ストラテジー創業者のマイケル・セイラー氏は、2020年にビットコインを購入する決断に至った背景には、新型コロナウイルス(COVID)下での規制と当時の米国の金融政策があると明かしている。
セイラー氏はジョーダン・ピーターソン氏とのインタビューの中で、2020年当時、パンデミックによる世界的なロックダウンと米国の超低金利政策を受け、「通貨戦争」が始まったと感じたと語った。
「コロナとの戦いではなく、通貨との戦いだった」とセイラー氏は述べている。
当時、セイラー氏は従業員に宛てたメールで、新型コロナ対策による規制を「魂を奪うものであり、ソーシャルディスタンスや経済的冬眠を受け入れることは破壊的だった」と表現していた。
実体経済とウォール街の分断
セイラー氏は2020年を「メインストリートとウォール街の分岐点」と表現した。小規模・中規模の企業や労働者は店舗や職場の閉鎖によって打撃を受けた一方で、投資家やウォール街の大物たちは利益を上げていた。
当時ストラテジーが保有していた5億ドルの現金が唯一の頼みだったが、米連邦準備制度理事会(FRB)の介入により金利はほぼゼロに抑えられ、その現金は利回りを生まない資産となっていた。
「中央銀行がマネーを大量に刷り、金利を押し下げた」とセイラー氏は振り返る。
金融資産のインフレが格差を拡大
「コロナによるロックダウンが発動され、大混乱が起きた。そして最も倒錯していたのは、FRBの資金供給によって2020年の夏までに株式市場が回復したことだ」と語った。
「金融資産におけるハイパーインフレが発生し、ファンドマネージャーや株式トレーダーが富を築いていった」と述べている。
その一方で、セイラー氏が保有する現金は機能しない状態となり、「早く死ぬか、ゆっくり死ぬかの選択を迫られていた」と述懐した。
30年分の価値を守るために
「この資産を築くのに30年かかった。その30年をなぜ手放さなければならないのか」と自問したセイラー氏は、解決策を探し始めた。
「何かを所有する側に回りたいが、国債を持ちたくはなかった」と語り、不動産や株式、さらには美術品への投資も検討したという。ただし、不動産と株式はすでに超低金利環境で価格が急騰していた。
「ピカソやモネを5億ドル分、妥当な価格でどうやって見つけるのか?」と自嘲気味に問いかけ、「私は、経済的エネルギーを長期にわたって保存できる、流動性と代替性のある資産を必要としていた」と述べた。
ビットコインへの転換
「世界が崩れていく中、ウォール街の連中が次々と金持ちになっていくのを見ていた」とセイラー氏は述べ、長年の友人であるブロックチェーン・インベストメント・グループ創業者のエリック・ワイス氏に仮想通貨について相談したという。なお、セイラー氏は2018年の弱気市場の頃には仮想通貨を「詐欺コイン」だと考えていた。
その後、セイラー氏はYouTube、ポッドキャスト、本などで仮想通貨の勉強を重ね、「ゴールドが長年その代表であったように、国家に依存しない価値保存手段こそが解決策だ」と考えるようになった。
マイクロストラテジーは2020年8月に初めてビットコインを購入。2億5000万ドルで2万1454BTCを取得した。
現在では、同社は世界最大のビットコイン保有企業となっており、セイラー・トラッカーのデータによれば、保有枚数は58万2000BTC、評価額にして約630億ドルに達している。