麻生太郎財務相は20日、仮想通貨の呼称が暗号資産に変更する改正案が閣議決定されたが、これまで通りの資金決済法上の定義が変更されるわけではないとし、税制上、仮想通貨が雑所得に該当するというこれまでの見解に変更はないと述べた。

麻生氏は、20日に開かれた参議院の財政金融委員会で、参議院議員(日本維新の会)の藤巻健史氏の質問に回答。15日に閣議決定された仮想通貨の改正案で、仮想通貨が新たに金融商品取引法上の規制対象となることが明記されることについて、藤巻氏は「金融商品として位置付けられるならば、仮想通貨を他の金融所得同様に20%の源泉分離で考えてもよいのではないか」と質問した。

政府は、仮想通貨に関する規制強化を目指して金融商品取引法と資金決済法の改正案を15日に閣議決定した

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藤巻氏の質問に対して麻生氏は、次のように述べた。

「暗号資産の交換という業務は引き続き資金決済法の対象であり、法令上の呼称は仮想通貨から暗号資産に変更することになるが、その定義を変更するということではない。すなわちいわゆる暗号資産というものが資金決済法上、引き続きこれまでの仮想通貨と同様に対価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値として規定されることになる」

また、仮想通貨は消費税法上も支払い手段として位置付けられることから、「外国通貨と同様に、その売却益等は資産の値上がりによる譲渡所得とは性質を異にするものと考えており、一般的に雑所得に該当するという現行の取り扱いを変更する必要はない」と述べた。

これに対して藤巻議員は、「納得できない」とし、「支払い手段だけでないから金商法の対象になるという理解だった」と話した。

藤巻氏は、仮想通貨に対する税率は、最大55%の税率がかかる雑所得ではなく譲渡所得、最終的には源泉分離20%にすべきだと主張している。

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「資産だが、譲渡所得に該当する資産でない」

「暗号資産は、資産ではあるものの、譲渡所得に起因する資産には該当しない」。

20日に開かれた参議院の財政金融位委員会では、国税庁の担当者は上記のような見解を述べた。なぜ「譲渡所得に起因する資産」に該当しないのかをめぐり、国税庁の担当者と藤巻氏の議論は平行線をたどった。

藤巻氏は、雑所得への区分は、他の9分類のいずれにも該当しない場合と規定されていると指摘。このため、仮想通貨は雑所得だと国税当局が主張する限り、国税当局が譲渡所得や一時所得ではないことを示す責任があると指摘。とりわけ、前回の委員会と同様、租税法の大家である金子宏教授の主張する「譲渡所得における資産とは、譲渡性のある財産権をすべて含む概念でビットコイン等の仮想通貨などがそれに含まれる」という最新の学説を紹介した。

その上で、藤巻氏は次のように述べた。

「大家の先生までもが主張する学説の一つであるならば、国税当局が主張するのではなく、政治的にこういうものだと(判断して)良いと思う」

これに対して国税局の担当者は「国税当局として租税に関する個々の学説に対する見解を述べることは差し控える」と回答した。

カジノ収入が「一時所得」では不公平?

同委員会で国税庁の担当者は、カジノ収入による所得に関して、一般論では日本の居住者がカジノで得た所得については一時所得に区分されるものと解説した。

一時所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」。収める税額は、所得金額の1/2に相当する金額を給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後に計算される。

藤巻氏は、以前、麻生氏が仮想通貨の分離課税について、税の公平性などの観点から「国民の理解が得られるのか」と答弁したことに触れ、カジノ収入が一時所得で仮想通貨の収入が雑所得となることに「不平等感」はないのかと指摘。「カジノで儲けたら税金は半分、仮想通貨で儲けたのはそのままというのは非常に不公平だと考える」と主張した。

これに対して麻生氏は、次のように答えた。

「一時所得と雑所得のどちらが得かという話ではなく、それぞれの所得の性質・性格を踏まえて異なる課税方法がとられている」