ストラテジー(Strategy)のマイケル・セイラーCEOは、ポッドキャスト番組「Coin Stories」に出演し、量子コンピューティングに対する懸念を一蹴した。同氏は、サイバーセキュリティの専門家の間では「信頼に足る量子脅威が出現するのは10年以上先である」というのが共通認識であると語った。
量子リスクがいつ、あるいは本当に現実化するかは依然として不透明だが、セイラー氏は、もし画期的な進展があれば、銀行システム、インターネット・インフラ、消費者向けデバイス、AIネットワーク、そしてビットコイン(BTC)を含む仮想通貨プロトコルといった、全世界のデジタルシステムが一斉にアップグレードを余儀なくされるだろうと指摘した。
同氏は、現代のデジタル基盤を支えるシステムはいずれ「耐量子計算機暗号(PQC)」を採用することになるとし、その移行は驚くべきことではないと述べた。 「その兆候は見えてくる。私たち全員が気づくはずだ」と語り、ビットコインのソフトウェアは時間の経過とともに変化するように設計されており、ノードやハードウェア、ウォレットは新たな脅威に対応してアップグレードが可能であると付け加えた。

セイラー氏の考えでは、脅威が現実味を帯びれば、政府やIT企業、金融機関も同様のリスクに直面するため、グローバルな合意形成がなされるという。
また、同氏は仮想通貨セクターを「最も洗練されたサイバーセキュリティ・コミュニティ」と表現。多要素認証やハードウェアキーによる保護が一般化している点を強調した。
「仮想通貨コミュニティは、脅威をいち早く察知し、対応し、道を切り開く存在になるだろう」と述べ、ビットコインを移動させる際の手続きは、伝統的な銀行送金や株式取引のセキュリティ基準よりもはるかに厳格であると主張した。
量子コンピューティングは、量子力学を利用して従来のコンピュータより遥かに高速に情報を処理する技術だ。将来的に、ビットコインなどの資産を保護する現在の暗号技術が破られるのではないかという懸念を呼んでいる。
セイラー氏率いるストラテジー社は、世界最大のビットコイン財務保有企業だ。同社は月曜日、先週約592 BTC(約3,980万ドル)を追加購入したと発表。2020年8月にビットコイン財務戦略を採用して以来、これで100回目の購入となった。
現在の保有量は71万7,722 BTC。累計取得額は約545億6,000万ドルで、1枚あたりの平均単価は6万7,286ドルとなっている。

仮想通貨業界で続く量子論争
ビットコインの強力な推進者であるセイラー氏がリスクを軽視する一方で、危機感を募らせる関係者も少なくない。
イーサリアム(ETH)の共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は、2025年末に予測プラットフォーム「Metaculus」のデータを引用。現在の暗号を破る量子コンピュータが2030年までに登場する確率を約20%とし、中央値は2040年頃になると予測した。
ブテリン氏はその後、アルゼンチンで開催された「Devconnect」で、ビットコインやイーサリアムを支える楕円曲線暗号が2028年の米大統領選挙前に破られる可能性があると警告。今後4年以内に耐量子システムへの移行を急ぐよう促した。
これを受け、イーサリアム財団は2026年のセキュリティ・ロードマップに耐量子準備を組み込んだ。1月24日には研究者のジャスティン・ドレイク氏が、専門の「ポスト量子(PQ)チーム」の発足を発表。「財団の長期的な量子戦略における転換点になる」と述べている。
一部では、ビットコインが10月の12万6,000ドル超から現在の6万4,000ドル前後へ下落した要因として、この量子脅威を挙げる声もある。キャッスル・アイランド・ベンチャーズのニック・カーター氏は、ビットコインの「不可解な」不振は量子リスクへの懸念に起因しており、開発者が動く前に市場が反応している可能性があると指摘した。
しかし、この見方には反論もあり、グラスノードのアナリストであるジェームズ・チェック氏は「量子対策は進めるべきだが、それが価格下落の『主な理由』ではない」と否定している。


