世界で一番使われている仮想通貨ウォレット「メタマスク」チームが語るWeb3の今後【独自】

仮想通貨を買って保有する際、ブロックチェーンやWeb3の世界とつながる「ウォレット」というソフトウェアが必要になる。そんなウォレットの中で世界で一番使われているのが「メタマスク」だ。古くからの仮想通貨ファンはもとより、可愛いキツネのキャラクターロゴを見たことがある人もいるかもしれない。

「メタマスク」は現在ブロックチェーン開発大手コンセンシス社傘下で運営されている。今回コインテレグラフジャパンはこのメタマスクチームを取材。ウォレットはWEB3へのポータルとして重要な役割を担うからだ。ウォレット分野のリーダーとして今後のビジョンについて聞いた。

コインテレグラフジャパン：メタマスクは個人向けウォレットだけでなく、機関投資家向けのプロダクトにも力を入れている。

メタマスク運営チーム：暗号資産市場には周期があるが、周期を重ねるごとに機関投資家の参与が増えている。そしてその流れはビットコインETFと現在検討されているイーサリアムETFを通してより加速するだろう。引き続き大きなスケールで機関投資家による採用が進むと見ている。今後数年間であらゆる企業が暗号通貨を利用してブロックチェーン上で活動するようになると思う。（メタマスク機関投資部門グローバルプロダクトリード、ヨハン・ボーンマン氏談）

コインテレグラフジャパン：機関投資家もDeFi（分散型金融）を使うようになるのか。

メタマスク運営チーム：ウェブ3で起きているイノベーションの幅を考えると、オンチェーン上（ブロックチェーン上）のチャンスは現在の集権型取引所が提供できるチャンスをはるかに凌駕している。

例えばステーキングによるネットワーク保全、イールドファーミング、流動性マイニング、ブロックチェーン上で行われる融資の透明性保証とリスク管理に至るまで様々なイノベーションが起きているからだ。

またブロックチェーン上で指値注文のできる板取引や、インテントベース・スワップからオーダーフローオークションに至るまで、新たな取引経験が構築されつつあることにも注目すべきだ。ブロックチェーン上の現物と先物取引は間違いなく取引量を増やし続けるだろう。

コインテレグラフジャパン：メタマスクが機関投資家向けに提供するサービスは。

メタマスク運営チーム：①パーミッションレスなブロックチェーン上で繰り広げられている様々なイノベーションへのアクセスを提供する拡張機能、②機関投資家向けの（暗号資産）ポートフォリオ・ダッシュボード（管理画面）③自動的にWeb3とやり取りできるようにするためのAPI群の提供だ。特に機関投資家がWeb3上の資産を監視、管理、コントロール、レポートできるようにすることに重点を置いている。

コインテレグラフジャパン：メタマスクは日本の仮想通貨愛好家たちの間ではよく知られているが、日本全体でみると知名度はまだ低い。

メタマスク運営チーム：メタマスクは日本のユーザーをより良くサポートするために積極的に取り組んでいる。例えばメタマスクのモバイルやブラウザ拡張で日本語で表示できる。また様々な学習コンテンツや多くのサポート記事も日本語で提供されている。今後も日本語コンテンツを優先的に提供していく。また国や言語に関係なくセキュリティには強くコミットしている。（メタマスクの技術プログラム管理部門ディレクターTian Lim氏談）

コインテレグラフジャパン：決済面で各社との連携が目立つ。

メタマスク運営チーム：メタマスクはデジタル資産へのアクセスを民主化することに専念している。特に決済面におけるグローバルなパートナーシップは、ユーザーがデジタル資産を取得・管理するプロセスを簡素化するので重要だ。例えばブラジルのPIXやインドのUPIのような現地決済システムプロバイダーと統合している。今後も既存のパートナーシップを強化し、より高い取引成功率と直感的な決済体験をユーザーに提供していく。（メタマスクのシニアプロダクトマネージャー、ロレンツォ・サントス氏談）

コインテレグラフジャパン：（ゼロ知識証明を利用したレイヤー2の一種である）Lineaが話題だ。立ち上げの狙いは。

メタマスク運営チーム：目的はシンプルで、安全でユーザーフレンドリーなエコシステムを構築し、ウェブ3を簡単に使えるようにすることだ。

まずイーサリアムのスケーリングに引き続き貢献していく。Lineaは、イーサリアムのセキュリティや検閲耐性を損なうことなく、安価で高速な取引を提供する。Lineaエコシステムは、最も安全なスケーリングソリューションとして確立され、オプティミスティックロールアップよりも優れたゼロ知識証明技術に基づいて構築されているからだ。

開発者にとってもLinea上での開発は容易に感じてもらえると思う。Lineaはイーサリアムと完全に互換性のある開発者環境を提供し、分散型アプリ開発を非常にシンプルにする。

だがおそらくLineaの最も重要な目標は、（メタマスクとの連携可能性により）Linea上で開発されるプロジェクトが成功するチャンスを与えることだ。メタマスクとのコラボレーションにより、Lineaの開発者とメタマスクユーザーとのつながりを支援できるのが強みだ。

ユーザー観点でいうと、Lineaを使用していることにすら気づかないだろう。Lineaは従来のインターネットにおけるTCP/IPレイヤーに似ている。だがLineaの場合基盤となる技術は非常に安価で、高速かつセキュアだ。（高くて遅いという）ブロックチェーンインフラの課題は過去の話となるだろう。

（Lineaのグローバルプロダクトリード、デクラン・フォックス氏）

コインテレグラフジャパン：メタマスクに機能を追加したりアプリをカスタマイズ追加できる「メタマスクSnap」は普及が進んでいるか。

メタマスク運営チーム：立ち上げ以来、Web3開発者コミュニティからの反応は圧倒的にポジティブだ。開発者たちはSnapで新しい体験を構築できることに興奮している。例えば新しいセキュリティソリューション、イーサリアム以外のブロックチェーンのサポート、Web3通知機能を追加するSnapがすでに開発された。

そも「メタマスクSnap」を始めたのは、Web3のエコシステムには多くのイノベーションがあり、単一のウォレットチームがそのイノベーションを全て取り込むことは不可能だと考えたからだ。「メタマスクSnap」は、Web3開発者が製品を構築し出荷するための新しい方法だ。(メタマスクのシニアプロダクトマネージャー、クリスチャン・モントーヤ氏）

コインテレグラフジャパン：（Web3普及に欠かせない）ステーブルコイン市場をどう見る。