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Amin HaqshanasAmin Haqshanas

2026年 量子コンピューターの脅威はどうなる? 仮想通貨コミュニティは対策を始める時期に

2026年 量子コンピューターの脅威はどうなる? 仮想通貨コミュニティは対策を始める時期に
年始スペシャル

量子コンピューターは、ビットコインをはじめとする仮想通貨を支える暗号技術を将来的に破る可能性があるとして、長らく仮想通貨に対する脅威と見なされてきた。2026年を前に、主要テック企業が量子コンピューターの研究と投資を加速させる中で、その懸念が再び注目を集めている。

量子コンピューターはまだ広く普及する実用段階に達していないが、投資と実験のペースは勢いを増している。2月にはマイクロソフトが「新しいトポロジカル・コア・アーキテクチャを搭載した世界初の量子チップ」と称する「マヨラナ1」を発表し、量子ハードウェアが研究段階から実運用へ移行する速度を巡る議論を再燃させた。

もっとも、専門家の多くは、仮想通貨に対するリスクは依然として理論上のもので、差し迫ったものではないと指摘する。真の懸念は、来年に仮想通貨が突然崩壊することではなく、攻撃者が量子時代を見据えてすでに行っている準備だという。

アルジェンタムAIの共同創設者でAI部門責任者のクラーク・アレクサンダー氏は、量子コンピューターが2026年に見せる商用利用は「極めて限定的」になるとの見方をコインテレグラフに示した。

一方、コイン・ビューロー共同創設者で仮想通貨アナリストのニック・パクリン氏は、より率直だ。

「『量子コンピューターがビットコインを脅かす』というナラティブの9割はマーケティングで、差し迫った脅威は1割に過ぎない。既存の暗号を実際に破れるコンピューターが登場するまで、少なくとも10年はかかる可能性が高い」

なぜ仮想通貨はリスクにさらされるのか

ビットコイン(BTC)や主要なブロックチェーンの多くは、公開鍵暗号によってウォレットの安全性やトランザクションの正当性を担保している。秘密鍵で取引に署名し、公開鍵で検証し、ハッシュ関数が台帳を保護する。将来、量子コンピューターが公開鍵から秘密鍵を導出できるようになれば、理論上は資金が盗まれる恐れがある。

この問題は規制当局の関心も集めている。9月には、米証券取引委員会(SEC)の暗号資産タスクフォースに対し、量子コンピューターが将来的にビットコインなどの暗号を破る可能性を警告する報告書が提出された

技術的には、暗号学者の間で「署名」が最も弱い部分との認識が共有されている。ブースティ・ラボのブロックチェーン研究開発担当のソフィア・キレイエワ氏は、「ショアのアルゴリズムで効率的に解ける数学問題に依存する暗号は脆弱だ」と述べた。

同氏によると、量子コンピューターを駆使する攻撃者がビットコインを狙う場合、公開鍵と秘密鍵に使われる楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)が最大の弱点となる。一方、SHA-256のハッシュ関数は影響を受けにくく、グローバーのアルゴリズムでも二次的な高速化にとどまり、ハッシュ値の長さを拡張すれば緩和可能だという。

スイス拠点のOファウンデーション創設者アフマド・シャディド氏も、署名が中核的な脆弱性だと指摘する。「特にアドレスの再利用はリスクを大きく高める」。

2026年に専門家が想定すること

懸念が高まる一方で、2026年までに暗号が破られる可能性は低い。キレイエワ氏は量子ハードウェアの物理的制約を挙げる。

「現在の量子デバイスはノイズの多い量子ビットが数百から数千程度で、ショアのような深いアルゴリズムを動かすには到底足りない。現実的な暗号解読には、数百万の物理量子ビット、極めて低い誤り率、長時間のコヒーレンス維持が必要だ」

さらに、材料科学、量子制御、製造、信号分離などのブレークスルーも不可欠で、「ボトルネックは工学だけでなく、基礎物理学にある」と同氏は述べた。

アレクサンダー氏は、2026年までに量子コンピューターがビットコインの暗号を破る可能性は低いだけでなく、現行のアプローチでは永遠に破れないかもしれないとまで語る。真の危険は古典的コンピューターの進歩にあり、量子・従来型を問わず、公開鍵暗号を現実的に破るには根本的に新しいアルゴリズムが必要だという。

「今収集し、後で解読」の問題

2026年の現実的な脅威は、ビットコインが壊れることではなく、攻撃者がすでにデータを集めている点にある。

サハラAI共同創設者のショーン・レン氏は、「2026年に量子脅威が顕在化する可能性は低いが、悪意ある攻撃者は暗号化データをできる限り収集している。技術が整えば、保存されたデータが一気に読めるようになる」と語る。

シシック共同創設者のレオ・ファン氏も、「今収集し、後で解読」という典型的な攻撃シナリオを指摘する。シャディド氏は、公開オンチェーンデータから公開鍵を大量に集め、将来の量子計算で秘密鍵を解読する可能性に言及した。

仮想通貨はどう備えるか

キレイエワ氏は、全BTCの25〜30%、約400万BTCが脆弱なアドレスにあると推定する。すでに公開鍵がオンチェーンで露出しているため、十分に強力な量子コンピューターがあれば秘密鍵回収の対象になりやすい。

対策として、アドレス再利用の回避、支出まで公開鍵を露出させない運用、量子耐性ウォレットや新アドレス形式への迅速な移行準備を挙げた。

コミュニティでは対策を進めようという動きもある。7月には、ビットコインの署名方式を量子耐性の代替手段に置き換える計画が示された。11月には、キャッスルがホットウォレット向けに量子グレードのセキュリティを導入する計画を発表し、量子生成乱数とポスト量子暗号で保護する方針を示した。

2026年に量子コンピューターによる終末は訪れないだろう。ただし、議論は「本当に起きるのか?」から「いつ起きるか?」へ移りつつある。

ファン氏は「2026年までに大規模な量子攻撃が起きる確率は低〜中程度だが、量子コンピューターが仮想通貨セキュリティにおける最重要リスクとして認識される可能性は高い」と述べた。

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