Avalancheとは

Avalanche(アバランチ)は、分散型金融(DeFi)のプラットフォームを目指すパブリックブロックチェーンだ。独自の仮想通貨「AVAX」を導入し、イーサリアムにおける「Ether」と同様に、アバランチを使用する際の手数料やステーキングの報酬として活用されている。

AVAXを使ったパブリックセールでは、4200万ドルを調達し話題となった。AVAXはアバランチを使用する際の支払い手段として用いられるが、使用後にはバーン(焼却)される仕組みとなっている。これは、1枚あたりのAVAXの価値を長期的に上昇させるためだ。

つまり、アバランチが使用されるほどAVAXの価値は高まる仕組みとなっており、エコシステムの拡大を促進する仕掛けが施されているのである。

アバランチの開発を主導するのは、ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するAva Labsだ。Ava Labsは、ビットコインを発明したサトシ・ナカモトの影響を受け発足した組織であり、Team Rocketという匿名グループに端を発する。

Team Rocketの名称は、日本の人気アニメ「ポケモン」の主人公サトシのライバルであるロケット団に由来するという。決してビットコインに対立しようとする組織ではなく、ビットコインを超えるブロックチェーンを生み出そうという気概の元に発足している。


Avalancheの処理能力はVisa決済システム並み

ビットコインやイーサリアムをはじめ、多くのブロックチェーンはスケーラビリティ問題を抱えている。分散型台帳の特性から、1秒あたりに処理できるトランザクションの数に限りがあり、即時処理ができない状況に陥っているのだ。

その結果、即時処理を行うために取引手数料を高く設定せざるを得ず、日々手数料の高騰が起きてしまっている。2021年4月時点で、ビットコインは秒間7トランザクション、イーサリアムは15トランザクションしか処理することができていない。

クレジットカード大手Visaの決済システムでは、秒間4000〜6000トランザクションを処理することができると言われており、ビットコインやイーサリアムと比べて文字通り桁違いの性能を誇る。

このスケーラビリティ問題を解決すべく誕生したのがアバランチだ。アバランチは、既に秒間4500トランザクションを処理することに成功しており、他のブロックチェーンとは段違いのスケーリング性能を実現している。

アバランチがスケーラビリティ問題の解決に取り組む理由は、イーサリアムやその他のブロックチェーンがDeFiに適した状態にないためだ。Visaのような既存金融の場合、全世界の人々の需要に応えなければならず、安定したリアルタイム決済の環境を整備しなければならない。

現状のDeFiは秒間15トランザクションしか処理できないイーサリアムに依存しており、DeFiが既存金融と同程度の市場規模に成長したとしても、とても全世界の人々の需要に応えることはできないだろう。DeFiで数百円を送金するのに数千円の手数料がかかったり、数時間の待機時間が発生したりしているのだ。

スケーラビリティ問題を解決するために誕生したブロックチェーンは、他にもいくつか存在する。例えば、近年人気を集めるバイナンス・スマート・チェーン(BSC)があげられるだろう。

バイナンス・スマート・チェーンは、大手仮想通貨取引所バイナンスが開発したDeFiのためのブロックチェーンプラットフォームだ。高いスケーリング性能と安価な取引手数料を実現している。

一方で、バイナンスによるネットワークの集権的な運営が行われているのも事実だ。BSCでは、高いスケーリング性能を実現する代わりにネットワークの分散性を犠牲にしている。

要するに、ネットワークの大部分をBSCが管理することで即時取引を実現しているのだ。アバランチの優位性は、高いスケーリング性能を実現しつつ、パブリックブロックチェーンとしての分散性にも長けている点にある。

avalancheの特徴

Avalancheの仕組み

ビットコインやイーサリアムは、ネットワークを構成するノードが基本的に全て同じデータを保有している。

1万を超えるノードが同一のデータを保有しているため、仮に数十〜数百のノードが不正を行なったり外部から攻撃を受けてダウンした場合でも、その他の数千のノードが稼働していることでネットワークの安全性を維持することが可能だ。こうすることでビットコインやイーサリアムは耐改ざん性を実現している。

しかしながら、全てのノードが同一のデータを保有しているばかりにスケーリング性能を高めることができていない。トランザクションに不正がないかどうかを確かめるためには、1万を超える全てのノードにデータが行き渡るのを待たなければならないからだ。

これが、スケーラビリティ問題の根本的な原因である。これに対してアバランチは、全てのノードが同一のデータを保有せずに済む仕組みを開発した。この仕組みは「アバランチコンセンサス」と呼ばれている。

ビットコインやイーサリアムでは、全てのトランザクションに対して全てのノードが承認作業を行わなければならない。そのため、全てのノードが同一のデータを保有することになっているわけだが、アバランチではノードが承認するトランザクションを一部に限定する仕組みを採用している。要するにこれは効率化の考え方だ。

ビットコインやイーサリアムが、全てのトランザクションに対して全てのノードで承認作業を行なっているのは、より確実な承認作業を行うためである。

しかしながら、1万を超えるノードが承認作業を行わずとも、例えば1000個のノードが承認作業をすれば十分ではないか、という発想からアバランチコンセンサスは誕生している。

こうすることで、同時に複数のトランザクションを承認(並列処理)することができるようになり、1秒あたりに処理できるトランザクションの数が飛躍的に上昇したのだ。

DeFiを含むあらゆる金融業界では、全世界で1秒あたりに数え切れないほどのトランザクションが発生している。既存のブロックチェーンではこの需要に応えることができないため、アバランチは並列処理を実現することでDeFiの普及をサポートしているのだ。

avalancheの仕組み トランザクションの承認は並列処理する


Avalancheのユースケース

アバランチはイーサリアムとの互換性がある。

スケーラビリティ問題と並ぶブロックチェーンの大きな課題の1つに、インターオペラビリティ問題があげられる。これは、異なるブロックチェーン同士に互換性がないという問題だ。例えば、ビットコインをそのままイーサリアム上で取り扱うことはできない。

そのため、基本的にビットコインとイーサリアムのエコシステムは完全に隔離された状態になっており、これまで両者が交わることはなかった。昨今は、ビットコインを担保にイーサリアム上でERC-20トークンを発行するWBTCなどが登場しており、擬似的に両者のエコシステムが交わるようになったものの、仲介機関を挟まなければならない状況となっている。

アバランチは、設計当初からイーサリアムとの互換性を実現するよう開発されており、イーサリアム上に開発されたアプリケーションは全てアバランチ上でも動かすことができるようになっている。

これは、各種DeFiサービスが基本的にはイーサリアム上に開発されていることに起因し、イーサリアムとの互換性を備えることでDeFi市場をさらに拡大させようとしているのだ。

これにより、例えば即時処理が求められる場面ではアバランチを使用し、そうではない場合はイーサリアムを使用するといったことができるようになった。ここからは、そんなアバランチの活用事例についてみていく。


DeFiの各サービスがアバランチに対応

イーサリアムとの互換性を実現したことで、既にイーサリアム上で稼働していたDeFiサービスがアバランチに対応し始めている。

まずあげられるのは、分散型オラクルプラットフォームのチェーンリンク(Chainlink、LINK)だ。チェーンリンクは、ブロックチェーンに対して外部から情報提供する役割を担う「オラクル」の代表例である。

例えば、分散型取引所(DEX)で仮想通貨を取引する場合、対象となる仮想通貨の価格情報は外部の集権型取引所(CEX)などから取得しなければならない。

このとき仲介役となるのがオラクルであり、ブロックチェーン内の各サービスに対して外部の情報を提供する役割を担っている。この代表例がチェーンリンクであり、アバランチへの対応を行うことでアバランチをDeFiプラットフォームへと押し上げる基盤を支えているのだ。

他にも、DEX最大手のユニスワップを模倣する形でローンチされたスシスワップが、アバランチへの対応を既に完了させている。

スシスワップはイーサリアムにも対応しており、同時期におけるイーサリアムとアバランチの手数料を比較すると、イーサリアムが最大20ドルであるのに対し、アバランチは最大0.7ドルとなっていた。

スシスワップのようなDEXの場合、1秒間に無数のトランザクションが発生するため、それらを処理するための高いスケーリング性能がブロックチェーンには求められている。


NFTの発行および取引サービスがアバランチ上に展開

アバランチは、NFT(Non-Fungible Token)のエコシステムも拡大させつつある。NFTは、ブロックチェーン上に発行されるトークンの一種で、デジタルアセットに一意性を持たせることができる仕組みだ。

アート作品や音楽、ゲームなどの場面で活用され、特にアート作品に紐づけられたNFTは高額で売買されているため、大きな注目を集めている。

アバランチ上では、Polyient GamesがNFTのマーケットプレイスをローンチした。このマーケットプレイスでは、NFTオークションやP2P取引、独自NFTの発行などが可能となる。

NFTはゲームで活用されることが多くなっているが、イーサリアムの手数料高騰の影響を強く受けてしまう。ゲームキャラクターやアイテムを売買する度に高い手数料が生じてしまうため、イーサリアムの需要が高まるにつれてゲームユーザーは減少してしまう傾向にあるのだ。

スケーリング性能の高いアバランチを使用することで、売買手数料は安価に抑えることができる。DeFiに限らずNFT市場でもアバランチは徐々に存在感を高めつつあるのだ。

アバランチは、NFTに関する独自の取り組みとして、誰もが簡単にNFTを発行できるNFT Studioを提供している。プログラミングの知識がなくてもアバランチ上にNFTを発行することができ、それをそのままNFTマーケットプレイスで販売することができるようになっている。


Avalancheの現状と今後

アバランチは、分散性を維持したまま高いスケーリング性能を実現したパブリックブロックチェーンだ。イーサリアムとの互換性を持つ点が特徴であり、イーサリアム上に開発されていたサービスが次々とアバランチへの対応を発表している。

DeFiのプラットフォームになるべく誕生したものの、近年はNFTへの展開にも注力しており、これらの市場が成長するにつれてアバランチのエコシステムも拡大していくことが予想される。

現在はアバランチ上でDEXとレンディングサービスを開発することを優先事項としてあげており、そのためのグラント(助成金)も幅広く提供している。また、開発者以外を対象にアンバサダープログラムも用意しており、活動に応じてAVAXを受け取ることも可能だ。

アバランチは、2020年9月にメインネットにローンチしたばかりであるにも関わらず、既に秒間4500トランザクションを処理することに成功している。今後は更なるスケーリング性能の拡大と利便性の向上を掲げ、より優れたDeFiプラットフォームになるかもしれない。

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