今週、2013年11月以来となる15連騰を記録する途中だったビットコイン市場に背筋が凍るようなニュースが流れてきた。米司法省が、記者会見を開いて「仮想通貨に関する大きな発表」を行うと述べたのだ。
突然のニュースを受ける形でビットコインとイーサリアムは5%ほど下げた。何か不吉なことが起きるのではないか、大手仮想通貨取引所に対する取締りが発表されるかもしれないと投資家は肝を冷やしたようだ。バイナンスのCEOであるチャンペン・ジャオ(CZ)は、「4」とツイートし、新年の抱負で述べたようにFUDやフェイクニュースは無視する姿勢を示した。
しかし、司法省の最近の発表は、仮想通貨取引所Bitzlatoの創業者でロシア国籍のAnatoly Legkodymov氏をマネーロンダリングの疑いで起訴したというものだった。取引資産額は600万ドルという小規模な取引所で、FTXのスケールとは比べものにならないほど取るに足らない案件だ。Twitter上では「Bitzlatoって一体なんだ?」という声が飛び交い、ある意味期待を裏切られた発表に多くの人々がコメントした。
冗談はさておき、米国政府の仮想通貨規制に対する本気度がみられたということは言えるだろう。Bitzlatoは香港拠点の取引所で、世界最大規模のダークネットであるHydra Marketと7億ドルの取引をしたことやランサムウェアから分け前として1500万ドルを受け取ったことなどが罪状としてあげられた。
米司法副長官にリサ・モナコ氏は、「中国でも欧州でも熱帯の島からであっても、法律違反をして金融システムを悪用した者は米国で裁きを受けるだろう」と確信を持って発言した。
この動きからは多くの教訓が学べるだろう。まず、仮想通貨業界からのロビー活動は増えているにもかかわらず、米国の規制は強まる見通しであることだ。ポストFTXの世界で司法省は躊躇せず、犯罪行動に対して断固とした姿勢を示すだろう。これは悪いニュースではない。P2Pで透明性の高い取引を実現するのが仮想通貨の世界だが、仮想通貨を悪用しようとする詐欺師たちの行動は属人的な問題であり、これらが取締られるのは歓迎すべきだ。
次に、人々の潜在意識の中でCEX(中央集権型の取引所)に対する不安が大きいということだ。今回は肩透かしに終わった司法省の発表だが、ある意味大手取引所が狙われてもおかしくないという空気感が出てきているように思える。昨年、FTXをはじめ多くの第三者依存型のビジネスモデルが崩壊してきたのを我々は目撃した。これらが規制当局によって取締られるのは「ある意味しょうがない」と思ってしまっている節があるのかもしれない。
裏を返せば、分散型への道を本気で考える時期が近いということだろう。
著者 Ledger
プロフィール:2014年に誕生した仮想通貨のハードウェアウォレットの会社。拠点はフランスにあり、現在はLedger Nano XとLedger Nano S+、Ledger Nano Sという3種類のハードウェアウォレットを製造・販売している。Ledger Nano S +は2022年4月4日発売の最新作。Ledger Nanoシリーズに接続して使うソフトウェアであるLedger Liveを、全ての仮想通貨サービスが1箇所に集まるプラットフォーム、いわば「Web3.0のハブ」にすることを目指している。公式サイト:https://www.ledger.com/ja