ブラックロックのデジタル資産部門責任者であるロビー・ミッチニック氏は、同社のイーサリアム上場投資信託(ETF)について「大成功」と評したが、重要な制約があることも認めた。
同氏は3月20日に開催されたデジタル・アセット・サミットで、イーサリアムETFは「ステーキングがないために完璧とは言えない」と述べ、現行の提供内容に欠けている重要な要素を指摘した。
「ステーキングの利回りは、この分野で投資リターンを生み出す上で大きな要素だ」とミッチニック氏は述べた。「現時点ではすべてのイーサリアムETFにステーキングが組み込まれていない」。
ただし、イーサリアムETFにステーキングを導入するのは容易ではないという。「単に新しい政権が承認したからといって、すぐに実現するような話ではない。克服すべき複雑な課題が多数ある。しかし、もし解決できれば、これらの商品の取引活動に大きな変化が生まれると思う」とミッチニック氏は語った。
デジタル・アセット・サミットでのミッチニック氏(右)とルービン氏(中央)Source: YouTube
イーサリアムのステーキングは、2020年12月にプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行の一環として導入された。2024年2月時点で、イーサリアムのステーキング預入額は850億ドルに達し、流通供給量の25%を占めている。
現在、ステーキングによる年間利回りは2%~7%の範囲にある。しかし、ステーキングにはリスクも伴い、バリデーターが不正行為を行った場合にはスラッシング(ペナルティによる資産没収)が発生する可能性がある。このようなリスクは、伝統的な投資家にとって追加の障害となり得る。
イーサリアムをめぐる評価と課題
この強気相場の中で、イーサリアムに関する市場の評価は必ずしも好意的ではなかった。特に、ETHの価格が他の仮想通貨に比べて低迷している点が指摘されている。
デジタル・アセット・サミットに登壇したイーサリアム共同創設者のジョセフ・ルービン氏は、機関投資家向けのイーサリアムの説明が「包括的すぎる」と述べた。
「これは、インターネットのプロトコルやWebのプロトコルを説明しようとするようなものだ」とルービン氏は語り、次のように続けた。
「イーサリアムはあらゆることが可能なプラットフォームだ。Web上でほぼ何でもできるのと同じように。ただ、その複雑性や可能性をすべて理解できる人は限られる」
ルービン氏によると、イーサリアムの強みを伝えるには、抽象的な概念よりも具体的なユースケースに焦点を当てるべきだという。「我々は今、ブロードバンドの普及期に入った。これからは、ソーシャルグラフ、分散型ID、証明書、信用評価など、実際にさまざまなアプリケーションで利用される技術が注目されるようになるだろう」。
ブラックロックのイーサリアム戦略
ミッチニック氏は、機関投資家への説明において、イーサリアムを「技術革新の物語」として伝えるのが最も効果的だと指摘する。
「小学生向けに説明するなら、イーサリアムは技術革新の話になる。しかし、高校生向けに説明しようとすると、より広範で複雑なものになってしまう」と述べた。
「ブロックチェーンの採用とイノベーションに対する投資という視点で説明するのが、機関投資家にとって最も分かりやすい」
ミッチニック氏によれば、ブラックロックは、投資家に対し、イーサリアムを「トークン化、ステーブルコインの普及、分散型金融(DeFi)の成長を支える資産」として位置づけている。
データプロバイダーSoSoValueによると、3月20日時点でイーサリアムETFの総資産価値は70億ドルに達し、累計流入額は25億ドルとなっている。ただし、仮想通貨市場全体が低迷する中、過去11日間でETFの資金流出額は3億5800万ドルにのぼっている。