損害保険は、交通事故や火災などのリスクで生じた損害を補償する保険だ。これらのリスクは、どれだけ気をつけて生活をしていても、完全に発生を防げるものではないため、自身が抱えるリスクに応じた損害保険に加入することが大切だ。

本記事では、損害保険の補償内容や種類、選び方などをわかりやすく解説する。

損害保険とは

損害保険とは、日常生活における偶然のリスクによって生じた損害を補償する保険だ。日常生活におけるリスクには、交通事故や火災、地震、ケガなどがある。また自動車や自転車を運転中に事故を起こしてしまって、他人にケガを負わせたり他人のモノを壊してしまったりして損害賠償を負うのも代表的なリスクだ。

リスクが生じると治療費や修理費、賠償金などの支払いが多額になる恐れがある。とくに他人の身体やモノに危害を加えてしまうと、賠償額が数千万〜数億円にのぼることもある。損害保険に加入することで、貯蓄では対処が難しいリスクに備えられるのだ。

損害保険の補償は、大きく以下の3種類にわかれている。

  • モノに対する補償:モノが壊れたり盗まれたりした場合の補償
  • ヒトに対する補償:ケガによる入院や手術、後遺障害、死亡を補償
  • 損害賠償に対する補償:法律上の損害賠償を負った際の補償

損害保険は、上記の補償の組み合わせで補償が構成される。たとえば代表的な損害保険である火災保険は、基本的に「モノに対する補償」を中心に構成されており、補償の対象となっている建物やその中にある家具・家電などが損害を被った場合に保険金が支払われる。 

また損害保険は、第2分野の保険であり、原則として損害保険会社しか取り扱えない。第1〜第3分野の保険の種類(一例)は、以下のとおりだ。

民間保険の種類
損害保険会社は、火災保険や自動車保険などの損害保険だけでなく、医療保険やがん保険なども取り扱える。一方、子会社として医療保険やがん保険、生命保険などを取り扱う生命保険会社を設立する損害保険会社も少なくない。

損害保険の保険金の支払い方式

損害保険の保険金は、原則として「実損払い」である。実損払いとは、加入時に定めた保険金額を上限に、実際の損害額が支払われる方式だ。たとえば保険金額が2000万円で損害額が1500万円であった場合、支払われる保険金は1500万円となる。

また損害保険会社で加入できる医療保険やがん保険も、基本的には実損払い方式であり、実際に自己負担した治療費と同額の保険金が支払われるものが多い。

これに対して、生命保険会社で加入できる生命保険や医療保険などは、基本的に「実額払い方式」であり、契約時に決めた定額の保険金や給付金が支払われる。

損害保険の種類

損害保険には、さまざまな種類がある。ここでは、個人が加入する損害保険のうち、代表的なものを解説する。

自動車の保険

自動車の保険には自賠責保険と任意保険がある

自動車の保険には、強制加入の「自賠責保険」と、加入の判断が個人に任されている「任意の自動車保険(任意保険)」の2種類にわかれている。

自賠責保険は、人身事故の被害者を救済するため、自動車を運転する人に加入が義務付けられている保険だ。交通事故の相手がケガや後遺障害を負ったり、死亡したりしたときに、保険金が支払われる。

これに対して任意保険は、自賠責保険ではカバーしきれない損害を補償する自動車保険だ。たとえば任意保険に「対人賠償保険」を付帯すると、事故の相手を死傷させた結果、損害額が自賠責保険の上限を超えてしまった場合に保険金が支払われる。また「対物賠償保険」を付帯すると、他人のモノを壊したことで負った損害賠償もカバーできる。

ほかにも任意保険は、車を運転していた本人や同乗していた人が事故で死傷したときの補償や、車が負った損害の補償などを付帯することが可能だ。

住まいの保険

住まいの保険には、大きく分けて「火災保険」と「地震保険」がある。

火災保険に加入すると、建物や家財(家具・家電など)が、火災や落雷、破裂などで損害を負ったときに保険金が支払われる。火災だけでなく「台風・突風などによる風災」「洪水や土砂崩れなどの水災」「盗難・汚損」などで負った損害も補償の対象である。火災保険に加入するときは、補償が適用される災害の範囲や、保険金額などを決めて加入する。

地震保険は、地震や津波などで生じた損害を補償する保険だ。地震や津波などによる損害は、火災保険の補償対象外であるため地震保険に加入しなければ備えられない。

なお地震保険は、損害保険会社と政府が共同で運営している公共性の高い保険であり、加入する保険会社によって支払う保険料や、選択できる補償に違いはない。

個人賠償責任保険

個人賠償責任保険は、他人にケガをさせたり他人のモノを壊したりした場合の補償だ。補償額は1億〜3億円ほどが一般的だが、無制限の商品もある。

個人賠償責任保険は単独の保険ではなく、火災保険や自動車保険、傷害保険などとセットで加入できる。

また、主に自転車に起因するケガの補償がセットされた損害保険は「自転車保険」と呼ばれる。

2021年10月現在、自転車を運転する人に自転車保険または個人賠償責任保険への加入を義務付ける自治体は少なくない。自転車事故を起こした場合、事故相手に対して数千万円の損害賠償義務が生じることがあるためだ。

個人賠償責任保険
旅行保険(国内旅行保険、海外旅行保険)

旅行保険とは、旅行中に負ったケガや、他人に危害を加えたことによる損害賠償などに備えられる保険だ。手荷物が盗まれたり壊れたりした場合の修理費用をカバーできる「携行品損害保険」を付帯できるものもある。国内旅行保険は、日本国内を旅行中に負った損害を補償するのに対し、海外旅行保険は、海外旅行中に負った損害を補償する。 

ゴルファー保険

ゴルファー保険とは、ゴルフをプレイ中に負ったケガや、他人をケガさせた場合の賠償金、ゴルフクラブの破損などを補償する保険である。またゴルファー保険は、ホールインワンやアルバトロスを達成した 際の記念品の費用や祝賀会の開催費用、キャディーへの祝儀なども補償されるのが一般的である。

ゴルフ保険のイメージ

ペット保険

犬や猫などの動物は、人間とは異なり健康保険が適用されず、治療や手術、入院にかかる費用は全額自己負担となる。ペット保険に加入していると、買っている犬や猫などが医療機関を受診したときの医療費をカバーできる。

また商品によっては、ペットが他人に噛み付くなどして危害を加えた場合の損害賠償や、ペットが亡くなった際の葬儀費用なども補償される。

弁護士費用保険

弁護士費用保険とは、弁護士に対して支払う相談料や着手金、成功報酬などの費用を補償する保険だ。商品によっては、相談する弁護士を紹介してもらえる場合や、電話で弁護士に無料相談できる場合がある。

損害保険の選び方

損害保険を選ぶ際は、備えが必要なリスクを考えたうえで、補償範囲の特約を適切に設定することが大切だ。

備えが必要なリスクに応じた損害保険を選ぶ

損害保険を選ぶ際は、損害が発生したときに貯蓄だけではカバーできないリスクを考えることが大切だ。たとえば自動車を運転する人は、交通事故を起こすリスクを追うことになる。強制加入である自賠責保険だけでは、事故の相手に対する賠償金を支払いきれない可能性があるため任意保険に加入する必要がある。

海外旅行をする人は、海外旅行保険への加入が必須といっても過言ではない。海外は、日本のように公的な保険制度が整っているとは限らず、ケガを負って現地の医療機関で入院や手術をした場合、数十万〜数百万円の医療費を請求されるケースが珍しくないためだ。

通勤やレジャーなどで自転車に乗る人は、自転車での事故によってケガを負わせてしまうと、高額な損害賠償を請求されかねない。そのため自転車保険や個人賠償責任保険へ加入して備える必要がある。

補償を適切に設定する

損害保険は、補償が適用される範囲を広げると保険料は高くなる。ムダな保険料の支払いを防ぐためには、損害保険に加入するときに補償を適切に設定することが大切だ。

火災保険に加入するケースで考えてみよう。火災保険は、加入するときに火災や風災、水災など補償が適用される災害の範囲を決める。自治体が公表するハザードマップを確認した結果、自宅に洪水や土砂崩れなどのリスクがなければ、水災補償は付帯しなくて良いと考えられる。

任意の自動車保険の場合、車の損害を補償する「車両保険」を付帯すべきか迷う人は少なくない。ローンを組んでマイカーを購入したのであれば、車両保険の必要性は高いといえる。車両保険を付帯していないと、事故を起こして車が大破した場合、ローンの返済義務だけが残ってしまう恐れがあるためだ。

一方でマイカーが安価であり車が損害を負っても貯蓄で再購入できる場合や、そもそも車が生活に必須でない場合は、車両保険の必要性は低いと考えられる。

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