東証上場企業が、ビットコインを買いまくるー。

そんな「未来」がとうとう到来してしまった。東証スタンダード上場企業メタプラネット(東証S:3350)が4月8日、突然「ビットコイン購入のお知らせ」を発表したのだ。IR発表後、昨年秋以来20円を割って推移していた同社株価は急騰し一時40円を超えた。

今後の展開を占う上で参考になるのは米上場企業米マイクロストラテジー社の先行事例だ。同社はもともとリサーチ事業を生業とするIT企業だったが2020年8月にビットコイン買いを宣言。世界初の「ビットコイン企業」に変貌を遂げて以来、株価は高騰した。借り入れを繰り返しビットコインを蓄えていく過程で毀誉褒貶はあったが、現状株価は当初の10倍になっている。


米マイクロストラテジー社のセイラーCEOは筋金入りのビットコイン主義者だ

マイクロストラテジー社の代表は長引いた弱気相場においてもビットコインを買い続け、自身のX(元ツイッター)でも精力的に「ビットコイン支持」を発信。現在一兆円相当のビットコインを保有するマイクロストラテジーを率いる「最も男気のあるビットコイン主義者」として有名だ。

とはいえメタプラネット社は「日本版マイクロストラテジー」になれるのか?というのが日本からの投資家として気になるところだろう。

そこでコインテレグラフジャパンは今回メタプラネットの大株主で代表取締役社長サイモン・ゲロヴィッチ氏のオフィスまで突撃取材。「ビットコイン大人買い」の真相と今後の展望を探った。

コインテレグラフJP:「アジア版マイクロストラテジー」を目指しているのか。

ゲロヴィッチ氏:メタプラネットはビットコインを長期的に蓄積することにフォーカスするべき戦略を変更した。それが(メタプラネット社の)株主にとって最も価値があることだと信じているからだ。そのために追加のビットコインを取得するためのさまざまな選択肢を探っていく。

日本版マイクロストラテジーになるというのはハードルが高いといえるが、同社と同様の戦略で日本の投資家にビットコイン投資に接してもらう機会を提供したい。仮想通貨取引所でビットコインを売買するよりも、メタプラネット株を通して間接的にビットコインを売買するほうが税率が安くなるからだ。

コインテレグラフJP:これまで約10億円分のビットコインを購入した。これから更にどれくらいのビットコインを購入するのか。

ゲロヴィッチ氏:短期的な価格変動に関係なく、ビットコインの購入を続ける予定だ。最近さらに2億円分のビットコインを購入し、これまでに12億円をビットコインの購入に費やした。将来的にはビットコインがバランスシートの大部分を占めるようにしたい。

コインテレグラフJP:ビットコイン以外のデジタル資産を購入することもありえるのか。

ゲロヴィッチ氏:ビットコインオンリーだ。ビットコインは唯一の、真に分散化されたデジタル資産と考えているからだ。(ビットコインを採掘する際に使われる)「プルーフ・オブ・ワーク」と呼ばれるコンセンサス(合意形成)メカニズムは、他の暗号資産や証券の支持者によっては弱点として描かれることが多いが、実際には最大の強みの一つだ。電力投入を通じて物理的な世界と直接結びついていることが、ビットコインを希少なデジタル資産として際立たせている。

コインテレグラフJP:メタプラネットは今回複数の海外ベンチャーキャピタルから資金調達した。

ゲロヴィッチ氏:直近の調達ラウンドで参加してくれた戦略的投資家にはソラベンチャーズ、UTXOマネジメント、モーガン・クリーク・キャピタル創設者マーク・ユスコ氏等がいる。それぞれがデジタル資産の世界で広範なネットワークを持っている投資家たちだ。メタプラネット社としてビットコイン戦略を実行する際には、彼らの戦略的アドバイスとサポートを期待している。会社は新しい株主の一部をメタプラネットの取締役会にも招待する計画だ。

コインテレグラフJP:日本でビットコインETFが登場した場合どのように差別化していくのか。

ゲロヴィッチ氏:現在日本にはビットコインETFがない。つまり日本の投資家が証券口座を通じてビットコインにアクセスする有利な方法がないため、メタプラネットはその空白を埋めることを目指している。

またETFとは異なり、メタプラネットは事業会社として資本市場にアクセスし株主にとって有利な条件で資金を調達することができる。

ビットコインの採用を強く支持する日本初の上場企業として、ビットコインが世界的な通貨資産として広く受け入れられるための発信や事業展開ができるのも強みだ。

コインテレグラフJP:ビットコインの購入以外にメタプラネットの成長はどこから来るのか。

ゲロヴィッチ氏:マイクロストラテジー株は同社のビットコイン保有量に対して1.75倍のプレミアムで取引されている。メタプラネットでも1株あたりのビットコインを最大化すれば、同様のプレミアムを享受できると考える。またビットコインエコシステム内で事業展開を行うことで追加の収益を生み出す機会も探る計画だ。

コインテレグラフJP:ビットコイン価格の変動に対して「ヘッジ」を行う予定は。

ゲロヴィッチ氏:あらゆる手法を検討するが、基本的にはビットコインの長期投資と保有を予定している。価格変動に対しては動じない姿勢だ。ボラティリティについては伝統的な意味での「リスク」としてだけでなく、むしろチャンスとして捉えている。

コインテレグラフJP:マイクロストラテジー社はSNSでの発信などが顕著だ。メタプラネットも同様にSNS上での存在感を強める予定は。

ゲロヴィッチ氏:メタプラネットはビットコインが果たすべき前向きな役割について国内外の皆様に広く伝道していくことを目指している。マイケル・セイラー氏率いるマイクロストラテジー社は信念を曲げない企業として知られているが、メタプラネットも同様に言葉だけでなく行動を通じて伝えていくつもりだー。

編集後記

今回六本木にあるメタプラネット社で気さくに取材に応えてくれたゲロヴィッチ氏。凄まじい経歴とは裏腹に、親しみやすい笑顔で「ビットコイン戦略」を語ってくれた。

話題になっているビットコインの大量購入はまだまだ序の口のようだが、「緑のビーム」※がゲロヴィッチ氏の眼から放たれる日々も遠くないかもしれない。

(※ビットコインの熱狂的信者はSNS上のアイコンで、自身の眼を緑色のビームにする慣習がある。)

<終>

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サイモン・ゲロヴィッチ 株式会社メタプラネット代表取締役社長。ハーバード大応用数学部卒業後、米投資銀行ゴールドマンサックスで株式デリバティブのトレーダー等を経て起業。タイ上場のエボリューションキャピタルを創業するなど様々な事業を手掛けた後東証上場企業レッドプラネットジャパン社を経営。現在はビットコインにフォーカスした日本初の上場企業「メタプラネット」に注力する。

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