米国上院銀行委員会は、「米国ステーブルコイン国家イノベーション指針法(GENIUS法)」を賛成18、反対6の投票で可決し、次の段階に進めることを決定した。
エリザベス・ウォーレン上院議員が提出した修正案、特に「ステーブルコイン発行を銀行機関のみに限定する」という提案はすべて却下された。
ウォーレン議員は次のように主張した。
「この法案を修正せずに通せば、テロ資金調達がさらに加速される。イラン、北朝鮮、ロシアによる制裁回避も容易になってしまう。」
Senator Warren argues for amendments to be included in the bill. Source: US Senate Banking Committee GOP
一方、上院銀行委員会の委員長ティム・スコット議員は、この法案を「イノベーションの勝利」と評価し、次のように述べた。
「GENIUS法は、ステーブルコイン発行者に1対1の準備資産保持やマネーロンダリング防止(AML)法の遵守を義務付け、米国消費者を保護しつつ、米ドルの国際競争力を高める常識的なルールを確立する。」
なお、この法案が正式に法律として成立するには、今後も上下両院での採決と、最終的にトランプ大統領の署名が必要となる。
それでも、今回の銀行委員会の可決は、暗号資産業界が求めてきた包括的な法整備に向けた重要な一歩とされる。
Senator Tim Scott, chairman of the Senate Banking Committee, leads the hearing. Source: US Senate Banking Committee GOP
GENIUS法、より厳格な規定を盛り込み改訂
2025年2月に法案を提出したビル・ハガティ上院議員は、ウォーレン議員の修正提案に対し、法案自体に既に「消費者保護」「AML」「犯罪防止」の規定が盛り込まれていると反論した。
2025年3月10日、ハガティ議員は法案が改訂され、ステーブルコイン発行者に対するより厳格な準備資産要件、マネーロンダリング対策、テロ資金供与防止措置、透明なリスク管理手続き、制裁遵守義務が追加されたことを発表した。
Web3学習プラットフォーム「Easy A」の創設者ドム・クウォック氏によると、こうした新たな規定により、海外のステーブルコイン発行者が準拠するのは難しくなり、米国拠点の発行者が競争上の優位を得ることになると述べている。
Senator Bill Hagerty defends his bill from proposed amendments. Source: Senate Banking Committee GOP
弁護士のジェレミー・ホーガン氏は、GENIUS法について「従来の金融システムとステーブルコインの統合が迫っている兆候だ」と述べ、2025年3月10日のX(旧Twitter)の投稿で「この法案は、ステーブルコインが従来のデジタル銀行システムと相互運用されることを明示的に計画している。『統合』が進められている」と指摘した。
さらに、2025年3月7日にホワイトハウスで開催された暗号資産サミットでは、米財務長官スコット・ベセント氏が「トランプ政権がステーブルコインを活用して米ドルの基軸通貨としての地位を守る意向である」と明言している。