オーストラリアのシドニーに拠点を置く企業が、分散型金融(DeFi)の利点とイスラム教における金融に関する考えを両立させる、世界で初めて「シャリーア(イスラム法)の教えに則った」と同社が謳う分散型金融プラットフォームを開発している。

マルハバ社による分散型金融プラットフォーム(マルハバはアラビア語で「ようこそ」の意味)は数か月以内にサービス開始予定であり、イスラム世界にシャリーアの主要な教義によって特徴づけられた分散型金融プラットフォームを提供することを目的としている。

コインテレグラフの取材に対し、ブロックチェーン・オーストラリア(Blockchain Australia)のCIOであり、マルハバ(Marhaba)のCEOおよび創設者であるナキブ・モハメド氏は、シャリーアを基にした金融における主要な信条が「サービスを提供する金融事業者とその顧客が金融取引において共に利益を得ること」を確かにすることであると強調して述べている。

「私たちは、コミュニティを包括的なものにし、信心深いイスラム教徒がなんのためらいや疑いも持たずに参加できる信頼の場所となるプラットフォームを開発している」

企業向けプラットフォームであるスフェリウム・ファイナンス(Spherium Finance)を20年初頭に創設してから、モハメド氏は世界に20億人いるイスラム教徒を対象としたプラットフォームの設計にその関心を移した。

暗号資産に関して多くのアラブ系コミュニティがどのような態度を取っているかについてマルハバは調査を行ったとモハメド氏は述べている。同氏は次のように思い返している。

「イスラム教の国々では、99%の確率で人々はこう質問してくることが分かった。『このトークンはハラルか?このトークンはシャリーアに則ったものか?』(中略)2番目の質問はこうだ。『これはどこで買えるのだ?』」

仮想通貨の新たなプロジェクトのほとんどは、テストネット上で調整を行い、ソーシャルメディア上で才能あるミーム拡散者を探し求めることから開始される。一方マルハバの道のりは、暗号資産の分野にも理解があり、シャリーアの考えに則って分散型金融を行うことは可能だと考える著名なイスラム教の学者らをモハメド氏が探し求めることから始まった。

イスラム教の考えである「リバー」(高利貸)は「高利息のローンや攻撃型のデリバティブ」製品に加えて、ギャンブルに似た取引(「マイシール」)を禁じている。また、過度なリスクや疑念(「ガラール」)のある取引も認められていない。モハメド氏は次のように述べている。

「イスラムのエコシステムにおいて一部の学者たちがビットコインについて未だに議論している理由は、誰もビットコインを生み出した人間を知らないからだ。誰が作ったのか分からなければ、それは疑いの対象となるということだ」

マルハバによるDeFiはまず自己管理型の「サハルウォレット」のサービスを開始する。同ウォレットは「シャリーア検査を受けたトークンやNFT」の管理や取引に対応するという。

マルハバは「社内に高い技能を持ったシャリーアに関するアドバイザー」のチームを雇用するとしている。同チームはマルハバのプラットフォームが対応する製品やトークンがシャリーアに則るものであることを確実にすることを業務とするという。また、同チームは仮想通貨のデータアグリケーターにリストアップされるトークンを最小のものから最大のものまで系統的に評価し、認可後のプロジェクトも定期的に審査するという。

同ウォレットには将来的にマルハバから登場予定である「倫理的取引」、「利益最大化バケット」、分散型チャリティ、支払い手段、NFTマーケットプレースなどといった製品が統合される予定であるという。

モハメド氏はマルハバの利益最大化バケットを「シャリーアを遵守したイールドファーミング」のようなものと説明し、次のように述べている。

「正確にはイールドファーミングとは異なるものだ。それは、顧客が利益を最大化するために様々な投資バケットを私たちが作るという点で非常に革新的なのだ」

貸し出し時に利息を付けることはシャリーアの教えでは禁止されているが、マルハバは利息を取らずに預金者の資産を集めることのできる借入および融資商品についても模索している。

マルハバのNFTマーケットプレースは今年中にサービスが開始される予定であり、プラットフォーム上でトークン化される、伝統からインスピレーションを得たイスラム的なカリグラフィー作品を制作するための著名なアーティストを同社は募っている。