自分の遺伝子情報を提供する事でトークンを獲得? ブロックチェーンでプライバシーも担保

ハーバード大学医学部の教授で、ゲノム(全遺伝子情報)解析・編集おけるパイオニアの一人とされるジョージ・チャーチ(George Church)氏によるブロックチェーン企業が注目を浴びている。同氏が同大学の博士課程卒業生二人と立ち上げたNebula Genomics(ネビューラ・ゲノミックス)だ。米ボストンとサンフランシスコに拠点をおくネビューラはこれまでの個人向け遺伝子解析サービスとは異なり、文字通りゲノム(全遺伝子情報)全体の配列を解析。得られたデータをもとに病気リスク等の診断を行った上で、ユーザーがこのゲノム配列情報を医薬業界に共有して仮想通貨を獲得できる選択肢を提供する。トークン経済の考えを使って、遺伝子医療を飛躍的に進歩させるという科学者ならではのプロジェクトだ。

米クリントン大統領が「ヒトゲノム」解読を宣言してから約20年。ゲノム解析にかかる費用は劇的に下がり、今では個人でも全遺伝子情報を解析できる時代が来た。米検索サイト大手グーグル創業者のセルゲイ・ブリン氏の妻が展開する一般向け遺伝子解析サービスを皮切りに、今では日本のヤフー、DeNA等も国内向けの類似サービスを展開している。

ゲノム解析が手軽にできるようになったことで、難病治療薬の開発、遺伝にちなむ病気の予測やそれに対する予防治療、遺伝子病リスクなどを考慮にいれた家族計画や食習慣の設計、さらにはゲノム編集治療等も夢物語でなくなってきている。一方、これらを実現するために必要な大量のゲノム解析データが足りておらず、医薬会社は遺伝子解析サービス業者や研究機関等から買い付けているのが実情だ。

個人の全遺伝子情報が自分の知らないうちに取引されているのではーー。そう思うと医療の発展につながると知っていても、ゲノム解析サービスの使用を躊躇(ちゅうちょ)してしまう人もいるのではないだろうか。そこで著名な生物学者であるチャーチ氏が構想するネビューラはブロックチェーンを使ってプライバシーを担保し、この問題を解決しようとしている。

ゲノム解析のパイオニアといわれるジョージ・チャーチ氏。ゲノム編集技術CRISPRを最適化しヒトiPS細胞に適用したことでも有名。(ハーバード大学医学部で撮影。Getty Images)

ネビューラではパートナー企業と提携しゲノム全体の配列を解析。ユーザーは解析から得られた健康アドバイスを受け取った後、自身のゲノムデータを医薬会社等のデータ購買者と共有する選択肢を手にする。その際データを売り渡すのではなく、あくまでも利用を承諾する形になるという。

ネビューラが今月15日にリリースした一般消費者向けサイトでは無料で全遺伝子情報の解析申込を受け付けている。現状では、健康等に関するアンケートを応えるとポイントがもらえ、これがたまると無料で個人のゲノム解析をしてもらえる仕組みだ。また、99ドル(約1万1000円)でアンケート回答なしで解析してもらえる上、データを共有することでマネタイズにつなげるオプションもある。いずれにせよ自身のゲノムデータを任意の研究機関に提供するとリワードがもらえる仕組みだ。その際、完全に匿名でいられるのも特徴だ。

チャーチ教授が野心的なのは、トークン経済の仕組みを使って、ゲノムデータのやり取りに流動性を持たせようとしていることだ。ユーザーがゲノム解析サービスを利用するのも、医薬会社がゲノムデータを使用するのも、ネビューラが発行する仮想通貨で行われる予定だという。

ゲノム配列の解析(サービス)は、80年代のインターネットのような状態。インターネットも既に存在していはいたが、誰も使っていなかった。(ウェブ閲覧用)ブラウザが出てきて、はじめて普及した。同じようなことがゲノム配列解析でも起こりえるし、我々はこの臨界点が来るのを待っている」とチャーチ教授は今年2月、英ガーディアン紙に対して語っている。その「臨界点」を近づけるための仕掛けが、トークン経済というわけだ。

仮想通貨とブロックチェーンが変える医療。まずはユーザー・消費者にデータの所有や管理権を返すところから始まりそうだ。

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