マスターカードのアジア太平洋地域共同社長によると、同社は将来、中央銀行が発行するデジタル通貨を受け入れる方針だ。フィナンシャル・タイムズが19日に伝えた。
マスターカードの上級幹部アリ・サルケル氏は「政府が国のデジタル通貨を作ろうとするならば、当社は喜んでその通貨を、(一般的な仮想通貨と比べて)より好意的に見るだろう」と述べた。
「デジタル通貨が規制機関とその価値により支えられ、匿名ではなく、規制上のあらゆる要件を満たすのであれば、それを前向きに検討していく」
マスターカードのアジェイ・バンガCEOも昨秋、同社が政府発行のデジタル通貨のに参画する方法を見つけたいと述べており、政府が支援していないその他のあらゆる仮想通貨を「ジャンク(価値のないもの)」と見なしていた。
政府発行の通貨は世界的に複数の国で検討されているが、まだ今のところ仮想通貨が集権的に管理される現象はほとんどの国で現実化していない。首尾よく国家により発行された仮想通貨の最も顕著な例は、最近議論を巻き起こしながら発行されたベネズエラのペトロだ。
サルケル氏は、マスターカードが現在、ビットコイン(BTC)の所有者がBTCをマスターカードで換金することを認めるBTCの試験的プログラムを日本とシンガポールで実行していることについても述べ、さらに、同プログラムが顧客確認(KYC)とアンチマネーロンダリング(AML)の要素を含むことを付け加えた。
「当社はマスターカードのネットワークを通じてビットコインの取引を取り扱ってはいない。(同試験的プログラムは)実験的な試みであり、同社の評判に関わるリスクについて十分理解している」。
フィナンシャル・タイムズは、マスターカードとVISAがビットコインの購入を「現金取引」として再分類し、仮想通貨を用いる顧客への手数料を増やしたことについて言及している。
マスターカードは昨年11月、ブロックチェーン技術を用いた即時払いの特許を申請しており、同社の広報担当者は、マスターカード・ラボが30件以上にのぼる「ブロックチェーン技術と仮想通貨に関連する特許」を申請したことについて言及している。
「マスターカード・ラボは、(企業間の)銀行間決済、貿易金融上の義務の履行と価値連鎖の追跡、信頼できる機関の間の顧客確認(KYC)データと、アンチマネーロンダリングデータの交換などを含む幅開い分野での使用事例を支えるブロックチェーン技術の開発に取り組んでいる」。
さらにサルケル氏は、マスターカードがシンガポールとオーストラリアで非接触型交通決済システムの試験的プログラムを実行していることも付け加えた。
最近、英国のロイズ・バンキング・グループ、米国のJPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカを含む多くの銀行がクレジットカードを用いた仮想通貨の購入を禁止した。