仮想通貨の課税に関するIRSによる追加の指針が必要【専門家の寄稿】

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 アメリカの連邦レベルにおいて仮想通貨は、仮想通貨をそれぞれマネー、財産、商品、証券とみなしている、金融犯罪執行機関連絡室(FinCen)、米国外国資産管理局(OFAC)、歳入庁(IRS)、商品先物取引委員会(CFTC)、証券取引委員会(SEC)によって規制を受けている。複数に及ぶ仮想通貨の分類は、仮想通貨とブロックチェーンテクノロジー取引の課税に不確かさを生んでおり、業界参加者はそれに対して回答と説明を待ち望んでいる。

 米国公認会計士協会(AICPA)は5月30日、仮想通貨を財産として扱う通知2014 - 21以外の仮想通貨課税に関する指針を求める2度目の書簡をIRSに対して送った。AICPAのIRSに対する最初の書簡は、2年前の16年6月10日に送られた。「我々はIRSに対して、権威ある指針が存在するよう、通知2014 - 21と同様の、仮想通貨取引の税務上の取り扱いに関する指針を即座に発表することを勧める」と、AICPAの税務執行委員会の議長で、CPA(米国公認会計士)、CGMA(グローバル勅許管理会計士)のアネット・ネレン氏は語った。

「特に我々は、最初の通知2014 - 21で扱われた項目と、最初の通知の公表後に起こったチェーンスプリット、分岐といった17年の課税年度に関連する新しい問題に対処する追加の指針を要求している」

 アメリカ法曹協会の税務部門も今年の第一四半期に、IRSに対して送った書簡で取り上げている問題である。

仮想通貨関連の出来事:チェーンスプリット、分岐、エアドロップ、ギブアウェイ等の仮想通貨関連の出来事は、価格発見の対象である。そのため、米国の税務上の目的のために新しく出現した仮想通貨の、アメリカドル換算額を決定する際に特有の問題を生み出す。

 例えば、イーサリアムクラシックは5月29日、マイニングの問題を解決するために「分岐」した。この変化は、元のブロックチェーンのすべてのユーザーに、ソフトウェアのアップデートをしつつ、マイニングをより困難にするために設計された機能を無効にすることを余儀なくさせた。この機能はもともと、プルーフ・オブ・ワークからプルーフ・オブ・ステークのコンセプトに転換するための方法としてコーディングされていた。イーサリアムの開発者たちは今のところ、プルーフ・オブ・ワークを使い続けることにしている。
通知2014 - 21は、分岐、チェーンスプリット、エアドロップ、ギブアウェイや、その他のブロックチェーンテクノロジーや仮想通貨に特有のアクティビティについて税務上の取り扱いを定めてはいない。

 IRSに対するAICPAの書簡は、納税者が仮想通貨関連の出来事発生の30日以内に「譲渡の年の経常利益として仮想通貨関連の出来事を含めることを選択」することによって、仮想通貨関連の出来事を報告するべきと示唆している。納税者がその選択をしなかった場合には、仮想通貨関連の出来事は、以前の出来事によって受け取った仮想通貨を後に納税者が処分する際に経常利益として報告される。仮想通貨が納税者の所有する資本的資産の場合には、将来における資産の処分が資本利得または資本損失を生み出し、報告された所得が、仮想通貨の基礎価額となる。

仮想通貨獲得の経費:仮想通貨ユーザーは、法定通貨もしくはICOトークンを含むその他の仮想通貨と交換、もしくは借用、またはコンピューターに複雑な数学的問題の解決を競わせるプロセスである「マイニング」をすることで、仮想通貨を獲得することができる。

 通知2014 - 21の4項、Q&A-8は、納税者が仮想通貨のマイニングに成功した場合には、受領日時点での仮想通貨の公正な市場価格を総収入に含むことが可能である、としている。このことは、マイニングはサービスアクティビティに類似していることを示唆している。そのため、仮想通貨のコストを、支払い、もしくは発生時点で経費として扱われるその他のサービスを提供した時に発生する経費と同様に扱うことは妥当である。

 コインテレグラフが報じた通り、仮想通貨マイニングの許可を受けた利用の新しい事例では、ニュースサイトのサロン・ドットコムがユーザーに、広告を見させる代わりに、「未使用のコンピューターの能力」にアクセスすることをサロン・ドットコムに許可するオプションを与えた。サロンによるこの従来の広告に代わる収益化の形態は、サイトへの訪問者を利用してサロンがマイニングしたモネロが適切に課税されることを意味している。

 IRSに対するAICPAの書簡は、仮想通貨マイニングは、マイニングの年の経常利益として取り扱い、マイニングの経費は発生時に控除されるべきと示唆している。収益と経費の釣り合いが、その他のサービスアクティビティと一致しているからである。仮想通貨マイニングの設備は、耐用年数が1年を超えるその他の財産と同じように、資産計上、または減価償却されるべきである。

 しかしIRSに対するAICPAの書簡は、仮想通貨資産の貸借取引やICOトークンの獲得の際に、納税者が被った費用をどのように取り扱うべきかについて言及していない。例えば、ハワイのコンドミニアムの代金を支払うために、2100万ドルのICO売上金額の一部を創業者が使ってしまったチタニアムブロックチェーンインフラストラクチャーサービスの発行するBARトークンの保有者は、税務上の目的でどのような取り扱いをしたらいいのだろうか。

 「仮想通貨の急速な出現は、仮想通貨を含む様々な取引や、仮想通貨に関連するアクティビティ、資産に対して税法規がどのように適用されるのかについて、複数の新しい疑問を生み出した。さらに仮想通貨の種類とその価値の増加によって、これらの疑問はより多くの納税者と税務専門家に関係する時宜を得たものになっている」と、ネレン氏は付け加えた。

 イーサリアム・ブロックチェーンプラットフォームをますます利用するようになっているイニシャル・コイン・オファリング(ICO)企業は、SECによる証券という分類と、CFTCによる商品という分類の間で揺れる規制当局の明確な姿勢を得るために、イーサ(ETH)の分類に関してSECからの公式の声明を期待している。SECからの表明が不在の中、これらの新しい疑問に答えるというIRSの仕事はより一層困難になっている。

 仮想通貨の容認可能な査定証拠書類&損益計算:仮想通貨は、法定通貨に相当する価値を持つか、もしくは市場で決定できる価値に基づいて実際の通貨の代替として機能する。通知2014 - 21の4項、Q&A-5は、支払いもしくは受け取りの時点でのアメリカドル換算での仮想通貨の公正な市場価格を決定するのに用いられる、市場の需要と供給によって設定された為替レートに言及している。また、仮想通貨の公正な市場価格を計算するのに「一貫して利用される合理的な方法」を利用するように納税者に対して勧告している。

 IRSに対するAICPAの書簡は、次の通りの示唆も行なっている。異なる取引所ごとに仮想通貨の価格にはかなりの差異があるため、「合理的な方法」を定義するためにはさらなる指針と例示が必要であること。異なる取引所の査定額の計算方法が一貫しており、すべての仮想通貨取引に一貫してその決定方法を用いている限りは、納税者は異なる取引所間の平均を利用することを許されるべきであること。そして、仮想通貨の損益を計算するために毎年一貫した方法が利用される限り、特定の同定方法、もしくはFIFO(先入先出法)のどちらかを選ぶべきであること。

 非常に多くの企業が、仮想通貨やブロックチェーン指向の会計、税務ソフトウェアを開発し始め、アメリカの納税者がアメリカでの税務上の目的のために仮想通貨の損益の公正な価値を決定する合理的で、一貫した方法としてそれらに頼るようになっているため、このことは特に重要である。

外国の仮想通貨の報告要件:仮想通貨の中には、アメリカ国外の管轄で運営する中央集権型の取引所で取引されるものもある。これらの取引所は、純粋に仮想通貨だけを扱う取引所であるか、仮想通貨を法定通貨に交換することを許可する仮想通貨取引所のどちらかである。これら海外の仮想通貨取引所は顧客の仮想通貨を管理しており、取引の失敗は顧客の資金の損失につながり、同様の働きをするために、その点で国外金融機関(FFI)に類似している。通知2014 -21は外国の仮想通貨の税務上の報告要件について言及していない。

 IRSに対するAICPAの書簡は、FBAR(外国銀行金融口座レポート)およびFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)のために、外国の取引所に保管されている仮想通貨と法定通貨の額を納税者は報告するべきと示唆している。ただしそれは、必要な基準を満たした場合で、納税者が自身の所有、コントロールするウォレットに仮想通貨を保有しており、プライベートキーを管理している場合にはそれに当たらない。

 「納税者がますます関与するようになってきている仮想通貨取引は、顧客の報告要件の分析に新しい複雑さを加えている。この分野における明確な指針の発表は、仮想通貨取引に対する税法規の適用に関して、税務申告書作成者と納税者に対して、信頼と明確さをもたらすことになる」と、ネレン氏は結論づけた。

セルヴァ・オゼーリCPAは、国際税務弁護士およびCPA(米国公認会計士)であり、税、法律、会計に関する問題について、タックスノーツ、ブルームバーグBNA、その他の出版物やOECDで論じている。