今日の情報化社会において、所謂”モノのインターネット” (IoT)について探求している人は少なくない。現在、”IOTA”と呼ばれる新しい暗号トークンを利用したマイクロトランザクションがIoTの基本構造を変え発展させていくのではないか、と期待されている。IOTAは分散型の暗号通貨であるため、ブロックチェーンとはまた違った働きをすることでも知られている。

 IOTAプロトコルが確立され、すぐにTangleという技術が生まれた。これは一見ブロックチェーンに似ているのだが、エミュレートされているかのように動き、より多機能である。Tangleは非周期グラフで表示され、元の構造に合わせて定型の準順序で動作する。IOTAの共同設立者である、David Sønstebø氏は、マイクロトランザクションによるソリューションと、彼のチームが開発したプラットフォームとを組み合わせることで、オンラインの世界において新しい決済方式の架け橋となるだけではなく、日々の生活の景色までも変えることができるだろう、と考えている。

 コインテレグラフ社は、David氏と対談し、新しい暗号トークンについての内情を伺うべく、マイクロトランザクションによる終わらない可能性と、いかにしてIOTAがIoTを可能にしてきたかを伺った。

 

IOTAは分散型で、とても軽いマイクロトランザクション・トークンを”IoT”向けに最適化しています。本質的には、取引の際の手数料も必要のない、ブロックレスな元帳、ということになります

 

コインテレグラフ社(以下CT):Tangleとはどういったものなのでしょうか、そしてどのようにしてシステムに組み込んでいるのでしょうか?

 

David氏(以下DS):簡単に言ってしまえば、Tangleとは、有効非巡回グラフの一種ですが、ブロックチェーンの一般化したもの、とも言えます。低負荷な体制下で、ブロックチェーン的振る舞いをする一方で、高負荷であっても最終的にはお互いを統合し合う分家を作り出します。これにより毎秒たくさんの取引ができるようになります。IOTAの基本構造として、ビットコインにおけるブロックチェーンのような役目を果たすということです。

CT:マイクロトランザクションによってIoTはどのように発展していくのでしょうか?

 

DS: 最初に、IoTの種がまかれたのはずいぶん前になりますが、ビジネスの場において、その芽が芽吹いて、すくすくと育っていることを実感しています。コンスタントにチャレンジを続けた結果、堅く結束し、よりオープンで便利なものへと変わりました。主なゴールはKickStarterで展開している光るデバイスですが、まだこれは氷山の一角にすぎません。こういった類いのものは資金集めが終了してノベルティが配られた後は衰退してしまうものですから。

 

IoTにおけるマイクロトランザクションによって、技術的なリソースやアプリケーションがより広範囲にわたり、私たちの暮らしをより素晴らしいもの変えていくでしょう。

 

 一端供給システムやその恩恵が、産業や私達の生活に浸透し確立してしまえば、大規模なIoTによって大きな成果が得られるでしょう。マイクロトランザクションによる物質的な役割はまさにこういった側面にあります。

冷蔵庫が、牛乳が足りないと言ってきたり、食洗機が別の洗い物を、と要求してきたり、歯ブラシが新しい歯磨き粉を要求してきたりするような素晴らしいアプリケーションによって、所謂”スマートホーム”のための様々なアプリケーションが生まれるだろうと予測されます。面倒な手間にわずらわされることもなくなるのです。私個人が最も楽しみにしていることは、IoTにおけるマイクロトランザクションによって、技術的なリソースやアプリケーションがより広範囲にわたり、私たちの暮らしをいかにより素晴らしいもの変えていくのか、ということです。

例えば温度、風速、湿度などのデータを集積してくれるサーモスタットを想像してみてください。どの家庭にも、どの町にも、小さな村でさえ、世界中から集めたデータによってその恩恵が受けられるようになるのです。車やスマートフォンなどからもデータを集めてきっとさらに便利になることでしょう。

このように莫大な規模でIoTの発展がもたらされることで、気象予報士などにとっても大きな恩恵がもたされると思います。

これは、結果的に社会にとっては多くのお金と生活が毎年節約できるということでもあります―と、いうように、マイクロトランザクションを使って人々にデータをシェアするよう促すことだってできるわけです。どのような広告目的の利用も可能です。企業のメタデータに基づいた、本格的な分析作業の代わりに、個々人からデータを集めることだってできます。(もちろんこれは顧客に許可するか否かを選択してもらいます)。今日、オンラインや、電話などでのアンケートなどによって、そういった個人から任意に提供されたデータをいち早く手に入れようと各企業は色々な工夫をしています。マイクロトランザクションを通じて、個人がデータをコントロールし、リアルタイムの報酬の見返りとして、任意にリアルタイムなデータを提供するわけです。

他の素晴らしい使用例は、家庭用ソーラーパネルや、TESLA社のパワーウォールなどのような、優れたバッテリーなどの電化製品や分散型ストレージなどの増加からもみてとれます。これによりユーザーは送電線を通じて電気を売ることができるようになり、マイクロペイメントを利用して、リアルタイムに節約できるようになります。分散型のコンピューターの電源も同様です。IoTが発展することによって、私達は常に待機状態のプロセッサーやスーパーコンピュータがどこにでもあるような世界に住むことができるようになるでしょう。そして、マイクロトランザクションがあれば、この待機時間もリアルタイムに売ることができるようになるのです。

 

IOTAは、私達のIoTに対するビジョンを現実のものにする上で不可欠なものなのです。

 

 私が次に挙げる例は、IoTにおける基盤的なスケーラビリティに関する問題を解決してくれるかもしれません。より多くのデバイスが繋がっていくにしたがって、Wi-FiやBluetoothなどのチャンネル数が少なくなり、電波が干渉してしまうことが多くなってくると思います。現在このような問題を解決するために数え切れない試みがなされていて、そのうちの一つが、Li-Fiと呼ばれるものです。これにより、光のスペクトラムから無限のチャンネルを生成することができ、しかも室内だけでのみ有効なのです。今後何年もかけて、巨大な市場に向けての準備がなされています。つまり、IOTAとは、そういった短いパケットなどに基づいたコミュニケーションを通じて、チャンネルを掴む際に必要な時間を少なくすることなどにより、問題をなくしていくことが可能なのです。

 

CT:マイクロトランザクションによる暗号トークンを作ろうと思ったきっかけはなんだったのでしょう?

 

DS: IOTAに携わる人間は皆一年以内の内輪のハードウェアスタートアップに参加してもらっています。そこでIoTに関わる分散型コンピューティングについて学んでもらい、市場や有用なユースケースを分析するのです。加えて、私達は全員暗号に関しては以前どこかで必ず携わったことのあるプロフェッショナルですから、私達のそういったバックグラウンドが独自のひらめきと、IoTにおいて何が必要で、現在のブロックチェーンプロジェクトにおける弱点はどこなのか、などといったことを見つけることに大変役立っています。IOTAは、私達のIoTに対するビジョンを現実のものにする上で不可欠なものになってきています。

 

CT:Tangleによってビットコインや、Ethereumのようなブロックチェーン技術をコントロールすることは可能なのでしょうか?

 

DS:可能です。経済におけるエコシステムや、IoTなどを達成するためにクリアしなければならない問題を解決してくれる絶対的なソリューションというのは存在しない、というのが私のスタンスです。そのような万能なソリューションというものは滅多にあるものではありませんし、取引を通じてそういった新しいモノは常に生まれていくものですから。製品をデザインしていくうえで、”フレキシブルなトレードオフ”や”フィ-チャー・クリープ”、などと私達は呼んでいます。

もちろん、私達は、よくある平凡なソリューションに対してではなく、マイクロトランザクションへフォーカスを当てています。ブロックチェーンを通して、より密着したエコシステムを作る上で必要不可欠な役割を果たし、無駄なくよりよいコミュニケーションを実現することができるでしょう。きっと誰にとっても素晴らしい世界がそこにはあると私は思っています。

 

既に、Ethereumや、Bitshares、Nxt、Bitcoinersなどの人間と話していて、我々のもつそれぞれ異なるテクノロジーが生むであろう、化学反応に期待をよせています。

 

CT:何故耐量子性を組み込んだのですか?

 

DS:量子コンピューティングは決してSFのようなフィクションではありません。最近大きな技術的ブレイクスルーがあり、現実的に運用できるレベルまでどんどん近づいています。学会や、セキュリティ会社などはまだ懸案事項がたくさんだ、などとまだ言っていたりしますが、10年の歳月をかけて既に我々には実現している量子暗号に関する技術があります。NSAも量子暗号化へシフトし始めたようです。

端的に言えば、いつ具体的な量子コンピューティング技術が実現するのか、ということは述べられませんが、少なくともそう遠くはない、と技術者たちも考えています。IoTシステム、それによる経済の発展の上で、これは絶対的に必要な技術です。興味がある人はAnastasia Marchenkova氏によるこちらの記事を読むといいでしょう。

 

CT:どのようにしてIOTAはスケーラビリティに対して一石を投じることができるのでしょうか?

 

DS:技術的には極めて迅速です、しかしTangleに関して言えば、IOTAというのは自動的にその動作を調節することができるのですが、どのシステムに対して働いているのか、という部分によるところが大きいのです。これは明白なアルゴリズムによって動いている、というわけではなく我々のフィードバック上のコンセプトがそのようになっているのです。

 

CT:現在のビットコインネットワークについての意見をお聞かせください。

 

DS:今は技術的な観点は置いておいて、ビットコインが近い将来どういった役割を果たすのか、といった部分にフォーカスを当てるべきです。もし、ビットコインの価値を保つことが可能(i.e. 仮想金貨)であれば、ブロックサイズは小さくすみますし、一方で、世界的に通用する通貨となるのであれば増やす必要はあります。しかしそうするとまた別の問題が浮かび上がってきます。個人的な意見としては、まずはビットコインの役割をきっちりと明確にした上で、それから次の段階へと移るべきだと考えています。

 

CT:IOTAはオラクルのようになることができるのしょうか?

 

DS:IOTAのブロックチェーンシステムとの連絡技術により、オラクルと同等の、よりスマートな契約をための結ぶ架け橋となるでしょう。例えば矛盾したレポートをよこしてくるような、別のプラットフォームによる取引チェックをする際には有用ですし、それぞれのレポートと、IOTAのPoW技術に連携を取らせ、より正確性の高い正しい情報をやりとりできるようになるだろうと期待しています。

 

CT:現実世界におけるアプリケーションとしてはどうでしょう?

 

DS:マイクロトランザクションがもたらすだろう大きな変化として明白に言えるのは、価格についてです。今日の価格付けというものは実に酷いものです。ユーザーの目に見えないように、実に巧妙にやりとりがされています。見積もりに関して、導き出される計算式も、個人では判断不能なものばかりですし、様々な税金などが加えられ修正された料金をユーザーは払わなければならないのですから。

 

マイクロトランザクションによって、ひとつ大きく変わることとしては、価格があげられます。

 

加えて、ユーザー側が事前に支払いをしなければない、という場合が大半です。これは取引とはよびません。マイクロトランザクションを使えば、リアルタイムに支払った税金やそういった類のものの穴埋めをすることができます。とても公平で信頼できるシステムです。これにより、(e.g. ストリーミングなど)業界におけるルールというものががらりと変わってしまうことでしょう。

 

CT:目下の目標と、これからどういったサービスを提供していきたいのか、教えてください。

 

DS:目下の目標は、モノのインターネットによるエコシステムを可能にして、そしてリアルタイムに決済ができるようにすることです。