ツイッターのジャック・ドーシーCEOが9日、「ミャンマーは美しい」などとツイッターで発言したことに対して批判の声が相次いでいる。フェイスブックやツイッターなどSNSのヘイトスピーチ対策が不十分なことから、ミャンマーのロヒンギャ危機を悪化させたという見方がある中、ドーシー氏の発言は当事者意識がないとして多くの人の怒りを買った。

「ミャンマーは間違いなく美しい国だ。人々は喜びに満ちた人生を送っており、食べ物も素晴らしい。私はヤンゴン、マンダレイ、バガンを訪れたことがある。国中にある修道院で瞑想もした」

ドーシー氏は、ミャンマーの景観や住居の写真や動画が詳細に投稿。修道士にサンダルや傘、食料などを寄付したことのほか、蚊に117箇所も刺されたことが書かれている。

この投稿に対してツイッター利用者から批判が殺到。「無知」で「無感覚」であるという声のほか、「横たわる死体を無視しながら休暇中に写真を撮るのは金持ちだけに任せよう」という痛烈な皮肉も出ている。ドーシー氏に非難の声が殺到していることに関して、BBCビジネスインサイダーなども報じた。

こうした批判の声にあるのは、フェイスブックやツイッター上でのヘイトスピーチがミャンマーのロヒンギャ危機を悪化させたという指摘だ。

8月のロイター通信による調査報道によると、国連の調査担当者がフェイスブックがイスラム教少数派のロヒンギャに対する暴力を先導したと発言。「人間でないイスラム教徒の犬たち」などとフェイスブックで投稿されたことを指摘した。

また同調査担当者は、ツイッターでも「ミャンマーのロヒンギャは不法移民でテロリスト」という投稿があったことに言及。ロヒンギャ70万人の避難民を出すきっかけとなったロヒンギャ族とミャンマー軍の衝突を受けて投稿されたもので、ヘイトスピーチとみなした。

こうしたレポートを受けて、フェイスブックはビルマ語を話すスタッフの数を増やしてヘイトスピーチ対策に乗り出したほか、ツイッターも「人種や民族、国籍」などに基づいた攻撃を禁じるポリシーを発表した

ただ問題解決からははるかに遠いのが現状。それにもかかわらず9日のドーシー氏のツイートは、ミャンマーを手放しで褒め称えたと捉えられたようだ。

ヘイトスピーチと仮想通貨

フェイスブックやツイッターなどの中央集権的なSNSによる手動でのヘイトスピーチ対策に限界があると指摘する声は根強い。そんな中、ヘイトスピーチやフェイクニュース対策で代替案を提示する仮想通貨・ブロックチェーン関連のメディアが出現している。

例えば、英国のAnanas(アナナス)。コミュニティーが掲げるイデオロギーを探る羅針盤の機能を果たし、ユーザーはその内容作りに貢献したり、単にフォローしたりできる。とりわけ、助けが必要なグループの個人同士のでの対話を促し、お互いが共感するイデオロギー作り上げる狙いがあるという。コンテンツ作りで貢献したユーザーには、独自のトークンである「アナコイン」が付与される。アナナスは、まずはイスラム過激派とイスラム教への憎悪に対する対策になると考えているという。

 

ツイッターとブロックチェーン

ツイッターが苦戦しているのは、ヘイトスピーチ対策だけではない。今年8月、ツイッター上で「詐欺ボット」や「なりすまし」などが大量に発生したとして、多くのビットコイン支持者がマストドン(Mastodon)と呼ばれる中央管理者のいないソーシャルメディアを使い始めていると報じられた。マストドンは、ツイッターと類似しているが、「インスタンス」と呼ばれるサーバーが複数存在しており、インスタンス内でコンテンツに関して独自のルールが決められている。

こうした中、9月にツイッターのドーシーCEOが、米議会下院の公聴会に出席し、ツイッターでブロックチェーン技術を使う方法を模索していると発言。ブロックチェーンについて「ツイッター上で直面する問題解決にこの技術がどの程度活用できるのか十分に理解していないが、社内で検討はしている」と述べた。