ブロックチェーンを扱う際は慎重に

ブロックチェーンは最大限の注意を払って扱わなければならないようだ。金融市場のエキスパート、Stephen Corliss氏がコインテレグラフに詳細を語ってくれた。

金融業界は、業界内だけでなく社会にも終わりなきダメージを与え続けている、とCorliss氏は語る―

 

「これは欠陥ビジネスや過度のレバレッジ、不透明性などによって、顧客や市民から長年信頼を欠いてきた結果です。その歴史を俯瞰してみれば、 社会のニーズを上回る利益を追求し、莫大な報酬を得ようと常に貪欲で無能かつ不正にまみれた不誠実なプロフェッショナルたちで業界は溢れていたのだろうと想像できます。金融業界の自称新参者として、人生の半分以上を企業での仕事に費やし、グローバルな金融システムの歴史と現在のルールを学んできたのです。ただ、監督してきた巨大産業と規制機関、そのどちらにも多くの優れた人材と社会に目を向けた分別のある機関が存在していたことは事実です」

 

スキャンダルの蔓延

しかしながら、それらの怠慢は極めて破壊的だ。1920年代のチャールズ・ポンジであれ、最近で言えばバーナード・マドフの件であれ、多くの場合、結果的に知識のない人々が弱みを突かれ標的にされた。

こういったスキャンダルによって確かに業界のイメージは悪くなったが、問題は一部に限ったものではなく、世界的に蔓延し社会全体に影響を及ぼした2008年のGFCなど、システム全体に関わるものだということだ。

そして最も問題なのは、不適切で貧弱な経営管理や政策の失敗、または単純に扱う製品やそのプロセスと管理規則への知識の欠如など、それらが意図的なものではなく、近視眼的な考えだったという点だ。

 

ブロックチェーンという名の的確な処方箋

あまり複雑でない環境下であれば、ブロックチェーンの元帳とスマートコントラクトなどのテクノロジーによって、金融業界は前述した社会的信用を損なうような問題を乗り越え、より健康的なエコシステムを備えた新たな段階へとしっかりとその姿を変えることが出来ると私は信じている。

この完全なる世界において、ブロックチェーン技術によって業界内の既存の時代遅れな工程やビジネスモデルなどの多層技術によるインフラが塗り替えられるはずだ。

複雑でない単純な環境下であれば、新規顧客の取り込みや、顧客との契約、リスクや手数料、利益相反に関する問題の開示、証券取引から住宅ローン、保険の契約に至るまで、スマートコントラクトによってオープン型の元帳上でほぼ全ての取引を行うことが出来るだろう。

ローンの取引、有価証券の貸付やレポ取引などを行う引受手段の役割、全てのLPS事業、セミプライベートな元帳上でのマスタートラストなども可能になる。

さらには、あまり馴染みがないかもしれないが、業界にとってはむしろ重要なユースケースとして、今日の多くの金融機関が、管轄規則や法律によって、現地の規制当局への一定の金融取引内容の報告が義務付けられているため、その際に発生する膨大な量の報告をするということが挙げられる。

 

負担軽減

その報告にはしばしば株式や債券の注文や取引(または、取引とその報告)、顧客の有価証券口座のフリークレジット、マージン残高、資産レポート、顧客資産レポート(CAP)、CMAR、コールレポート、CTR(通貨取引レポート)、ラージトレーダーレポート、電子ブルーシートなどに関連する様々なものが含まれる。

もし金融業界が、規制当局や外部のサービス・プロバイダーからアクセスと閲覧が可能な元帳を作ったようにブロックチェーン技術を開発していたとしたら、こういったかなり負担のかかる報告プロセスと関連するコストは存在しなかっただろう。最小限に価格を抑えることが出来ただろうし、規制当局はリアルタイムでより透過的にリスクと市場操作を減らし、市場と企業を監視することが出来たはずだ。

そういった世界が実現していれば、有価証券の発行と取引にはじまり支払いと決算のシステムに至るまでのほとんど全てがデジタル化され、最終的には世界中の市場でリアルタイムに決済が行え、より少ないリスクでシステムを稼働させることが出来たに違いない。

金融業界も、こういった利点を生かすには、世には無数の企業が存在するため、資本市場の構造的制約、知的財産権やプライバシーの権利、レギュレーションと法的規約などの企業秘密に関連した法的リスクを念頭に置いた国際競争が発生し、様々な理由や思惑が双方に存在することから、極めて時間がかかるものなのだという認識さえあれば、ブロックチェーン技術を利用し何でも実現できただろう。

 

注意して段階を踏む必要性

しかしながら、競争圧力は増しているため、既存の企業はこの破壊的なテクノロジーの分野で一歩リードしようとやっきになっているように見え、一方で、ベンチャーキャピタルは巨額の投資を新規参入してきた企業に投資している。このため、私の経験上、必要とされているグローバルな金融業界のランドスケープを見通して深い専門的な知識を持っている専門家が世界にほんの一握りしかおらず、最近は夜通し働いているような状態だ。専門家たちの意見がなければ、非常に残念なことだが、金融業界(新しいものも既存のものも)は過去の過ちを繰り返し、またさらなる犠牲者を生むことだろう。

事実、このことが部分的に私が起業家向けのソーシャル・キュレーターであるImpact Catalystと、ブロックチェーンとスマートコントラクトを利用したソーシャル・マーケットを提供するdFusedを展開させる動機に繋がっている。私がそうであるように、社会に貢献する新しい金融システムを望んでいる人達に、もし、この新しい世界へ足を踏み入れるつもりがあるのなら、まず最初に、どの市場や製品においても、新しいモデルを設計しようとする前に資本市場がコアの部分でどのように動いているのか理解する必要があるののだと伝えたい。慎重に動かなければ、社会にダメージを与えるリスクを生み出し、個人の資産に関わらず、誰でも利用することが出来る健康的な金融モデルを生み出す本当の可能性を失ってしまうことになるのだから。


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