利回りを生むトークン化された米国債がレバレッジ取引の担保として利用される事例が増加しており、分散型金融（DeFi）を含む市場全体にリスクが波及する可能性が高まっている。
トークン化とは、実世界の資産をブロックチェーン上のデジタルトークンに変換するプロセスを指す。米国債の場合、こうしたトークンはオンチェーン上の債権を表し、マネー・マーケット・ファンド（MMF）の代替手段として機能する。現在、トークン化された米国債の時価総額は約74億ドルに達している。
格付け機関ムーディーズが6月に発表したレポートによれば、短期流動性ファンドは低リスクではあるものの、無リスクではないとされている。
「MMFやその他の短期ファンドに共通する信用リスク、金利リスク、流動性リスクに加え、トークン化された短期ファンドには新技術に起因する追加リスクがある」とムーディーズは指摘している。
その一例が、担保価値に基づいて強制清算が発生するレバレッジ取引だ。担保の価値が一定のしきい値を下回ると、ポジションは自動的に清算されるか、追加担保を求める警告が出される。
2025年6月には、仮想通貨取引所のデリビットとクリプト・ドットコムがこのトレンドにいち早く対応し、トークン化された米国債ファンドをレバレッジ取引の担保として使用できるようにした。両社が採用したのはブラックロックの「BUIDLファンド」で、これはセキュリタイズを通じて発行されたトークン化マネー・マーケット・ファンドである。RWA.XYZのデータによれば、このファンドには現在約29億ドルの総ロック価値がある。
米財務省は最近、トークン化の普及が資産価格の変動性を伝播させ、やがて広範な金融市場へと波及し得ると財務諮問委員会へのプレゼンテーションで警鐘を鳴らした。
「市場がストレスにさらされた際、シームレスな台帳はかえって負の側面を持ち、レバレッジ解消や投げ売りが資産全体に急速に広がる可能性がある」と警告している。
トークン化された米国債はこのほかにも、各国による脱ドル化、米国の財政政策、流動性問題、金利政策、地政学的リスクといった複数のリスク要因にさらされている。
仮想通貨サービスプラットフォームZumoの創業者ニック・ジョーンズ氏は、構造的ショックに備えた警戒が必要だと語る。
「伝統金融と分散型金融が収束する中、堅牢なリスク管理と規制強化、そして透明性の確保がリスク抑制の鍵になる」とジョーンズ氏はコインテレグラフに語った。
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トークン化担保の次のステップとは
トークン化された米国債は、機関投資家がオンチェーン金融の世界に参入する主要な入り口となっているが、米国の財政安定性や地政学リスクへの懸念が高まるなか、より広範な実物資産のトークン化への関心が強まっている。
米国債利回りは、トランプ大統領による大規模な貿易関税の発表を受けて急騰。債券市場は政府の信用力に不安を示し、米国債を売却する動きが強まった。
「最終的に国債利回りは、政府が債務を返済できるかどうかの能力を反映する。信用力が低下すれば、利回りは上昇する」と経済学者のサイフェディーン・アモウス氏は4月23日のX投稿で述べている。
インフレや地政学的緊張、米国の信用力低下に対する懸念を背景に、金や不動産、エネルギー連動商品など、より安定した実物資産のトークン化への需要が高まっている。
RWAレンディングプラットフォームRAACの創業者ケビン・ラッシャー氏はコインテレグラフへのコメントで次のように語った。
「トークン化された米国債は機関投資家にとって低リスクで利回りを得られる手段ではあるが、それだけでは十分とは言えない」
ラッシャー氏は、次のステージは金や不動産といったハードアセットのトークン化になるとし、不動産はキャッシュフローを生む投資対象である点を強調した。
また、トークン化された金も、貸し出すことで利回りを得る仕組みが可能であり、逆にDeFi市場ではローンの担保資産として活用される可能性もあると述べている。
This article does not contain investment advice or recommendations. Every investment and trading move involves risk, and readers should conduct their own research when making a decision.本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。
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