行政処分や、ICOへの不信感などの影響で、日本は仮想通貨の中心地としての求心力を失いつつあるのを感じていると話した。

 しかし、小田社長は今後の日本の仮想通貨状況について悲観的なわけではない。あくまでも個人的見解であるが、夏頃には金融庁研究会の一定の結果が出ると予想され、「マーケットの状況を考えても、新たに仮想通貨交換業者の登録が始まるのではないか」と考える。「NEM流失騒動後というところで言うと、秋口には第1弾として新しい通貨を扱っていくとか、そういう動きになっていくのではないかと思っています」と述べ、曖昧だった規制が明確化されれば、一定の管理体制の下では、ICOを含め許可される部分が増えていくとの見方を示した。そして、政府の方針がそうであるように、日本は再び仮想通貨の中心になると主張した。

 小田社長は、規制は強化すべきだが、改正資金決済法に関しては、検討の余地があると考えている。同法律は仮想通貨を認める法律ではあるものの、実際に中身は仮想通貨投資法であり、「投資投機と、日常的に使うための仮想通貨と、明確に二つを分けて考えても良いのではないか」と意見を述べた。現在そのような法律を運用している国はなく、「世界全体でいうと、あくまで仮想通貨は投資・投機商品という風に区分されてしまっているので、当面は、投資・投機商品の方向になってしまうと思う」との見通しを語った。

 また、「ブロックチェーン全体を考えた場合に、分散型交換所をやって行こうと思っている企業もいて、分散型交換所というのは考えとしては正しいと思っているんですが、当面、各国政府は認めていかないだろうと思う」と続けた。規制の強化でテクノロジーの発展が阻害されると懸念する声がある中で、こうした議論はいつ進展するかという問いに対しては、「まずは仮想通貨交換所が一定の管理体制で、1年くらい運用していくと、やっぱり仮想通貨は便利だよねとなり、初めて議論が進んでいくと思う」とし、マウントゴックスやNEM流失騒動について言及した上で、交換業者は顧客の資産を預かっている立場にあり、ネットベンチャーの感覚で事業をするべきではないと強調した。

今年度中に日本でトップクラスの交換所へ

 粛々と海外展開を進めてはいるが、国内の交換所を考えた時には、大手交換所から水を開けられた感は否めない。ビットポイントジャパンの18年3月期(17年4月1日〜18年3月31日)の営業利益は37億円と前期のほぼゼロから躍進したが、同時期のコインチェックは537億円だった。最大手のビットフライヤーは顧客数を200万人超と公称している。この差はどのように詰めていくのか。

 「今期は交換所に力を入れ、ビットフライヤーやコインチェックの規模感まで持っていこうと思います(小田社長)」。年間数十億円規模を投じ、テレビCMを含む宣伝を展開するほか、サーバーやデーターベース、コールセンターを含めた管理態勢の強化を行う。顧客満足度の向上に務め、現在の国内大手規模まで展開することを計画している。

 日本国内の交換所の競争はすでに激しい。SBIやマネーフォーワードなども参入してくる。しかし、小田社長は焦りを見せない。

「正直、これから展開してくる交換所は、あまり上手く行くと思っていない。証券やFXの考えでやると絶対に上手く行かない」

「例えばFXのマーケットでいうと、共通のインターバンクマーケットがあって、このインターバンクマーケットに対して取引をぶつけて収益を得るモデルなので、スプレッドという概念が働くんですけれど、仮想通貨ではうまくいかない」

 交換所を始めてから2年が経過し、その間にマーケットの派手な盛り上がりも経験した。この経験値の差は相当大きいと考える。また、これから参入してくる複数社に対し、ビットポイントのシステムを提供する方向で話しが進んでいるため、より安定した取引サービスの運営が加速することが見込める。中長期的には仮想通貨による店舗決済に力を入れていくと話すビットポイントの今後の展開に注目したい。

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