自民党のデジタル社会推進本部のweb3ワーキンググループは、暗号資産を新たなアセットクラスとして位置づけるための制度改正案をまとめた。市場の健全な発展と投資家保護を両立させつつ、国際競争力を高めるための制度整備が柱となる。暗号資産への投資が拡大する中、金融商品としての明確なルールを策定し、税制の見直しも進める考えだ。
自民党デジタル社会推進本部でweb3主査を務める塩崎彰久議員によれば、3月6日に自民党のデジタル社会推進本部で制度改正案の概要が提示された。
日本国内における暗号資産の普及は急速に進んでいる。ワーキンググループがまとめた制度改正案によれば、2024年10月末時点で口座数は1100万を超え、預託金は2.9兆円に達した。これは、2005年にFX取引が金融商品取引法の規制対象となった際の状況(2007年時点で約80万口座)を大きく上回る。その上で投資対象としての認知が進み、資産形成の一環として利用されるケースが増えていると指摘する。
ワーキンググループはこうした状況を踏まえ、暗号資産を金融商品取引法上に位置づけ、規制の整備を進める方針を示した。
また現行制度では税制上の扱いが株式やFXとは異なり、総合課税の対象となっているが、今回の改正案では分離課税への移行も提案されている。
投資家保護と規制の枠組みを明確化
制度改正案では、暗号資産市場の健全な発展と投資家保護を両立させるため、情報提供ルールや規制の明確化が必要だとしている。具体的には以下のような変更を提案している。
- 新規発行(公募): 発行体は情報開示義務を負うが、業登録は不要。
- 私募(プロ・少人数向け): 開示義務や業登録は不要。
- リスティング(取引所上場): 発行体に開示義務はないが、交換業者が情報提供義務を負う。
- インサイダー取引規制: 発行体にも適用(現行は交換業者の役職員のみ対象)。
また、暗号資産の交換業者には自己資本規制比率の適用を強化し、最低資本金額の増額が提案されている。加えて、投資アドバイザーやファンド運用者にも新たに業登録が義務付けるべきとしている。
分離課税の導入、国際競争力の確保へ
税制面では、現行の総合課税から分離課税への移行が提案されている。現在、暗号資産の売却益は累進課税の対象となっており、最高税率は最大55%に達する。一方、株式取引は20%の分離課税が適用されており、投資環境に大きな差が存在している。
さらにワーキンググループは「アメリカをはじめ、海外ではキャピタルゲインとして⽇本より低い税率での課税が主流」と指摘し、「国際競争⼒の確保の観点から、税制上の乖離を解消するべき」だと主張している。
今回の改正案では、資金決済法上の「暗号資産」が対象となり、NFTなどのトークンは含まれない。また、分散型金融(DeFi)や分散型取引所(DEX)については、引き続き検討課題とされた。
塩崎議員によれば、自民党では3月31日まで制度改正案について意見を募集するという。