過去数十年間、我々の多くはプライバシーの重要性を忘れてしまっていた。それは当たり前の権利であり、当然のように守られているものだと誤った認識を持っていた。残念ながら、デジタルの世界において、民主主義のような環境は整備されていない。そして、我々のプライバシーは守られていない。

Web2のプラットフォームをなぜ無料で使えるかというと、あなた自身が彼らの製品に成り下がっているからだ。Web2は、あなたが自分の個人情報を自らが共有したくなるという賢いインセンティブを設計した。「結局、プライバシーって何が重要なのか?私は何も隠し事はない」と考える人も多いかもしれない。

しかし我々は、この考え方は間違っていると思う。誰もが他人に知られたくないことがあるはずだ。プライバシーのある生活は尊重されるべきだ。
 
まだ説得力に乏しいか?では、ある国を想像してみよう。

政府が国民の会話を盗聴し、国民の習慣を記録し、ボタン一つで市民権を剥奪するような力を持っているとしたらどうだろうか。デジタルの世界では、このようなことが現実になっている。

一方、Web3プレイヤーの多くも、Web2時代と同じように、あなたのアイデンティティとプライバシーへの権利を奪おうとしている。例えば、もし仮想通貨を中央集権型の取引所に預ければ、あなたはお金への管理権限を失うだけでなく、プライバシーも犠牲にすることになる。取引所は、あなたに関する完全なKYC(顧客確認)を要求し、個人情報を集める。

あなたのお金はあなたが管理すること、セルフカストディの重要性はデジタルの世界で高まっている。同時に、あなたの個人情報をもとに利益を得るビジネス構造からの転換も重要なのだ。

フリーダム・バイ・デザイン

我々は、フリーダム・バイ・デザイン(設計段階で自由を組み込むこと)が重要だと考える。政府や企業を信用する必要がない。計画的に、プライバシーが守られる体験を導入する必要がある。

我々は、プライバシーの未来はトラストレス(Trustless、管理者が存在しない状態)だと考えている。Ledgerのチャールズ・ガイルメットCTOは、ゼロ知識証明(ZKP)にその可能性を見出している。ZKPとは、ある事柄が正しいことをその事柄に関する情報を知らずに証明する技術のことだ。まるで魔法のように聞こえるだろう。

ZKPを使えば、 分散型のネットワークにおいて、ある取引が正当であることをその取引に関する情報を知らずに証明することができる。具体的には、あなたが21歳以上であることを、あなたの個人情報を知らせずに証明すること、つまり、名前を知らせずにKYCを済ませることができるようになる。その時、あなたはオンチェーン上で匿名で「正当」な取引を実行できるようになるだろう。

プライバシーとは自由だ。それを、計画的に保証することが求められるだろう。

著者 Ledger

プロフィール:2014年に誕生した仮想通貨のハードウェアウォレットの会社。拠点はフランスにあり、現在はLedger Nano XとLedger Nano S+、Ledger Nano Sという3種類のハードウェアウォレットを製造・販売している。Ledger Nano S +は2022年4月4日発売の最新作。Ledger Nanoシリーズに接続して使うソフトウェアであるLedger Liveを、全ての仮想通貨サービスが1箇所に集まるプラットフォーム、いわば「Web3.0のハブ」にすることを目指している。公式サイト:https://www.ledger.com/ja