NEMの創設者を巡る騒動について

IT企業やその製品が形作られる背景は、その歴史において企業や製品自体が果たす役割と同等に重要なものだ。

NEMの創設者を巡る騒動について

IT企業やその製品が形作られる背景は、その歴史において企業や製品自体が果たす役割と同等に重要なものだ。

過去を偽ることは、将来的に深刻な問題に繋がりかねない。NEMとMijin、どちらも日本の業界発展のルーツとして重要なブロックチェーン・プロダクトである。最近では「仮想通貨とブロックチェーン」という書籍が出版され、その中で武宮誠氏がNEMの創設者であり、NEMとMijinのブロックチェーンプロジェクトにおけるリード開発者であるという旨が記述されており話題になっている。NEMはその後、武宮氏はNEMの発明者ではなく、NEMやmijinの創設者でも開発者でもないとの内容を明示した声明その全文を公開している。

NEMの開発チーム

問題の本質は、武宮氏がNEMの創設者でないのならば、では誰がそうなのかという点にある。

NEMプロジェクトに関するアナウンスがあった2014年1月19日、「utopianfuture」というユーザーにより、誰がそのメンバーであったかについては明確にされていた。

こちらのリンク先の情報から明らかなように、武宮氏はNEM創設者の一員ではない。NEMからコインテレグラフに寄せられたメッセージによれば、2014年2月4日に武宮氏からNEMのチームに参加できないかという旨の要望があったという。そのメッセージはプライベートメッセージという形で、「Jaguar」なる人物宛に送られている。

興味深いことに、Let's Talk Bitcoin Networkには音源が上げられており、その48秒目あたりからは武宮氏自身の肉声で、NEMの創設者ではないと否定している旨の発言を聴くことができる。

では実際には、武宮氏はNEMやMijinとどのような関わりがあったのか?

では何故、一部のメディアや書籍で武宮氏がNEMの創設者であり、Mijinのリーダーであるといった内容の報道がされていたのだろうか?

件の間違った主張が問題視されないことで、誰か特定の個人や組織が都合良く恩恵を受けた部分があったのだろうか?

この疑惑を晴らすべく、今回、我々コインテレグラフは現在ソラミツの共同CEOを務める武宮氏にコンタクトを取った。

武宮氏曰く―

「ソラミツの共同CEO、武宮誠です。今回のこういった一連の話は、我々ソラミツと一切の関係はありません。個人的にNEMとは関わりがあった一方で、私は去年プロジェクトを去っていますので、現時点では何らか関わりを持っておりません。したがいまして、詳しいコメントについては差し控えさせていただきます。」

コインテレグラフはまた、NEM財団プレジデント兼CEO、Dragonflyの創設者であるウォン・ロン氏にもインタビューを敢行。曰く、「Mijinに関して言えば、武宮はそのマーケティングチームには既に属していましたが、プロジェクトが発足してから一行のコードにさえ関わったことはありません。彼が開発チームからマーケティングチームに『異動した』という証拠も一切なく、あったとしても秘密裏に協議されたとしか言いようがないでしょう。唯一の客観証拠としてのGithubをこちらから見ていただければ、彼がNEM Core(コアエンジン)のコードの開発についても、それを活用して開発されたMijinについても一切の貢献をしていなかったという事実を確認して頂けます。」とのことだ。

NEMやDragonflyは損害を被ったのか?

武宮氏に対しては、その将来に暗雲が立ち込めるかもしれない深刻な疑惑が存在する。

ウォン氏によれば、とあるベンチャーキャピタルがDragonflyに2億円を投資しようとしていたが、武宮氏はウォン氏に対して、Dragonflyはコンペに負けてその投資の機会が失われたのだと説明していたという。

しかし、実際にはDragonflyの扱いを脇に追いやったため、後に深刻な風評被害を被ったとウォン氏は語る。

その結果として、日本においてもブロックチェーン企業の有望株として期待されていたにも関わらず、Dragonflyは日本からの撤退を余儀なくされている。

NEMに関して言えば、武宮氏はコアチームに対して不調和をもたらしたとウォン氏は語る。また、「NEMの名が汚れる可能性と、これまでの顛末が茶番劇だと思われる可能性があるため、我々はすべてをオープンにし、武宮と公の場で戦わざるを得なくなりました」とも語った。

また、カタパルトに関しても一時的に開発が中断され、これも全て武宮氏がNEMのコアチーム内で引き起こしたいざこざが原因であるともウォン氏は語っている。

名義を利用し、後から名前の削除を依頼?

また、我々コインテレグラフは武宮氏に対し、「仮想通貨とブロックチェーン」の著者に対して掲載文の訂正を求めなかった理由に関しても取材している。

同氏曰く―

「著者の方の名前を初めて聞きましたし、インタビューも受けておりません。また、内容に関する問い合わせもされていません。明らかなのは、NEMはチームとして発足しており、私が発足したものではなく、私はチームの一員としてそのオープンソースプロジェクトにマーケティングにおいて寄与したのみだということです。私個人に関して間違った情報が記載されていたのは遺憾に思いますし、現在書籍の発行元に私の名前を削除するようコンタクトを取っている段階です。」

我々は、このような対応では遅すぎて、且つこのコメントには意味がないのではないかと疑わざるを得ない。NEM側がその成果を悪用された苦悩について主張することは、正しいのではないか、と。

また、武宮氏がNEMの発明者であるかどうかに関して裏取りを行わなかったメディアに関しても、我々は問わなければならない。最近では、武宮氏がカンボジアの銀行と提携し新たな決済インフラ開発を行っているとのニュースが報道された。本当に評判の良い人格者であれば、NEMでの役割について間違った情報が流布されていることに対して、訂正のためにもっとできることがあったのではないだろうか。法的措置を取るつもりがあるのかどうかをウォン氏に尋ねると、彼はこう語った―

「それも採るべき選択肢の一つとして検討しています。今となっては後の祭りですが、被害は甚大なのです。」




参照: NEMからの声明文全文(日本語