仮想通貨市場の急落とセルシウスの出金停止から我々が学べることは、他人に頼ることはリスクが高いということだ。第3者である中央集権的なカストディアンによってデジタル資産を保管することは危険であり、デジタルフリーダムの本当の価値は何か改めて考えさせられた。

デジタルフリーダムは業界の垣根を越える

ニューヨークで開催されたNFTの祭典「NFT.NYC」において、仮想通貨取引所クラーケンのダン・ヘルド氏は、最近の市場の混乱について「セルフカストディ(自分の資産を自分で守ること)の重要性が鍵であることを思い知らされた」と話した。同氏は、そもそもビットコインは「強権的な中央集権のエンティティから自由を勝ち取ることを意味しており、我々が自分の資産を持つ上で彼らを信頼する必要がなくなるという点で、セルフカストディは極めて重要だ」と続けた。

Ledgerのパスカル・ゴティエCEOは、「Web1が我々に自由なインターネットをもたらしたが、Web2で我々は中央集権的でサイロ化されたシステムに閉じ込められてしまった」と切り出した。Web3は、我々にデジタルフリーダムの重要性を思い出させてくれる大きなきっかけ。そしてその大前提となるのが秘密鍵を自分自身が保有するということだ。

「Web3の世界において、初めてあなたはあなたが管理できる”デジタル版の自分”という存在を手に入れる」とゴティエCEOは付け加えた。

デジタルフリーダムが待ち望まれているのは、金融業界だけではない。例えば、ワーナーミュージックのオアナ・ルクサンドラ氏は、音楽業界においてもその重要性が高まっているとみている。

「現在の音楽は(音楽プラットフォームなどから)一方的に押しつけられる静的な体験であり、アーティストや消費者によって創られるものではない。対照的に、Web3は、アーティストや消費者が望むことを実現できる」

また、グラミー賞を受賞したアーティストであるTokimonstaは、Web3によって「音楽に自由がもたらされる」と考えている。「現状、音楽プラットフォームにあなたが99セント払った場合、アーティストの取り分はほとんどない」と述べた。

デジタルフリーダムへの道のり

インターネットの次の時代は確実に到来している。ユーザーやブランド、クリエーターが初めてデジタルフリーダムを享受できる時代だ。

Web2はスマートフォンをもたらした。Web3では、ユーザーやブランド、クリエーターに新たな可能性をもたらし、デジタルの資産価値を自らの手で自由に管理できる安全なデバイスが生まれるとみている。Web3では、資産管理において自分が主権を取り戻す(self-sovereignty)のだ。その上で、安全でユーザーフレンドリーなプラットフォームはどこか?新たに参入すると見込まれる数十億人のユーザーにしっかり教育をできるのはどこか?これらに答えられることが、Web3時代に企業が生き残る条件になるだろう。

久しぶりに弱気相場に突入した。再び、ビルド(構築)に集中する季節が到来したのだ。デジタルフリーダムへの冒険は始まったばかりだ。

 

著者 Ledger

プロフィール:2014年に誕生した仮想通貨のハードウェアウォレットの会社。拠点はフランスにあり、現在はLedger Nano XとLedger Nano S+、Ledger Nano Sという3種類のハードウェアウォレットを製造・販売している。Ledger Nano S +は2022年4月4日発売の最新作。Ledger Nanoシリーズに接続して使うソフトウェアであるLedger Liveを、全ての仮想通貨サービスが1箇所に集まるプラットフォーム、いわば「Web3.0のハブ」にすることを目指している。公式サイト:https://www.ledger.com/ja