AV動画を見て仮想通貨を稼ごうーー。そんな物騒ぎなフレーズとは裏腹に、アダルト動画産業にトークン経済の考え方を持ち込んでデジタルコンテンツの流通を変えようとしているプロジェクトがある。北米発「バイス インダストリー トークン(Vice Industry Token)」だ。3月20日に締め切られるクラウドセールでは既に20億円以上を販売。同プロジェクトが提案する新たな「アテンションエコノミー」経済圏とはなにを指すのだろうか。

「アテンションエコノミー」の逆転発想とは

 VITを立ち上げたスチュアート・ダンカン氏は、かつて北米最大のアダルト放送ネットワークをつくりあげた業界のベテランで、現在もアダルト放送局のCEOを務める。ペントハウスTVやハスラーTVといった成人向けコンテンツのトップブランドを立ち上げた同氏は、広告や視聴料ベースで成り立つ現在のコンテンツ流通の在り方に危機感をもっているという。

 同氏が開発するVITの中心にあるのは「人の注意力には稀少価値がある」とする「アテンション エコノミー」と呼ばれる考え方だ。これまで「トラフィック」として束ねられ広告主に売られていた人々の注意力と時間をトークン化することで、より価値の高いコンテンツ経済圏をつくろうとしている。

 面白いのが、これから起こる逆転発想だ。動画コンテンツの製作側だけでなく、まとめコンテンツを製作するキュレーター、動画データをホスティングしたり配信するインフラ業者、はたまた自身の注意力を提供する視聴者に仮想通貨でインセンティブを与えようというのだ。

「ペントハウスTV」等のビッグネームも参画  アダルト以外の展開へも布石

 とはいえ「アダルト動画」に特化しているとなると眉をひそめる人が出るのも確かだ。だがダンカン氏にとってアダルト動画は仮想通貨やブロックチェーンを使った新たなコンテンツ流通の仕組みを広く普及させるための「切り口」に過ぎないという。現在でもアダルト関係のトラフィックがインターネットの通信料の30%を占めるといわれる中、まずはアダルトカテゴリを攻略しようというビジネス上の判断のようだ。

 VITは今後、提携話に事欠かない。日本でも名の知られたエンタメメディアがVITプラットフォームに参画を検討しているといわれる中、実際に「ペントハウス」メディアグループもVIT採用の先陣を切っている。同社のケリー・ホランドCEOによると「VITは市場にまったく新しいユニークなビジネスモデルをもたらす絶好のチャンスだ。<中略>VITとペントハウスが協力して化学反応を引き起こすことで、テレビやアダルト動画の視聴方法を根底からくつがえすことになる」と期待をのぞかせる。

Steemit等の創業メンバーも助言

 VITはSteemitに似た独自のブロックチェーンを採用。ダンカンCEOによると、同プロジェクトは初期段階にSteemitのネッド・スコットCEOから助言を受けていたという。また、名前は明かせないがイーサリアムの立ち上げメンバーも支援しているようだ。

 また、VITトークンはSteemitをお手本にし、コミュニティーへの貢献度に比例してトークンが付与される「プルーフ オブ ブレイン」方式を開発中だ。例えば動画視聴者は決められたタスクを実行することでトークンを獲得する。またビデオを最低限の時間鑑賞したり、好評価を付けたり、コメントを書いたりといったことが考えられる。

クラウドセール参加にはイーサリアムウォレットが必要

 VITトークンは発行量が決まっており、うち半分が今回のクラウドセールで一般向けに販売されている。最低購入代金は0.1ETH=約9200円だ。

 https://vicetoken.com

 購入方法はシンプルで、公式サイトに表示されているイーサリアムアドレスに任意の額のETHを送金するだけだ。0x7ではじまりD10で終わるアドレスとなっているが、 公式サイト上でアドレスを再度確認してから操作してほしい。

 VICE買い方

 気を付けなくてはならないのが、仮想通貨取引所から送金してもVITトークンを購入できないということだ。公式サイト上の「よくある質問」欄では「マイイーサウォレット(MEW)やその他のERC20準拠のウォレット」が推奨されている。取引所から送られたイーサは紛失してもVITは責任を負わないとあるのでくれぐれも注意しよう。

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